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仮面ワンダー「アリス」  作者: らゐをふ


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5、「シエラ」の目的

「意味が分からない…」

 突然遊びにやって来て突然呆然とするグレーテル。出迎えたのはもう住み着いてしまったシュクで、俺は雑談配信をしていた。

「何で男が女の子の声で配信してるの…?」

「僕もやってるよ!」

「尚更理由が分からないわ!」

 なるべく聞かない様に、配信に支障が出ないよう画面に集中していたがこのまま騒がれても困る。

「ごめんちょーっと…宅配便が来たみたいだから!突然ごめんだけど一旦配信切るね!」

 幸いにも二人くらいしか見ていなかった生配信を中止して、切り忘れがないか隅々までチェックして電源を切る。溜め息をついてから騒ぎ合う部屋に向かった。

「じゃあ私が今まで見ていた配信の数々は…全部男だったの!?」

「そうだよ 悲しいね」

「誇張が膨らみすぎてないか!?」

 シュクはケラケラ笑いながら、グレーテルをからかって遊んでいた。子供同士仲が良いのはいいのだが、シュクの性格が終わってる為まともに喜べない。

 シュクの配信も見てみたが…割と普通の配信だった。別に変な期待はしていなかったが、想像もしない「歌配信」をしていたのだ。しかもかなり上手くて一日聴き込んでしまった。

「あれハンス 配信はもういいの?」

 シュクが無邪気そうに問う。恐ろしい子や…。

「お前らが居ると配信に支障来たしそうだからな」

「なんて言ってるけど どうせ人が集まらないんでしょ?ハンスお兄様」

 グレーテルも中々酷い事を言う。「様」付けなのに容赦ないギャップは何なんだ。

「だ…大丈夫ですよ主様!私は応援してますから!」

「味方なのはアリスだけだよ…」

 アリスの肩を掴んで少し泣く。その様子にまた、グレーテルが驚く。

「今度はイマジナリーフレンドと話し始めたわ お兄様って…ひょっとしなくてもヤバい人?」

 アリスは俺にしか見えないんだっけ。仮面を付ければ見えるようになるのだが、それよりもグレーテルの台詞に苛立ちを覚える。

「ひょっとしなくてもって何だ!俺よりお前らの方がよっぽどタチ悪いだろ!」

「…!酷い!お兄様なんて嫌い!」

 部屋を勢い良く飛び出してしまうグレーテル。怒りに任せて怒鳴ってしまったが、冷静に考えてみればグレーテルは普通の女の子。兄に色々狂わされてはいるが、従来はただの子供なんだ。

「行っちゃったね これで二人きり…」

 どこかの誰かと違ってな。

「はぁ…仕方ねぇ追いかけるぞ」

 まだ遠くには行かない筈。謝る為にもグレーテルを探す事にした俺は部屋を飛び出した。

「はう…また留守番ですか…」

 落ち込むアリス、しかし見えない筈なのに不思議そうにアリスを眺めるシュク。やがてフードを被り仮面を付けた。

「やっぱり泣いてる…良かったら遊びません?」

 怪しさ満点の誘い文句に、アリスは困惑していた。


 思った以上に手間がかかる。連絡先は交換済みだし、電話するのも良いかと思ったが言葉だけでは仲直りが難しいだろう。ちゃんと目で見て、表情から相手を考えなきゃいけないのだ。

「でも埒があかねぇな…」

 思った事を呟く位には苛立っていた。せめてグレーテルが行きそうな場所に目星をつけておくべきだった。例えばあのカフェとかどうだろうか。

 見つけた。良かったと安堵するが、どうやら状況は穏やかではないらしい。

「返して!仮面返して!」

 グレーテルは謎の少女に仮面を取り上げられていたのだ。

「お兄ちゃんの形見なの!それが無いと私…!」

 泣き始めるグレーテル。俺も仲裁に行かないといけないのだが、取り上げた少女の目的を知らない事には下手に動けない。

「…大事なものなんだ」

 少女の表情は読めない。怒っているのか、哀れんでいるのか。どっちとも取れる無表情だった。

「『シエラ』!こっちにも居たケロ!」

「おわっ!?」

 喋る「カエル」の登場に驚く。二人もこちらに振り向いた。

「ハンスお兄様!?」

「ふむ…コイツなら試せるか」

 「シエラ」と呼ばれる少女はグレーテルの仮面を優しく返した。

「え…いいの?」

「場合によってはもう一度奪います」

「ひっ…」

 完全に怯え切ったグレーテル。そしてシエラは、スクールバッグから取り出した仮面を装着した。

 青い光は黒くなり、漆黒のドレスを身に纏ったシエラ。相手がワンダーしたって事は敵意があるって事か…。渋々俺も仮面を付け、青空アリスとなった。

「『終夜しゅうやシンデレラ』の初陣ケロ!」

 「シンデレラ」…ガラスの靴を履かせる童話だっけ。

「『ユキ』の為に…お覚悟を!」

「まずは話し合いを…してくれませんよね!」

 蹴りかかるシンデレラから距離を取る。ガラスの靴が武器なのか、避けた後には粉微塵になったガラスの破片が散らばっていた。

「こういう事もできるケロ!」

 ガラスの破片が宙を舞い、俺目掛けて飛んでくる。

「シンデレラってそういう事出来ましたっけ!?」

「本編で使うことがなかった技ケロ 実は出来るケロ」

「嘘でしょ!?」

 一番驚いていたのは、何故かシンデレラ本人だった。

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