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会計未亡人の異世界勘定~転生偉人は気まぐれに買い叩く~  作者: マシュマロ羊


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6/6

⑥魔導の夜、理性の崩壊

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

お待たせいたしました。

ひととき語らいをよろしくお願いします。

のんびりお付き合いいただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)

 



 国境を越え、人里離れた森で夜を迎えます。

 オーレリアは馬車を降り、周囲を見渡して眉をひそめた。


「……キース。宿もなければ薪もありませんわ。野営なのにする材料がありません!」


「まあ、そうびびんなさんな、お嬢さん。……ほれ、『蔵出し(ストレージ)』だ」


 キースが何もない空間に手を突っ込むと、波紋のように空気が揺れ、中から豪華な天幕(テント)と折り畳み式の椅子、さらには極上の酒瓶や料理が次々と空間から湧いて?出てきました。


「は……? い、今、どこから……? 空間の歪みから物品を? その維持費(エネルギー)の出どころはどこですの!?」


「出どころ? 俺の魔力だよ。……松風、火を頼むぜ」


 キースが隣で欠伸をしていた黒馬の首を叩くと、松風は面倒くさそうに「フンッ」と鼻息を一つ吐きました。

 すると、……なんという事でしょう。

 積み上げてもいない地面に、ボォッと青白い炎が灯るではないですか!

 薪も、火打ち石も、着火剤も、なんにもいりません。


「………………」


 オーレリアは、手に持っていた算木さんぎをポロリと地面に落としました。

 彼女の脳内にある「室町式・物流コスト表」が、音を立てて崩壊していきます。


「薪の調達費、ゼロ。運搬の労力、ゼロ。火種を作る時間もゼロ。……ありえませんわ。こんな『不当な利益(チート)』ですわよ! 物理法則に対する、明らかな会計不正、いえ、反逆ですわ!!」


「いや、反逆って言われてもなぁ……」


 キースは苦笑いしながら、魔法で冷やした酒を猪口に注ぐ。

 一方のオーレリアは、膝をついて地面の火を凝視していました。


(……この火、いつまで燃え続けるの? 燃費は? 松風さんの空腹度(燃料費)との相関関係は!? ……ああ、もう! 計算が、計算が合いませんわ!!)







 松風が鼻先から放った青い火が、パチパチと音を立てて夜の闇を払います。

 キースが「さあ、飯だぜ」と背を向けた瞬間、オーレリアが震える手で松風の大きな鼻面に歩み寄りました。


「……ま、松風さん。貴方、今、何をなさいましたの?」


 松風は「んだよ、こいつ」と言わぬばかりに、大きな瞳でジロリと彼女を見下ろします。

 オーレリアは恐る恐る、絹のハンカチを取り出しました。


「お腹の中から火を吹いたの?……そんな無茶な事したら、内臓の耐熱が限界を超えていますわ! 喉は焼けていませんか? 舌は? 青い火は赤より高温だと聞き及びます。……ちょっと、口を開けてご覧なさい。火傷をしていたら、明日の行軍(物流)に差し支えますわ!」


 必死な形相で鼻先をハンカチで拭い、口の中を覗き込もうとするオーレリアに、 松風は「……はぁ?」と呆れたように鼻を鳴らします。

 ですが彼女の瞳が本気で自分を案じ、瞳が潤んでいるのを見て、毒気を抜かれたように大人しく従いました。


「ぷっ……はははは! 腹が、腹が痛ぇ……!」


 ついに耐えきれなくなったキースが、椅子から転げ落ちて爆笑します。


「おいおい、お嬢さん。松風は魔物だぜ? 火を吹くのは人間が呼吸するのと同じだ。火傷なんてするわけねえだろ!」


「笑い事ではありませんわ、キース! 『当たり前』で済ませるのが一番の思考停止です! もし松風さんが壊れて……いえ、お怪我をなさったら、この旅の全工程が破綻するのですからね! ……よし、熱はありませんわね。喉もしっとりしています」


 松風の喉元を優しく撫で、ホッと胸を撫で下ろすオーレリア。

 松風は、自分を「資産」としてではなく「一個の命」として、必死に心配する彼女の熱量に、少しだけ耳をパタパタと動かして(照れ隠しのように)顔を背けました。









 会計女子であるオーレリアにとって、数字は「1か0か」「黒字か赤字か」の明確な世界。

 対してキースが受け継いだ東山文化の「侘び寂び」は、あえて「完成させない」「不完全なものに価値を見出す」という、極めて曖昧で「間」を大切にする世界です。


 食事も終わりのんびりとした時間を過ごしていると、キースがオーレリアに質問しました。


「なあ、オーレリア。あんたが前世建てた『銀閣』……結局、銀を一枚も貼らなかったのは、やっぱ計算(コスト)が合わなかったから?」


「当たり前でしょう? 剥き出しの木材の方が維持費も安いですし、何より銀を貼る予算があるなら、それを種銭にして高利で回した方が、どれだけ利息を生むと思ってるの……。あの『庭バカ』の趣味に付き合って、一銭の得にもならない装飾に金を捨てるなんて、会計担当者として万死に値しますわ」


 苦笑いを浮かべながら、キースは酒を煽ります。


「あははっ、相変わらずシビアだねぇ。だがよ、あの剥き出しの木が、月の光を浴びて黒光りする『間』の美しさ……あれこそが、完成された銀ピカよりも贅沢な『無駄』ってやつなんだぜ。あんたには、あの『余白』の価値が分からねえのかい?」


「余白? 帳簿に余白があるなんて、不正の温床ですわ! 数字は埋まってこそ、美しく完結するのです。曖昧なんて、ただの『管理不足』の言い訳に過ぎませんことよ!」


「……違いねえ。だがな、あんたが必死に『白黒』つけようと戦ってるその背中が、一番『侘び寂び』を感じさせるってのは……皮肉なもんだな」


「いいですか、キース。『美』なんて、黒字が出てから語るものですわ。 前世のあの人(義政)みたいに、借金で銀閣……いえ、楼閣を建てるなんて、私、今世では絶対に許しませんから!」


 松風の首筋を撫でながらキースは、苦笑を浮かべます。


「……借金、か。だがよ、オーレリア。あんたが『無駄』だと切り捨てるその隙間に、人間が息をつく『遊び(余白)』があるんじゃねえのかい?全部を白黒つけちまったら、世の中はただの算盤の中身になっちまう。……まあ、あんたにはこの『侘び寂び』、一生分からねえだろうがな」


 ブスッと顔を膨らませ、教政からも似たような事を言われた事を思い出します。


「分からなくて結構ですわ! 私は計算し尽くされた『完璧な帳簿』の中にこそ、至高の美があると思っていますから」


 数字に隙間などあれば、不渡り不履行が横行してしまう。四苦八苦して完結させた銀閣寺の苦い思い出と、わけも分からない美の設計図に、つくづくウンザリ気味になるオーレリアでした。


「なぁ……、やっぱり銀貼り付け」


「……てなど、いませんわ!!」


 怪しい事程この上ない……、いまだ謎のままです。







読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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