10、「パレード」、開幕
手掛かりなんて無い。あるとしたら…この姿。なぜか長い夢から起きた時、可愛らしい「白雪姫」の様な姿になっていた。
「…綺麗」
そう呟くけど、実際困った。どうすれば元の姿に戻るのだろう。今はまだ深夜だから人影は少ないのだけれど、日が昇って注目の的になるのは避けたい。途方に暮れていると、怪しいキャッチに捕まる。
「お困りですかな お嬢さん」
どう見ても怪しい。私は冷たい目で相手を見る。
「そんな怖い顔なさらないで 可愛い顔がもったいない」
男はまるで「ピエロ」。姿こそ見え辛いが仮面を被り、帽子を深く被っていて派手な格好をしている。
「あなた何者?」
「何者でもいいでしょう? でもこれから『仲間』になるかもしれない」
その男は仮面をゆっくりと外し始める。そして発光が終わると「信じられない」姿に変わってしまう。
「これから 末永くよろしく」
あの魔女と話していても拉致が明かない。孤独な夜を一人公園で楽しんでいたシエラ。思えば初めて公園で遊んだかもしれない、この齢にしてだ。親が遊びに連れていくことなんて無かったのだから。
ブランコを漕ぎながら少し過去を振り返る。カエルだった魔女はあの後結局答えを出さずにどこかへ消えてしまった。いても立ってもいられない私は、長い無駄だった詮索の後この公園に辿り着いた。
「こんな時間に女の子一人は危ないよ」
少年の声。睨むようにその方に振り向く。少年は隣のブランコに座った。
「何か悩みごと?僕で良かったら聞くよ」
「…きっとあなたには理解出来ない」
「理解出来なくても 聴くことぐらいは出来る」
少年は優しくも、少し怪しい声色で語りかけてくる。
「そうね 誰にも話せないくらいなら 何が目的かも分からない怪しい男に話すのもいいかも」
「僕そんなに怪しいかな…僕は『シュク』!名乗ったらあやしくないでしょ?」
少年は自己紹介をする。されたのなら、私も返さないと。
「『シエラ』よ 厄介毎に巻き込まれた不幸な女」
「やっぱりシエラさんだったんだ」
少年は、まるで私のことを知っていたみたいに言う。
「唯一の友達が眠りから醒めなくなって カエルが急に現れて変な格好にされて」
事の顛末を少年に並べる。支離滅裂な話を、少年は黙って聞いてくれた。
「友達…『ユキ』とまた話したいだけなのに…どうしてこんな事に…!」
気づかない内に涙が溢れていた。ユキが晴らしてくれた筈なのに、また雨が降る。
「…辛かったね 今は沢山泣いていいから 僕がそばにいるから」
少年はそんな私を励ましてくれた。今まで誰よりも冷たい態度をとってしまっていた私が、初めて子供の様にボロボロと泣き崩れた。
「おやおや 少年少女が夜の公園で二人きり しかも女性の方はとても辛そうだ いけないラブロマンスが始まりそうですねぇ」
少年じゃない、もっと怪しい声。
「公園で『初公演』 ダジャレなど私の性に合いませんがそれもまた愉快!」
目に見える仮面を被った青年は、一枚のカードを空中に投げる。それはどんどん大きくなり、私たちに向かって降ってきた。潰されたと思ったが衝撃は無い。しかし公園だったはずの、私達が居た場所はどこかの「ステージ」へと変わってしまった。
「なにこれ…どういうこと…!?」
「お嬢さんは下がってて」
少年はこちらを見ずに敵を見据える。そして少年は、「仮面」を装着した。
「折角人が口説いてるのに…良い度胸じゃない…!」
少年は赤いフードを被った、まるで「赤ずきん」の姿に変貌した。
「あなたも…仮面ワンダー!?」
「説明する手間が省けたわね」
少年だった少女は姿も口調もまるで違う。
「私は『仮面ナイト.パレード』!貴方たちの敵を演じましょう!」
怪しい男は高らかに宣言する。私は、腰が抜けて立てなくなってしまった。




