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"紫紋の聖服"。
何とエキサイティングな防具名だろう。
しかし残念ながら、俺の学生服は、どこまでいっても単なる学生服である。
しかも、刺繍されているのは、紋章ではなくて普通の校章だ。
学校指定の洋服屋で数万円で購入したものだ。
この学生服が何とか聖騎士だというのなら、学生服を着た生徒たちはみな聖騎士で、聖騎士まみれの学校ということになってしまうし、聖騎士専用のような防具が俺のような一般人に着こなせるわけもない、聖騎士を連呼したが、とどのつまりこの女性の憶測は的外れでナンセンスだ。
いわく、聖騎士のバーゲンセールである。
(そんなお買い得なパラディンがパラパラいるんじゃ、おかしいだろう)
自分でも何を考えているのかあやしくなってきたが、パラディンは否定しておきたかった。
俺は、控えめに手をあげて、
「あ……いえ、違うと思いま……」
しかし、受付の女性は、ひどく深刻な顔で、
「否定するということは、隠しているということ……! 私の推測どおりですね。大丈夫です、秘密にしておきます。ここまで見抜けるのは、実は古文書にも精通している私ぐらいな者でしょうから」
頷きながら言い切った女性の顔は、若干どや顔気味だ。
くわえて、眼鏡をきらっと光らせて、見抜きましたよと言わんばかりの得意顔である。
「これはですね、学生服と言っ……」
俺が、言い終わらないうちに、
「野暮なことを聞いてしまいました。今のは聞かなかったことにします」
受付の女性は、勝手に自分で納得してしまったようだった。





