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☆義賊と盗賊⑤☆
いつもと変わらない夜だった。
ただやけに月の光が強く感じられた。
満月だった。
その光に照らされていると自分の内に飼っている獣が消されていく感覚を覚えた。
こんなこと辞めたい。
何度思ったことだろう。
だが、目の前に錠があり針金を握ると内にいる獣がうごめきだす。
扉を開けたい。
この手で開けたい。
カチッ!
とてつもなく小さな針の穴に糸を通したような快感が全身を伝う。
この音を俺は求めている。
その音を聞く瞬間がたまらない。
この音がおれの違和感を消し去る。
盗賊であることに誇りを感じてしまう。
誰にも邪魔はされたくない。