☆盗賊と義賊④☆
仁平と一悶着起こしたあの日以来ワシは暫く「義」という言葉が頭から抜けなかった。
なんのために盗賊になったのか・・・
これからどこに向かっていくのか・・・
盗賊をしていなかったら・・・
仁平は変わらず殺生をしていない。
先代の跡目争いにおいてはワシの方に分があった。
殺生をしない仁平の行動に対して反感を持った仲間が多かったからだ。
しかし、ワシは次第に仁平の考え方に知らず知らず惹かれていくことに気付いた。
ある時、仁平に尋ねた。
「お前は殺生をしないのに、なぜ盗賊をやっている。何のためだ?」
「俺は貧しい暮らしをしている農民や町人を尻目に私腹を肥やしている連中が許せない。だからそんなやつらから金を奪って生きるか死ぬかに困っている連中を助けてやりたいんだ」
「なんだと・・・、お前に何ができるんだ」
「今はお頭のもとにいるんで何もできないが、いつか私腹を肥やしている連中から奪った金を困ってるやつらに配るんだ。そしたら世の中極楽浄土に近付くんじゃないのか」
正直言葉を失った・・・
命を懸けて奪った金を知らねえやつらに配るだと・・・
何を言っていやがる。だが、こいつは本気で言っているということは解った。
極楽浄土か・・・笑える話だ。
そんな世界を作れるんだったらなお笑える・・・