客④噂好きな女性-2
僕は喫茶店に向かっている、向かっている、向かっている、向かっている、向かっているはずなのに喫茶店がどんどん遠のいていく、喫茶店がどんどん移動している?いや、誰かが僕の服を掴み、引っ張っている、誰かが掴んでいる…?誰だろう…
僕は”誰か”を目視するために、ゆっくりと後ろを振り向いた。
「!!!!」
その人物を見た途端、身体を鋭い痛みが走ったような感覚になり、耐えられなくなって目を思い切り瞑った。
暗い、暗い、痛い、痛い、痛い
頭ガ、顔ガ、腹ガ、背中ガ、熱イ…
僕は自分が果てていくことを悟り、痛みを堪えるのをやめて、力を抜いた。
突然、顔に何かまぶしい光が当てられ、痛みがじんわりと和らいでいく。
そして、懐かしいようなバラードとともに僕の耳に音が流れ込んでいく。
「……でねェ、沼田さんとこの病院がねェ、」
窓から差し込む夕陽が眩しくて、目をゆっくり開けながら顔を手で覆った。
…どうやら、喫茶店のテーブルの上で寝てしまったようだ。
「………」
見ると時計は6時半を指している。
すごく長い夢を見ていたようだったが、実際はあまり時間は経っていないようだ。
「あらァ、いたのね。俯いてたからわからなかったわァ」
「ちょっと嫌なことがあって…」
「この前のあれかい?山田くん」
「はい…ついに告白をするそうです…」
「あらァ!告白!それは大問題ねェ!じゃあ告白する前にあなたが先にしちゃいなさいよォ!男は気合よ!気合い!」
「………」
「そうですね。気合いはともかく、自分の気持ちを相手に伝えてみればどうでしょうか。しっかりと伝えれば、相手にもちゃんと届くはずです。」
マスターの言葉に僕の首は頷く。
僕の口からは何も発したり、動かしたりつもりはないが、僕の声はマスターと女性と会話をしている。勝手に身体が動いている感じだ。とても変な感じがする…
それに、どこかで聞いたことがあるような会話だ…
…もしかして、これも夢か?
そう思った途端、僕は目を覚ました。




