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イフの申し出に、マーシャルは、軽く頷きながら、
「この前測ったばかりですから、それほど変化はないと思いますが、いいですか?」
と、聞いた。
「はい」
イフは、首肯した。
「では、どうぞ」
マーシャルが用意した羊皮紙が、イフの前に置かれた。
「ソラ。百聞は一見に如かず、です。見ていてください」
イフは、そう言って、マーシャルに手渡された果物ナイフのような小さな刃物を、指に当てた。
「……っ」
イフは、小さく声をもらした。
イフが、自身の人差し指を小さな刃物で切ったので、血が数滴ぽつぽつと羊皮紙に落ちた。
イフの血が、羊皮紙にうっすらと徐々ににじんでいった。
(うっ……!)
俺は、心中呻いていた。
みっともないが、俺は、半分目を逸らしていた。
(血……か……)
理屈ではない。
身体がそういうふうに反応してしまったのだ。
何を隠そう、この年になって何を言っているのかとからかわれてしまいそうだが、俺は血を見るのが、得意ではない。





