7、邪魔するなら「カエル」
俺の狭い部屋に、また一人客が増えてしまった。しかも騒がしめの。
「おお!これが君のアバターなんだ!可愛らしいね!このパソコンで配信してるんだよね!配信者の家って初めてだし新鮮だ!」
「五月蝿いわね…アリスも泣いてるわよ」
「メイジちゃんの所為ですからね!?」
騒ぐ「犬太郎」を横目に何故か泣いていたアリス。メイジに唆されて怒るアリス。メイジとアリスが怪訝そうに顔を近づける、留守番の間に何があったのだろうか、余計な事をしてないと良いけど。絶対してるなメイジだし。
「メイジちゃんあの話絶対に秘密ですからね!タイミングを見て私から話しますから!」
「分かってるわよ 私もこう見えて懐が大きいのよ?」
少し膨らんだ胸に手を当てて自慢げにするメイジ。そして視線を下に落とし、何かを思いついたように嬉しそうに言う。
「私の方が…おっp」
「ストップ!!!」
イヌタロウが慌ててメイジの口を塞ぐ。メイジも直後暴れるが、すぐにおとなしくなった。
「なに…なんて言いかけたの?」
グレーテルが無知の眼差しでみんなを見る。イヌタロウには分かるようだが、俺にも見当がつかない。
「私の大爆笑ギャグを止めるなんて…嫌いじゃないわ」
「お前も好きなのは分かったけど自重しろ!」
余裕そうなメイジをイヌタロウが叱りつける。犬と赤ずきん…立場が逆の…。
「ところでさ!仮面ワンダー…だっけ 結局何なの?」
イヌタロウが疑問を問いかける。それは俺も知りたかった、この中で一番詳しそうな人を見る。俺とメイジは「アリス」を。グレーテルとイヌタロウは「メイジ」を見た。
「主様!お二方には私が見えてません!」
「そうだった!…なんでメイジはワンダーしたままなの?」
仮面を取らないメイジはアリスをニコニコと眺める、怖い。グレーテルも手を叩き、仮面を身に付けた。
「え…流れ的に俺もしないとか?」
イヌタロウは躊躇する。理由はチョンマゲだろうか、犬達だろうか。
「良いじゃないみんなでコスプレパーティー 嫌いじゃないわ」
「チクショウ!」
メイジに煽られ渋々仮面を付ける「モモタロウ」。そして全員の視線がアリスに向いた。
「あなたは桃太郎なんですね…日本の童話まで…」
「あれ?アバターにそっくりじゃん」
「可愛いだろ?」
俺は自慢げにしていると空気がシラけてしまった。アリスも照れていたが、顔を振って冷静を取り戻した。
「私も詳しくは分かっていません なので説明出来る事だけしますね」
アリスの仮面ワンダー説明会が始まった。
「ユキ…」
シエラは眠るユキを眺め、悲しそうに呟く。
「他のワンダー達も手強いケロ…このままではユキは…」
「もういいよ あの人達がユキを苦しめるようには見えなかった」
立ち上がり、カエルを睨みつける。
「あなたが一番怪しいのよ…もっとちゃんと説明して…!!」
静かに怒鳴るシエラ。その言葉は重く、カエルも笑ってはいられなかった。
「…まぁ信用はないケロね 分かったケロ」
カエルは顔に手を近づけると、見えない「仮面」を外した。
「嘘…あなたも…?」
カエルだった「それ」は光に包まれ、やがてシエラより大きい大人の姿に変貌した。
「カエルの口調も気に入ってたんやけど…この姿じゃ流石に変やな」
その姿に似合わぬ関西弁。そして黒いローブに特徴的な帽子、どう見ても…
「まさか…『毒林檎を食べさせた』のは…!」
姿は「魔女」。カエルは怪しい黒い魔女だったのだ。




