男1 or 女1▼LLS【ダブレス】 図書館管理人ニコレッド。
男1 or 女1▼LLS【ダブレス】 図書館管理人ニコレッド。
※一人芝居用台本。
アドリブは決してせず。台詞を一文字も変えないで下さい。
噛まないように頑張って下さい。言いにくく書いてあります。滑舌の練習用としてもお使い下さい。
▼登場人物
▼ニコールディレッド・バダンディグルーヴ・ロロッティーニアンドュ
・ケテラス星アイゼル城にある、図書館の館長。真面目で落ち着いているように見えるが、実はちょっと変な人。
本が大好きで、いつも本を読んでいる。
・ニコレッド。
▼ケテラス星アイゼル城、図書館。
脚立に足を掛けていたニコレッド。読みかけの本を、パタンと閉じて。
ニコレッド「人は哀しみの歴史を隠したがるものですね」
図書室の天窓を見上げて。彼、に。頭を下げて。
「ようこそいらっしゃいました。本日は、あの月明りで本を嗜む、というのも、粋でしょう」
図書室にやってきた、黒髪の男を中に案内する。
「さあ、こちらへどうぞ。今日も貴方様は、星の本をお探しでしょう? リュウ・レインズ様」
いつもここへ来る彼。いつものように、頭を下げて。
「……そう、申しますか? フフッ。おかしな方だ。その本の声ですよ。ひゅう、ひゅうと、星の声が聞こえるでしょう。そんな貴方は、煌めく夜空に愛されているのでしょうね」
新しい星の本を、差し出して。
「哀しい過去を、忘れてはいけない。そうお思いですか?」
相手は哀しい顔で笑って。
「これからを見詰めて下さい。そう、勇者である貴方に、一体どれだけの人間が救われたか。たった一つの犠牲と、貴方の心の欠けり、それだけで、この星は死なずに済んだのだから」
黙ってしまう、彼を見て。
「もう一度だけ、言いましょう。これからを、見詰めて下さい」
うん、と、彼は言った。
「忘れているふりすら出来ない。優しい君。あの美しい少女の為に、貴方は笑うのですね」
図書室の奥、いつもの椅子に座りに行った彼に頭を下げ。自分はカウンターに戻る。
「おや? なんだか外が騒がしくなってきましたねぇ。きっと、あの方でしょう。失礼、お迎えをしなければ」
図書室の入り口から、可愛らしいツインテールの少女が入って来る。
「こんばんは。ル族の姫君。今宵は貴女の為に、このような本をご用意致しました。幾何学と最先端医術の、コラボ本でございます」
目を丸くする少女。
「アル・ラヴィディッシュ・メイラ様。貴女の歴史を、わたくしに教えてください。保存し後世に伝えましょう。記憶を差し出して下さい。貴女の存在証明を、永遠にする為に」
頬を膨らませた彼女を見て。
「冗談ですよ。この本、難しいものではございません。こちら、頼まれていた、世界中宇宙中三千世界中に存在する、おいしいごはんの本でございます」
少女は目を輝かせて。
「メイラ様、奥に旦那様がいらっしゃいますよ。さあ、行ってさしあげて下さい」
少女は本を受け取ると、嬉しそうに、奥へと駆けて行く。
「失ったものは多く、だが、残されたものはもっと多い。特別な時代の真ん中を生きるあのお二人。いつか語り継がれ。いつか、その歴史は繰り返されるのかも知れませんね」
次の来客。
「ああ、いらっしゃいませ。珍しいですね、国王陛下。この度は、どのような本をお探しですか? ああ、申し訳ございません。わたくしめではとてもとても」
彼は言う、何か面白い本は無いか、と。
「貴方様にご満足頂ける本。陛下のお顔を一目見ただけでは、さあこれこそと満足に用意出来ません。そのような高度な技術は、残念ながらわたくし、持ち合わせていないのです」
そうか、と、低い声が微かに響いて。そして尋ねる。
「この手に持っている、この本でございますか? ああ、これは、チョコレートを作った、偉大なる王様の悲しくも切ないラブストーリーでございます」
頬を染めて。
「ご興味がある? 左様でございますか! 国王様、もしや、恋愛小説にご興味がおありですか? ええ、ええ。では! わたくしめがこれを解説致しましょう!」
得意げに。
「時は~戦国!! 明智光秀重兵衛と、織田信成が、剣を交えたあの戦乱のっ! 炎のっ! アッ!! ゆ~め~も~の~が~た~りィっ!!」
明らかに楽しんでいる。図書館では静かにしろ、と注意され。
「失礼致しました。冗談でございます。ごほん」
気を取り直して。
「陛下。この物語の主人公であるチョコレートキングも、実は陛下と同じように。他の者とは違う。ハンデがございまして」
唇噛みしめ。
「両手両足胴体首肩頬トォ額に鼻に目ぇ耳頭全てに斑の火傷がございまして。そう、貴方と、同じです。彼もまた、陛下と同じように。それがコンプレックスでした」
注意を受け。
「これはこれは。大変失礼致しました。やや箇所を多めに申し上げてしまったようですね。ジョルド様、しかしまあ、いつまでもその黒き面を大切になさっている」
口籠られ。
「初恋、ですか。なんとまあ、甘酸っぱくて。切ない響きでしょう」
無音。
「はは。突っ込み過ぎでしょうか。陛下にも、そのような時があったのですね」
返事が聞こえて。
「しかし今は、お幸せなのでしょう? リンディア様と、そして、産まれた新しい王女様のお傍で。過去の恋、初恋など、叶わないほうが。身の為です」
その本を差し出して。
「国王陛下。何か隠し事がおありですね? 誰にも言えない秘密をお持ちなら、何か手記を書いてみては如何でしょうか。吐き出し、どこかへと封じるのです」
本を見詰めるその黒い瞳は、切なくて。
「そう。誰の目にも届かない場所へ」
そのまま、彼は図書館を出て行ってしまう。
「ありがとうございました。またいつでもお越しください」
深々と頭を下げ。
「どこで生まれたのか? なぜここにいるのか? なぜその名前なのか? わからないのでしょう。偉大なる戦士。貴方方には、膨大なる理由がある。それを知るまで、死なす訳には、いきません」
次の来客。
「ああ、いらっしゃいませ。こんばんは、涙の姫君。貴女にぴったりの本をご用意しておきました。さあ、奥へどうぞ。こちらへ」
少しだけ歩いて。
「おしえて、おしえて、おしえて。ですか。それはまた、どこかの少女のようですね。謎を解きたいですか? 謎を知りたい、ですか?」
本を取り。
「今の貴女がわたくしに見えているのは、貴女が死して尚、この世に存在することを、神に許されているからでしょう」
その本を撫でて。
「わたくしは、自殺を悪だとは思いません。ああ、いえ。このような物言いでは、国王陛下に怒られてしまいますね。貴女を、誰より何より、愛しているのですから」
本を差し出して。
「誰もが気付くことでしょう。誰もが、お二人に赤い糸を感じるでしょう。だからこそ、このチョコレートラブストーリーの二作目は、伝説となったのです」
いつまでも暗い顔をした彼女。
「愛はめぐりめぐるもの。わたくしだって、そう思います。さあ、名無しの君」
少しだけ、顔を上げて。
「チョコレートは、時にビター、時に甘く、そして溶け、硬くもなり、だがやはり、いつか消えますね。恋が消え、愛に変わるからでしょう」
その、潤んだ瞳が、本当に奇麗で。
「行ってあげて下さい。貴女の帰りを待っている。沢山の人が居ることを、忘れてはなりませんよ」
消えそうな身体を、彼女は抱き締めて。
「その美しい黒髪も、瞳も、あの方の為に美しくあるのですから」
図書室から出て。
「さあ、また、いらっしゃいましたね。……こんばんは。わたくし、図書館管理人のニコールディレッド・バダンディグルーヴ・ロロッティーニアンドュと申します。どのような本を……お探しですか?」
END