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7話


「ふん、ふふーん」


とりあえず服だ。このボロボロになった服はいつまでも着ているわけにはいかない。

私はアイドル。普段から身につけるものには気をつけないと。


けど、お金がないんだよねえ。御屋敷から貰ってこようかとも思ったんだけど、それで足がついてもやだし。


…このまま、お仕事斡旋してもらうしかないかな。


って、あ!そーいえば!!私、冒険者ライセンス取られたままだ!!


入れたリュック、多分バスデーンたちが持ち歩いているかも。今更取りに行くのもなぁ。私を売った人たちに顔合わせるのも気まずいし。


でも、冒険者として仕事するならライセンスが…。


「…あの、すみません…」

「う?」


うーん、と考え込んでいるといつのまにか側に女性が立っていた。

青い髪の少女。年は同じくらいかな。


「ちょっと良いですか?そのボロボロのお洋服…暴漢にでも襲われたんですか?」

「あ、いえ…ちょっと色々あって」

「…もしですが、よろしければ家に来ませんか」

「え?」

「来ていただければ私の洋服をお貸ししますよ。その格好でここらを歩くのは危ないです。このへんは荒くれ者が多いので、心配で。…いかがですか?」

「ホント!?行きますっ!!」


いやあ、ラッキー!神様!


道中自己紹介をしあい彼女の名前がミリィだということがわかった。

他にもミリィの家は元々は漁師をして暮らしていたとか、でもお父さんが体を壊してからは海に出られなくなっているとか。


「なるほどー、だから魔法の才能があるミリィさんは冒険者に」

「はい。幼なじみの二人と月に数回クエストをこなして生活費を稼いでいます。…まあ、お父さんからは危険だからやめろと言われてるんですが」

「そうですね、ダンジョンの魔物は怖いですからね〜」

「シロさんも冒険者を?」

「はい。ただの雑用でしたけど、一応。無能力者なので…えへへ」

「私も似たようなものです。水魔法が使えるとは言え、攻撃には使えませんし」

「え、そうなんですか?」

「はい。なので飲水的な感じで…あはは」

「あはっ、私たち似たもの同士ですね」

「ふふ、ですね」


優しい笑顔をする人だなぁ。


「あ、ここです」

「おお」


大きなお家。


「どこに行ってた…ミリィ」

「ちょっと買い物に…って、お父さん、あんまり動くと足が」

「…むっ、客か?」

「うん、ちょっと。シロさんそこのソファに座っていてください。お父さんはベッド戻ってて!」


そう言い残しミリィさんは2階へと姿を消した。


「…シロさんといったか」

「あ、はいシロです」

「珈琲でも淹れよう、待っててくれ」

「でも怪我されてるんですよね、お構いなく…」

「せっかくあの子の友達が来てるんだ、それくらいさせてくれ。それに、こうしてリハビリでもせんといつまでも漁に出られんしな」


…友達…。


「ありがとうございます」


程なくしてすぐに珈琲を持ってお父さんはあらわれた。


「いただきます」

「どうぞ」


珈琲を一口いただく。


「美味しいです!」

「よかった」


てか、ミリィさん遅ない?何してるんだろ。


「…ところで、シロさんは冒険者かい?」

「え」

「突然すまない。だが、もしそうなら…あの子を止めて欲しくてね」

「危険だからですか」

「…ああ。それともう一つ」

「?」

「私のせいであの子を死なせたくない」

「どういう事ですか?」

「あの子が冒険者をするようになったのは、私のせいなんだ。…この足の怪我。これは前の漁の時に負ったものでね。それからあの子は私のかわりに生活費を稼ごうと危険な冒険者に」

「普通のお仕事じゃダメなんですか」

「…少し、船を購入した時の借金が残っていてね」

「借金…」


「おとーさん!やめて、なに変な話してるの!?ほら、部屋戻ってよ!」

「む、ああ、そうだな。せっかくの女の子の友達だもんな、父さんは邪魔だな」

「…行って!」


背を押されお父さんは部屋へ追いやられてしまった。額を袖で拭い息を吐くミリィ。


「ふう…全く。ごめんなさい、うちのお父さんが」

「ううん、大丈夫ですよ」

「…それに、なんか勝手に友達にしてしまって」

「いえ、嬉しいですよ!お友だち!」

「そ、そうですか?」

「はい、私お友だち欲しかったので!」

「…へへ」


ミリィさんが旅行鞄を指差す。2階から持ってきた物だと思う。


「これ、洋服いれてあります。下着とかも。全部さしあげます」

「え、くれる!?」

「はい、よければどーぞ。中、確認してください。もう着なくなったお下がりみたいなものですが、綺麗なものを選んできました。…あ、勿論下着は新しいものですが。サイズ合わせてみてください」


鞄をあけると可愛らしい洋服が溢れ出した。


「わあああっ!可愛いい!!」


私は思わず抱きしめてしまう。まるでアイドルの着るようなワンピースやドレスがあって気分があがる。


「ふふ、喜んでくれてよかった。どれか着ていってください。あ、ついでにお風呂でも入って…」

「いいの!?」

「…うん、いいよ」

「ありがとう!!」


屋敷の一軒から今日まで水浴びしかしてなかったからマジで助かるー!お風呂、お風呂〜♪


「でも、なんでこんなに私に良くしてくれるの?」


私はふと疑問に思う。


「今日会ったばかりなのに、どうして?」

「…それは…」


俯くミリィさん。


「心配だったから」

「…」


嘘…ではないけど、誤魔化されたような感じ。まあ、なんでもいいか。目的の服が手に入って、お風呂までいただけるんだし。


友達になれたとはいえあまり深入りはしないほうがいい。もし何かがあって処理することになれば、そこに生じる情は邪魔になるだろうし。


「お母さん…昔、暴漢に殺されたから…それで」


…。


…あ、言うんだ。


「…そっか」


としか言えない。正直反応に困る。…いや、友達としてなんかいい感じの優しい言葉をかけるべきかな。


はっ、今まてよ?


ここは友達としてではなく、アイドルとしてのいい感じの言葉をかけた方がよくないか!?


「…さっきお父さんが言ってた話…ほんとはお母さんとお父さんで、船の借金を頑張って返してて…」

「…」

「でも、お母さんが死んじゃって…」

「…」

「お母さんが襲われたのも、暴漢から私を逃そうとしてだったの…」

「…」

「…だから、お父さんが怪我してお金が稼げなくなった今…私が借金返さなきゃって…」


しまったー!!タイミング逃したー!!

せっかくアイドル的良い言葉を言おうと思っていたのに!!


なにか、なにか…いい感じのアイドル的、言葉…。


…。


…。


「…そっか」


…いや、なんも思いつかいないんですけど(泣)


私はせめてもの空気作りにミリィを抱きしめた。




「――それなら、私たちのパーティのサポーターとか…どうかな?」


ミリィが泣き止んだ後、私が冒険者ライセンスを失くした事を話すと、彼女はそう提案してくれた。

ライセンスが無くても、3人以上いるパーティのサポーターであればクエストに参加ができる。


「ミリィの…?」

「うん、うちメンバー三人でさ、いつも日雇いとかでサポーターをいれて四人でダンジョン行ってるの。ちょうど明日行くけど、シロどう?」

「行きたい!」

「じゃあ明日街の冒険者ギルドに来て!多分うちのリーダーもいいって言ってくれると思うし!」

「やたー!ありがとー!」

「…ところで、お夕食多く作りすぎちゃったんだけど、食べてく?」

「いいの!?」

「うん。お父さんもシロのこと気に入っていくれてるし。なんなら泊まっていけば?お金無いんでしょ」

「あなたは神か」

「ええっ!?」


そんなこんなでお泊まりをする事に。いやあ、優しい人もいるとこにはいるんですなぁ。

バスデーンたちとずっといたから視野が狭くなってたわ。せっかくだから羽伸ばそう。


ふかふかのベッド。二人で横になり灯りを消す。


「ねね、シロのお話きかせて」

「私の?」

「どうしてお金が欲しいの?普通のお仕事じゃだめなの?」

「ダメ。夢の為に沢山お金稼がないと」

「夢?夢があるの?どんな夢!?」

「アイドルになる事!」


「…アイドル?」



※※※



――夜更けの林の中。


3人の男が潜んでいた。


「…あそこの家。ミリィって娘がえらい綺麗でな」

「へえ、楽しみだ。けど、大丈夫なのか?」

「父親と娘の2人暮らし。しかも父親は足を怪我してる…男3人で襲えばなんとでもなるさ」

「おーおー、さすがは強姦のプロ!何度もやってるやつは言う事がちげえねえ〜」

「ここの家だって、母親ヤッて殺したのお前だろ?海に沈めちゃったりしてさぁ!酷いねえ!」

「酷い?そうか?母親の元におくってやろうってんだ…むしろ優しいだろ。親子はみんな一緒にいねえとな」


スキンヘッドに蛇の入れ墨が入っている大男、コーシュはそう言って拳を鳴らす。


「とか言って、前にみた娘のミリィちゃんが育った頃だから来たんだろーが、へへ」


笑うロン毛の男はダガーを舐める。


「あー、早くやりてええよ。娘を父親の目の前でゆっくりと犯し殺してえ…くくっ、くひっ。いこーぜ…へへ」


スキンヘッドの小男は小瓶を手に持ちニヤリと笑った。


「さて、深夜のショータイムだ!!」



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