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☆義賊と盗賊⑥☆

仁平に繋ぎを付けて、江戸周辺に6つあるうちの1つの盗人宿に呼び出した。


夕刻過ぎに仁平は花売りの姿で現れた。


「急に呼び出してすまなかったな。お勤めの方に支障なかったか」


「大丈夫だ。お頭からはここのところ支持は無いからな」


「そうか・・・」


不自然な沈黙が流れた。


「今日は珍しいじゃないか、お前から呼び出すなんて。どんな風の吹き回しだい」


「ふん、お前と酒でも飲みながら話がしたいって思ったんだよ」


「それだけか」


「まあ、一杯やろうや。準備はできてる」


用意していた冷酒をついで渡した。


「おお、すまないな」


しばらく、たわいのない話をして時間が過ぎていった。


「そろそろ本題に入ったらどうだい。おれはもう回ってきちまったよ」


「そうだな・・・、ほかでもない。今日お頭に呼び出された」


「ほう・・・」


「どんな要件だと思う」


「でかい仕事でもやるのかい」


「そんなんじゃねえ・・・」


「じゃあなんだよ」


「それがな、隠居すると言われた」


「そうか・・・、ていうとお前が跡目か」


「ああ・・・」


「めでたいじゃねえか」


意外な言葉だった。やはりこの男は食えない。


「お前残念じゃねえのか」


「俺はそんなたまじゃねえ。ある程度解ってたことだしな。継ぐのはお前だとみんな思ってたさ」


「そうか・・・」


「それで俺になんの話だ。ここで命でも盗られるのか」


「ふふっ、やるならとっくにやってらあ」


「ちがいねえ」


「お前に聞きたいことがある。この団にとっての義はなんだ」


「ふっ、ははははっ・・・、面白いことを言う。俺にそれを聞くのか」


「ああ、俺はそんなこと考えたこともねえ。お前ならそれを知っている。そんな気がしたんだ」


「やれやれ、困ったお頭だ・・・。まあ酔った勢いだ。俺に聞いたってことは俺の考えでいいんだな」


「ああ、お前の考えが知りたい」


「そうか、そうだな。お前には一度言ったことがあるが、俺は大商人が大嫌いだ。庶民から金を巻き上げることしかしない。お上と結託して下の奴らを苦しめることしかしてない。そんな奴らは許せん。そして、苦しんでいる下の奴らを助けたい。おれは常々そう思っていた」


「おう、それで・・・どうする」


「大商人をぶっつぶしていって、町中の貧しい奴らに金をばら撒くんだ。そうすりゃおれらみたいな奴らも消えていく・・・」


昔のワシだったらこの時点で、仁平を切り付けていたかもしれない。だが、あの日・・・仁平から初めて義について聞いてからワシはどんどん考えが変わっていった。


仁平の言うことが理解できた。ワシらは好きで盗みをやってるんじゃない。


親はワシらに食べさせることも出来なかった・・・


貧しい生まれでは、仕事もなかった・・・


生きるためには、奪うしかなかった・・・


そんな連中の集まりだ。


「仁平、それをやろう!この団は今日から産まれ変わる」


「ふっ、ははははははははっ。お前気でも触れたか」


「お前が言うな!協力してくれ仁平」


「仕方ない。お頭が引退したら抜けようかと思っていたが、お前とやるのはおもしろそうだ。いいだろう」


「ああ」


その夜は久しぶりに酒の味がうまかった。

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