馴れてきたんだぜ!!
自分の分身の妖怪と出会って一週間がたった、そんなある日…
夏休みも始まって一週間が経過した。
「あ、遙。どっか遊びに行くの?」
「うん、今日は波野と映画見に行くの!」
「そうなん?いってらー」
あの日から、ナツ達の周りには自然と妖怪達がいるようになった。他の人間には見えないので怪訝な目で見られることも多いのだが、今日のように遊びに行くときはお金がかからないので便利である。
「俺もそろそろ出かけっかなぁ」
「亜樹子も時雨ちゃんとおでかけ?」
「んー、まぁ。幸美達と一緒にアニメ〇トに」
「成程。いってらっしゃい」
「うん」
亜樹子を見送ってしまうと、ナツは一人溜息を吐いた。
「悩み事?」
「…二海」
背後から現れた自分そっくりの二海にナツは別段驚かない。この一週間で彼女たちがあらゆる所から出現するのを、ナツは嫌というほど見てきた。
「ナツはどっか行かないの?」
「二海こそ、行きたい所とかないの?」
ナツの問いに、二海は苦笑いを浮かべる。
「私は別に…ナツの行きたい所で良いよ」
もう何度聞いたかもわからない返答に、ナツはいい加減うんざりしていた。
「気付かないの?」
「…なにが?」
「…ううん、何でもない。私、今日はもう帰るね」
そう言って姿を消す二海。言いたいことを隠している様なまどろっこしい態度に、ナツはどこか覚えがあった。
「それってさ、ナツと似てるんじゃねーの?」
夕食の時間。ナツが思い切って今日の昼間二海に感じたことを話すと、答えはあっさり返ってきた。
「それってどういう…」
「前から思ってたんだけどさ、ナツってうちらに遠慮するよね」
幸美の言葉に、何故かナツまで納得してしまった。さらに幸美の隣でハラハラしている遙を見て、今までそれに気づいていなかったのは自分だけらしいと悟る。
「じゃあ、二海と私は外見だけじゃなくって中身も似てるってこと?でもなんで?」
「二海はあんただからだよ」
廻がポツリと呟く。
「正確には、二海はナツの”欠点”」
「なに、廻…お前なんか知ってんの?」
全員の視線が一斉に廻に集まると、廻は一つ呼吸を置く。
「これは何年も前、音色に聞いた話」
一人の女の、叶わぬ恋のお話…
廻の知る過去の話とは…!?