客⑤酔っ払った男性
葉川喫茶は稀に夜遅くまで営業していることがある。マスター曰く、自宅よりお店の方が落ち着くからついつい長居してしまう、という訳らしい。
僕が目を覚ますと、そんな感じで店はまだ営業していた。外に目をやると、日はすでに落ちていて、辺りは暗くなっていた。雲はすっかり晴れ、窓からは月の光が差し込んでいる。
あのオバサンも、さすがに帰ったか…
「そうなんです、俺だってがんばったんですよ…」
カウンターの方から声がして、見ると、男性が顔を伏せ、「うう…」と言いながらすすり泣いているようだ。
…少しアルコールの臭いがする
「全ての責任を俺に押し付けて…もう、やってられないですよ…」
「……」
マスターは何も言わず、男性の横にコーヒーを置いた。
「ありがとうございます…すみませんね、愚痴ばっかりで」
「いえ、気にしないでください。吐き出したいときは全部吐き出すといいですよ」
「そうですね…」
男性はそう言うと、身体を丸め、行儀悪い格好のままコーヒーをちびちびと飲み始めた。
「沼田くんは家の方にも問題があったんじゃないかと思うんですよ」
「……」
「あんな事があったのに休みもせず…、普段からあんな感じだったんじゃないかと」
「まぁ、忙しい職業ですし、仕方ないところもあると思いますよ…」
「そう…ですね……。でもなんで…なんで
”俺の”クラスから二人も死人が出るんだよぉ!」
男性は突然大声をあげながら顔を上げ、カップをカウンターテーブルに叩きつけるようにして、乱暴に置いた。カップからはコーヒーが弾け、男性の顔に思い切りかかった。
その顔にはどこか見覚えがあるようで、…
…あれ?僕の学校の先生じゃないか?




