客①帽子を被ったお爺さん
初投稿となります。百川です。
勉強をしながらゆっくりと書いていきます。
1話1話を短めにするつもりなのでぜひ少しだけでも読んでいってください。
いつからだったか、僕が毎日のようにいる喫茶店がある
駅から徒歩で10分くらいの、ちょっと裏路地に入ったところにある、”葉川喫茶”だ
その建物の入口はそんな広くもないが狭くもなく、看板も某家電量販店のようにピカピカしているわけでもなく、かと言ってさびれた定食屋の看板ほど剥げかかっているわけでもない。
特徴らしい特徴のない、目にも入らないぐらいの”普通の”喫茶店だ。
そんな喫茶店の、普通の日常。そんなかんじ
目に入らない喫茶店と言ってもお客さんは来る。
「いらっしゃいませ」
今日来たのは70歳くらいのお爺さん。
頭にちょこんと帽子を乗せた、優しそうな目をした人だ。
お爺さんは4人用のテーブル席にゆったりと座り、帽子を外し汗をかいた顔を拭いながら、机に置いてあるメニューを見ずに言った。
「アイスコーヒーを一つ、…それにしても今日は暑いですな」
「全くです。クーラーをつけなきゃやってられませんな…アイスコーヒーにガムシロップはいりますか?」
「いや…貰いたいのじゃが医者に止められれてての、最近はやれ塩分は控えろだ、脂もんを食べるな、とかうるさくての…好きなものぐらい好きなだけ食べたいものだ」
「……まぁ皆ヒロさんに長生きしてもらいたいですから…アイスコーヒーお待たせしました」
お爺さんの顔は一瞬強ばったように見えたが、マスターがにっこりと微笑んでいるのを見て、彼もまた微笑した。そして彼はただテーブルの上にぽつんと置かれたアイスコーヒーに目を落とした。
「……………」
会話はそこで途絶え、店内はおそらくマスターの趣味であろう、何を言っているかよくわからない英語のバラードだけが流れている。
葉川喫茶は今日もいつも通りだ