11、舞台にはブレークタイムも必要です
その舞台は素晴らしく酷かった。人形が笑い、影が蠢く。そして消耗していくシュク。それを、口を開けたまま眺める事しか出来ない。
「もういいよ!私を置いてどっか行ってよ!」
そんな叫びも届かない。これじゃユキと一緒だ。
「んー素晴らしいですね!キャスト不足は否めませんがその踊りは十分に観客を喜ばせる!」
「どこに向かって…言ってるのかしら…」
女の子になったシュクは強気な口調を崩さない。さっきまで悩みを聞いていた少年とは思えない、この子は私なんかと違ってよっぽど強い。
「スカウトの邪魔をされたら…誰だってキレるわよ…!」
…ん?スカウト?
「ワタシ達を彩る『黒』としてこの娘は渡さない!」
「ちょっとどういう事!?」
まさか、これも全て私を何かに誘う為?そもそも何に?何のため?
「…どうやら一時休憩の時間ですね」
仮面を被った青年は指を鳴らし、世界が公園に戻っていく。
「何のつもり?」
「腕を見たかったのです!リーダーである『赤』の実力がどれほどかを!そして…心底ガッカリしました あなたはリーダーには向いていない」
何故か落胆する青年、明らかに苛立つシュク。
「また邂逅する事になるでしょう 舞台設定はまたこの『パレード』にお任せを」
そう言ってパレードと名乗る人物は闇に溶けてしまった。
「…ふん」
シュクは仮面を取り外して少年の姿に戻る。
「情けない所を見せてごめんね 立てる?」
笑顔で手を差し出すシュク。その手をはたいて、私は問う。
「何が目的?」
「仲間が欲しいんだ 『仮面ワンダーシンデレラ』さん?」
明かしていないはずの正体を言われ、動揺と同時に睨み返す。少年は、気持ち悪いほど笑顔だ。
「いやーこの程度ですか 仲間も現れないなんて…まだまだ育成不足」
パレードは、とある空き地で寛いでいた。ある少女と共に。
「これが私に見せたかったもの?」
「目指していたものには及びませんでしたが あなたはどう思いました?」
「シエラちゃんが可哀想だと思う」
「どこまでも純粋ですね」
会話にならないとユキはその場から去ろうとする。しかし行手をパレードでは無いもう一人が立ち塞がる。
「貴方は…誰を助けたいの?」
片目を眼帯で隠した女性は、ユキを逃さないように視線だけで圧倒した。
「シエラちゃんの力になりたい…でも」
「でも?」
「今は…あなたの妹を助ける」
その答えを聞いて、女性は目を閉じる。
「今だけはあなたの味方よ 『フェイ』さん」
「頼りにしている」
今にも刺されそうだったシーンを、愉快に楽しむパレード。その拍手は、真剣な二人には届かなかった。
「振られちゃった…」
シュクが落ち込んでいる。こいつは何でいつも勝手にウチに居るのか。
「浮気ですか?」
アリスが真面目な顔でシュクに詰め寄る。どういう目線?
「愛しのハンスから逃げるわけないよ 欲しかったのは友達だよ」
もう愛しい対象にされているのは諦めよう。
「まさか…シエラさん!?主様を諦めるならその恋路応援しますよ!」
「応援しないで あくまで彩りになるかと思っただけ」
興奮するアリスを抑え、その真意を聞いてみる。
「シエラは…元気そうだった?」
「さぁ…情けない歩き方で逃げられたから」
モノマネするシュク。何でそうなった。
「でも彼女から悪い匂いはしなかった あの子はそう遠くない内にまた会うと思うよ」
「せやで!!!」
聞き覚えのある知らない声。そのバカでかい関西弁に、皆で振り向いた。
「ミラさん!?」
「食玩の人!?」
「誰なの!?」
二人は面識があるらしい、その変な落書きのような魚に。




