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そのじゅうきゅう 紅い空、蒼い地上(後編)


辺りには千夏の笑い声とキシスの叫び声が支配している。


「ぐぇっへっへっ!よいではないか!よいではないか!」


「キャーー!さわんないでよーっ!」


スライムを倒しに行ったアスルが帰って来るまで千夏はキシスで遊ぶ事にしたのだ。


「たすけて!時雨!」


突如、キシスにいたずらしていた千夏の動きがぴたっと止まり変化が訪れる。

「・・・くっ、時雨!暴れるな、ああっくそーっ!

我が生涯に一片のくいなーし!」

「・・・千夏姉さん、貴女がたまに恐くなります。」

溜息まじりに呟く時雨と助かった事にホッとするキシス。


「・・・キシス、ごめん。毎度毎度千夏姉さんが暴れちゃって・・・。」


キシスは千夏が言っていた事を試したくなった。


「・・・別にいいぞ。時雨、あの頼みがあるんだが聞いてくれないか?」


「ああ、何?」


少々もじもじしながら答えるキシス。


「・・・その、なんだ。

『おんぶ』してくれないか?」


首を傾げる時雨。


「・・・おんぶ?別にいいよ。」

時雨の背中に乗るキシスと狙撃銃。


「・・・やはり、時雨の背中は落ち着くな。」


「ありがとう。アスルさんがなかなか来ないね?」


すると林の中からアスルが飛び出してきた。


「・・・千夏さんは?」


「いないよ。」

実は千夏が居なくなるまで様子を見ていた。千夏がいなくなった時点で出ていこうとしたが、キシスが時雨に甘えている所を目撃し、何となく対抗意識とやらを燃やしていたのだ。

「・・・ねぇ、時雨君。貴方は優し過ぎるんじゃないかな?」


さりげなくキシスを背中から降ろして欲しい事を言うアスル。それに気が付いたキシスは時雨の背中にしがみついた。だが、二人の心配をよそに時雨は気が付かない。


「・・・うん、よく言われるよ。僕のいけない所だと兄妹に昔言われた事もあるよ。・・・だけどね、これをなくしたら僕は僕じゃなくなると思うんだ。」

そして、時雨は苦笑しながら最後に付け加えた。


「・・・間違いなく、千夏姉さんがこの世を支配するよ。」


『おーっほっほっ!私を女王様とおよびー。ペッタンコは永久追放よ!』

高らかに笑う千夏が二人の頭を支配した。


「・・・時雨君、やっぱり君はそのままがいいよ。」

「うん、時雨は今のままがいい。」


「ありがとう、二人共!」

時雨達は新たな仲間を探しに旅立つのであった。




森を歩いていると〜


執事さんに〜


出会った〜

「・・・時雨様、連れて参りました。」

時雨が間違い?で頼んでしまった事である。

「それではっ!一人目をご紹介しましょう!」ダラララララララララッ


デンッ!


「・・・一番、キシスさんのお姉さん、オルフェルさんです!職業は図書館の受付係です。性格はボケボケそして優しい。時雨様より一つ年下です!」


「ね、姉さんなんでこんな所にいるの?」


出て来たオルフェルに時雨の背中から尋ねるキシス。


「いやー、キシスだってさぁ時雨さんの所に私の妹がいると言われたら誰でもいくよ。」

時雨は固まっている。


「・・・なんで、君がここにいるの?」


ニ、三歩退きオルフェルを眺める。


「時雨君、あの人と知り合い?」


アスルは今でも後退している時雨に問い掛ける。

質問に答えたのはオルフェルであった。


「・・・私はね時雨さんの元彼女よ!」


「なあーんだ『今』じゃなくて『元』か。よかった!」


「そうだな、姉さんが時雨の彼女じゃなくてよかった。ところで姉さん、時雨をふったのか?」

優しい時雨が女の子を振ろうとはしないだろう。

二人はそう思っていたが意外に時雨から振ったらしい。


これは時雨が語った蕾が知らない事である。

「・・・彼女は以前友達の少なかった僕に出来た初めての友達だったんだ。・・・・それで僕から付き合って欲しいといったんだ。・・・彼女は頷いてくれた。次の日から登校するのも一緒、お昼も一緒だった。・・・いたって普通な人だった。・・・それが段々エスカレートしてきた。勉強中でも僕にべったり、家に帰り寝ていると夜中に僕の隣にいるんだ。耳元で『私は貴方の全て。』と夜中ずっと言ってくるんだ。怖くなって彼女を避けていると・・・・・・」

震え出す時雨。そしてそれを見守る残りの方々。

キシスにいたっては時雨の肩の上に頭を乗せている。


「・・・・犯罪を侵すようになったんだ。夜道を僕が一人で歩いていると物影からタオル一枚で飛び出して来て『私は貴方の物よ!好きにして!』と言いながら追い掛けて来るんだ。更に銀行に強盗に入った事もあるんだ。理由は『時雨さんがやれって言いました!』といったらしいんだ。」

うわっ!この人こえー。

時雨が別れて欲しいと言ったのもわかるかもしれない。


「・・・でも、時雨君は真面目だし、優しいから大丈夫だったでしょ?」


「う、うん時雨は優しいし、約束を守るから流石に姉さんが悪者になったんじゃないか?」


首を振る時雨。そして執事に告げる。


「・・・・その人を今すぐガムテープで縛り上げて宇宙に飛ばしてくれっ!ソロモン海域辺りまで飛ばせば大丈夫だから。・・最後にコロニーレーザーを発射しといてくれと剣治に言ってください。」

「・・・かしこまりました。時雨様。」


オルフェルをリムジンに乗せ去って行く執事。


「・・・番長だった僕を信用してくれたのは全校誰もいなかった。それに比べ彼女は全校生徒の憧れの的だった。・・実はまだ、彼女はもっとひどい事をしたんだ。僕を監禁したり・・・・・後は話せない。」

二人はかなりビックリしている。特にキシスにいたっては愕然としている。


「・・・あの頃楽しそうにしていたのは時雨をいじめていたからか。」


「・・時雨君・・・」


時雨は最後に言った。


「・・・だから、別れたんだ。そしたら少しだけど友達が出来た。」


むごい、むごすぎる。

「じゃあ、雰囲気変えるためそろそろ行こうか?マオウを倒しに。」


(あれ?マオウを倒すには仲間が必要だったんじゃなかったのかな?)


「時雨君、仲間は?」


「・・・戦死したじゃだめかな?」


時雨は早くマオウを倒したかった。


「・・・うん、わかった。ところでマオウの居場所しってるの?」

おもむろに携帯を取り出し誰かに電話をかける。


「あ、剣治かな?仲間そろったからマオウ倒しに行きたいんだ!・・・・今居る所から右にいけば会える?なんで僕たちがいる所がわかるの?・・え、お約束?」

電話をきり、二人に話し掛ける。


「・・・さ、アスルさん、キシス、行こうか、マオウを倒しに。」


「うん!」

「ああ」


林の中に入り進む。


辺りは段々暗くなっていき、鳥が泣く声も聞こえなくなる。


「し、時雨君。マオウだ!」


アスルが指差す所には・・・・大きな龍が眠っていた。


(・・・よかった、真面目な龍だ。スライムみたいに人間だったらどうしようかとおもったよ。)

「・・・時雨、早く倒そう!まだこれは『幼体』だ。『成体』になったらお前には倒せない!」


「わ、わかったよ!みんな、総攻撃だ!」


二人が色々攻撃をしている間に魔王さんに言われた事を試す。


『我は、記憶のピースを求める罪人!』


魔界では使えなかった罪人天使の力が時雨に戻り、空はもっと紅くなり地上も更に蒼くなった。





一方、マオウと戦っている二人は全く歯がたっていなかった。


狙撃してみるが皮膚には傷一つ入らない。


「・・・アスル、傷ついたか?」


「駄目だよ、ツルツルお肌のまま。この艶とはり羨ましいよ!どうしたらいいのかな?」


「・・・いっそモンスター○ールかなんかで捕獲するか?」


「・・・弱らせないとボールにはいらないよ!」


そんなやりとりをしていると紅い光が二人の前にふり注いだ。


「・・・!これはなんだ?」


上から高らかな声が聞こえてくる。


「・・オーッホッホッホ!・・真のアンノウン・エンジェル千夏様参上!この世は私の為に存在しているのよ!」

最悪な展開だと二人は思った。だが、不安をよそに千夏は龍に剣を向けた。


辺りの木々が無くなり、紅い光が更に森を包む。

千夏の背中からは綺麗な紫色の羽が生えている。

そして、右腕には紫の剣、左腕にはハリセンを持っている。


『千夏姉さん、もういいだろう?僕が倒すよ!』


二人がビックリしている。無理もない妖精サイズの時雨が空を飛んでいるのだ。


「・・・か、かわいい。連れて帰ってペットにしたい。」

「・・私も、欲しいな。どこに売ってるかな?」


「わかった、時雨。今回の私の出番はこれでいいだろう。」


意識が時雨になり、時雨は黙って剣を振り落とす!


「・・・・・・・・!」


龍に剣が突き刺さり周りが紫の光に包まれる。






「・・おめでとう、時雨君。」


龍の体を掴み引っ張っている剣治は時雨に労いの言葉をかける。


「・・・剣治、この龍は・・・・もしかして僕のパンドラの箱に入っていた奴?」

頷く剣治は笑っている。

「そうだよ、千夏さんと一緒にパンドラの箱に入っていた片割れさ。ちなみに・・・・いや、なんでもない。それより時雨君、気絶している二人に別れの挨拶はしたかな?アスル君はもうしなくていいだろうけど、キシス君にお別れの・・・・・挨拶はしなくていいかな?」


「・・・そうだね、不公平かな?」


気絶しているキシスの隣にすわり、顔を近づけ・・・・別れの挨拶をする。

戻ってくると剣治は久しぶりにみるニヤニヤ顔をしている。


「・・・時雨君も犯罪者の仲間入りか。」


「・・・うるさいよ。じゃあ帰ろうか?剣治。」


剣治は動かない龍の口の中に入り何かを探している。


「・・・ねぇ、その龍どうするの?」


「・・・・秘密!」


口から出てきた剣治はまた龍の中に手をつっこみ、なにかを出した。


「どこでも○アー!」


「・・・そこ、ポケットじゃないよ。剣治。」


「ノリが悪いなぁ、時雨君は。」

ドアを開け中に入る剣治と時雨。・・・・と動かない龍。


潜った向こう側は人間界、夕焼けの生徒会室だった。


「・・・・時雨君、今日は帰りなよ。疲れてるだろうから。」


「・・・・・わかった、魔界にはまたいけるかな?」

「・・・君が望むならね?」




校門で別れて家に帰宅する時雨。

元気よく帰る時雨は帰り道で美奈と蕾に見つかり、抱き着かれた。


「・・・・に、兄様ー。」

「・・・時雨様ー。」


不意をつかれた時雨は道路に倒れた。


「・・・まま、お兄さんが襲われてるよ!」


「あれは違いますよ。」


「あなたもいつか彼氏が出来たらしてあげなさい。」

「はーい!」


恥ずかしくなった時雨が二人を抱えて急いで家に帰ったのは間違いない。

「・・・・僕がいなくなってどれぐらい経つの?」


二人に話し掛ける時雨は少し心配顔である。


「一日ですよ。」


(たったの一日だって?)

「いなくなった兄様を探してたら剣治さんから電話があってね、明日には天空の城 ラピュ○から帰って来ると言ってたんだ。」


「心配しましたよ!古代兵機にやられてないかオロオロしてました。」

「ところで、美奈さん大丈夫?僕がいなくなって体に変化はなかった?」


(たしか僕はが魔界に行く前は二日酔いだったはずだ。)


「いや、キャベジ○を飲んだら治りました!」

(まぁ、とりあえずはよかったかな?)


「時雨様、今日は時雨様の大好きなハンバーグですよ!」


「ほんと?ありがとう美奈さん。」


「いえ、ほんの・・・お礼ですっ!今の私がいるのはご主人様のお陰です!」


蕾がなんとなく冷たい視線を時雨にプレゼント。


「・・・兄様、晩御飯が出来るまで勉強を教えてくれませんか?」


「え、うん。いいよ?」


時雨は疑いもなく蕾の後についていった。

さすがの時雨も蕾の不機嫌さをわかっていた。


(・・・やっぱり、蕾達に天界の事や魔界の事を話さなかったのがまずかったかな?・・・謝ろう、許してくれるかわからないけど。)


「兄様!あの、私にこの前した事を覚えていますか?」


(・・・・何かしたかな?蕾の大好きな牛乳を飲んだ事かな?それとも一緒に寝てた時ベットから寝ぼけて落としたことかな?後、・・・)


時雨は必死に考えを巡らしている。それを見た蕾は時雨が寝ぼけてやった事と確信。

「兄様、覚えてないの?」

何となく罪悪感がある時雨は更に頭を早く回転させる。その速さは赤い○星と互角だったらしい。


「兄様!どうなの?」


(うーん、うーん。)


「兄様!」


蕾の顔は悪魔のようだ。時雨はそう感じたらしい。

「・・・ごめんね、蕾。該当する事柄が多くてわからないや。」


俯く蕾。それを見て慌てて何か考える時雨。彼の必死さは夏休み最後の一日で全ての宿題を終わらせる勢いである。

ぺかーん!


時雨の脳内電気が点灯。

「蕾!蕾に僕が何したか思い出す方法を考えついたよ!僕が何をしたか簡単に僕にしてみて!」


当然、戸惑う蕾。


「・・・ほんとにいいの?」


「うん!いいよ!おまけつけていいよ!」


そして目をつぶる時雨。

(大丈夫だ。さすがに蕾なら僕を病院送りにしないだろう。)

「・・・じゃあ、再現するね?」


(・・・くるなら・・こいっ!)


ムギュウ!


「!?」


「・・・兄様!私はあなたの妹でずっと・・・ずっといたい!これは、これは悪魔の罰だよ!・・・私が妹じゃ駄目かな?」


「・・・ありがとう、蕾。・・僕はうれしいよ。これからもよろしくね?」


「・・・・うんっ!」


ここで美奈さんの声が聞こえてくる。


「二人共ごはんですよ。」

「「はーい。」」


「いこっ!兄様。」


「うん、行こうか。」


二人は晩御飯を求め部屋をあとにした。

静かになった蕾の部屋には実はもう一人いたのだ。

「・・・・ふむ、なかなかいいドキュメンタリーだった。・・・今度の文化祭で発表するかな?」


生徒会長である。







晩御飯を食べた時雨は美奈さんにあの事を聴きに行く事にした。

「・・・美奈さんは人形だったんですか?」


ベットに乗っている美奈に尋ねる時雨。


「・・・はい、私は冥土ではなく人形パペットでした。執事さんと一時契約をした私は時雨様の冥土として働きにきました。・・・・人形は相手、つまり主人にどのようにされたかによって性格が変わります。酷く扱われたら・・・本物の人形みたいになってしまいます。」

そこまで喋り、息をはく美奈。


「・・・・不安でした。私が創られて知っている人形は全て、壊されてしまったり棄てられたりしました。・・・私は試作品なんです。だから私には誰も主人がいませんでした。」


時雨を見る美奈の目には涙がうかんでいた。


「・・・・だけど、時雨様は私を大切に扱ってくれた。十年ぐらいしか動かないはずの私を少し期間が延ばしてくれました。」


「・・・だけど僕がいなくなってなにかが美奈さんをおかしくしたのかな?」

静かに頷く美奈。


「・・・居なくなってから私は混乱しました。人形は主人がいないと・・駄目になるんです。だから私は蕾様を新しい主人にしようと思い、普段通りに接する事にしました。」


(・・・・・・。)


「だけど僕がかえってきた。」


「そうです、そしたら私は急におかしくなりました。・・・・末期症状になり、どんどん幼くなりました。」

「・・・・だけどお酒のんでませんでした?」


「あれは、まぁ、投げやりになりたかったんです。

自分はやはり試作品だと感じました。普段人形はかなり耐久性がありますが私の場合は壊れる瞬間を待つだけでした。・・・・だけど時雨様は私を助ける為に契約までしてくれました。・・・嬉しかった。」


抱き着かれながらも時雨は罪悪感にまた、襲われていた。


「あの、美奈さん・・・・・」


涙を流しながら叫ぶ美奈。

「いいんですっ!私は・・・・時雨様の近くにいるだけで構いません。それだけでいいんですっ。剣治さんに契約すれば人間になれる事を聞いて試してもくれました!私はそんな時雨様と一緒にいたいんですよ!」

時雨と美奈は互いに勘違いしているようだ。


「・・・・美奈さん、苦しい!死にます!柔らかい何かが僕の顔に当たってますっ!」


「あ、す、すいません!時雨様!」


時雨が美奈に運ばれて行った後、やはり剣治が現れた。


「・・・時雨君はよく女の子を泣かすなぁ。」


時雨の運命は廻る。


自分を守る為、そして約束を守る為に・・・・。

なんとなく、今回で終わりそうですね・・・・。さて、今回の長い冒険どうでしたか?楽しんでもらえたらうれしいです。・・・・・後、評価してもらえたらかなり嬉しいですが・・・・。次回は二十回記念と一つの節目にしたいと思います。

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