☆盗賊と義賊③☆
その日のお勤めでも仁平は仲間の顔が見られたにも関わらず、殺しはせず当て身で気絶されることにかしなかった。
盗人宿への帰り道、ワシは我慢ならずに仁平に突っかかった。
後ろから羽交い絞めにして、合口を首に突き付けどういうことなんだ!と迫った。
お前は仲間がお縄にかかってもいいのか!
お頭がお縄になってもいいのか!
どうなんだ!
その問いに対して仁平は、鼻で笑みを見せた。
ワシはもう一息で合口を首に通す寸前まで行ってしまった。
寸前のところで先代の顔が浮かんだ。
仲間通しの殺しはご法度だ。
それがこの団の掟の一つだ。
しかし、仁平は臆する事無く・・・
「やりたければやればいい。それがお前の義なら・・・」
「義だと・・・」
ワシは聞き返した。
盗人の口から義などという言葉が出てくるとは思わなかった。
「そうだ。俺は、人殺しは決してしない。命に代えても・・・。それが俺の義だ。お頭にもそれは話してある。それがお頭の元で働く上での条件として俺が出したものだ。お頭は首を縦に振った。しかし、お前の言うことも解る。だからやりたければやれ・・・それがお前の義なら」
それを聞いてなんだかばかばかしくなってきた。
こんな奴もいるのかと思った。
命よりも義か・・・
俺には命よりも大切だ言えるそんなものはあるのか・・・