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いくぶんか落ち着きを取り戻した様子のマーシャルは、眼鏡のフレームに手をやって、
「こんなことは、はじめてです」
と、重々しい調子で言った。
「"六芒星測定"においては、どんな者でも何らかの大きさの六芒星ができるものなのですが……そのままに解釈するのならば、ココノエさん。あなたは、オール・ゼロということになります」
オール・ゼロ、中二ライクに響く言葉である。
(オール・ゼロ。通り名とか異名の話でもなく、事実を表す意味での言葉ならば……)
俺の思考を補完するように、マーシャルは、
「物理攻撃力・物理防御力・敏捷性などの身体的な能力の資質は皆無、魔力攻撃力・魔法防御力・精神力などの魔術的な能力の資質も皆無、ということです」
と、俺とイフを見ながら言った。
マーシャルの言った内容は、俺の考えと一致する。
冒険者としての適性が俺にはないか、よくても、冒険者には向いていないということではないだろうか。
(……少しきついな)
武器屋を光の速さでクビになったのもなかなか精神的にきついものがあったが、この状況もそれなりに辛い。
「冒険者としての資質は乏しいということでしょうか」
気をつかうようなマーシャルの口調は、逆に刺さるものがあった。
「そん……な」
イフは、まばたきを忘れたように目を見開いたまま、小さな口を開いたままだった。
「もしかしたら、他の……」
マーシャルの言葉は、イフの言葉に途中で遮られた。
「そ、そんなことありませんっ!」





