17話
「――スキル…『破魔の太刀』ッッ!」
刀が燃えるような紫色のオーラを纏う。
ゲンサイのスキルは3つある。その内のひとつ『破魔の太刀』は、敵の物理防御を無視し内包された魔力を切り裂くものである。
――ヒュオッ
(…ゲンサイさん、は、はやい!!本気だ…!!)
縦横無尽に動き回るロックスネークを追って迫るゲンサイ。魔力を全開にし身体能力を極限まで高め、素早いロックスネークについて行っていた。
スパッ!!
かろうじて尾を捉えた。するとロックスネークの魔力が僅かに減少し、動きが微かに鈍る。
『破魔の太刀』は魔力を切り裂き消失させる。魔力は全ての源であり、攻撃時はもちろん防御時にも大きな影響を与える。
その魔力を削り消失させる『破魔の太刀』は、例え防御されても触れた魔力を消失させてしまう。
(硬いとはいえ、それは魔力で強化されているからに過ぎない…このまま全ての魔力を消し去ってしまえば、こやつもただの大きな蛇!そうなれば殺せる!)
「…す、すごい…このままいけば、単独であの伝説の化物、終焉のロックスネークを…」
ミギリダは圧倒されていた。ゲンサイのその異様な戦闘力に。
「…けど、でも…」
しかし、同時に膨れ上がる不安。
「…ゲンサイさんの、ま、魔力の減りが…」
額から流れ、飛び散る大量の汗。大きな魔力を使用し続ける『破魔の太刀』により、ゲンサイの魔力と体力はぐんぐんと減り続け、視界がぼやけ始めていた。
「…ぬぅ…ッ」
僅かなふらつき、1秒にも満たない意識の途切れ…
「げ、ゲンサイさんっ!!」
「――はっ、しま…」
――ドッ
ロックスネークの尾による薙ぎ払いがゲンサイを捉えた。
※※※
「…モグラ叩き」
「…はあ、はあ…え?嬢ちゃん…な、なんて?」
「あ、こう言うゲームがあるのを思い出しまして」
「ふうん…?ま、なんでもいーや…助かったぜ」
そう言ってダージさんは大の字に倒れ込んだ。リョカさんは魔力を激しく消耗しちゃって、座り込んで言葉も出ないみたい。
(…ま、そりゃそーだ)
相手はAレートの…しかも特殊個体。アレイダさんがいなかったらかなりヤバかったかなー。
「…けど、よくわかったな…嬢ちゃん」
「はい?」
「さっき戦った、『潜王猿』は身体を周囲の物質に変化させ同化する魔物…しかも分裂してくる特殊個体だった…よく岩や地面の中にいるやつを…しかも本体を見つけられたな」
「…えーと。…私、魔力がひとより多くってですね。こう、地面に広げたり空気中に散布して魔力探知とかできるんです…」
「…は?」
ぽかんと目を丸くしているダージさん。
「…で、できるんだよ…」
リョカさんがようやく喋れるくらいに回復したようで、話に入ってきた。
「それを応用することで、彼女は先導者として高い評価を得ている…なにせ彼女がいれば魔物とであう確率はゼロなんだからな」
「…えぇ…」
「それに今のように戦闘面でも絶大な効果を発揮する。敵の動きを完璧に把握し、皆の生存率を大幅にあげる…彼女はゼロスキルでありながら、Aランク冒険者よりも重宝されている」
「ちょ、ちょーっと!リョカさん!あの、あんまりそういうこと言わないでくださいよ。てか、約束は!」
「…すまん。だが、これはもう界隈では有名な話で、殆どの冒険者や狩人は知っている」
「えーっ(泣)」
「け、けど…だがまて。探知能力がすごいのはわかったが、それはアレイダも同じだったよな?あの雷系のスキルで、電磁波を使って探知を試みていた…だが本体は見つけられなかっただろう!」
…へえ、ダージさん観察力あるなぁ。いっけん完全に脳筋タイプにみえるけど、さすがは今回召集されたAランク冒険者って感じだね。
「…確かに、それは…。シロさん、なぜ的確に本体を見つけられたんだ?」
「あの猿は、岩壁の中を高速で動いていたんだ…どうやって本体を…」
「…それは、まあ動き方ですかね」
「動き方?」
「はい。やっぱ本体って殺られちゃうとマズイじゃないですか…だから分身体と本体とでは動きが違ってくるんです。今回の場合、岩の中で姿がみえないから余計それはわかりやすかったかな。一番攻撃があたらなそうな場所に本体がいてて…対して分身体はいくら殺られてもいいので、積極的に攻撃しに私たちの所へ何度も来ていた。その差ですね」
「…それを見極めた…ってのかよ」
「はいっ」
そうして私が本体の位置を割り出し、アレイダさんの強力な一撃で貫いた。
「でも、もたついてスミマセンでした。お二人に分身を引きつけて貰っちゃって…かなり消耗させてしまいました」
分身体はだいたい数百体いた…このメンバーでなければあっと言う間に追い込まれていたかも。
「…や…お嬢ちゃんのおかげで命があったんだ、あれくらいするさ…助かったよ、マジで」
「…むしろシロさんが割り出してくれなかったら、アレイダさんはともかく、僕とダージさんはあのままジリ貧でやられていた。ありがとう」
(けど…)
さっきの戦闘時に空いた天井の巨大な穴。アレイダさんが空けたそれは深く底がみえない。穴の周囲には亀裂も少なく、それだけ大きな力が一点に集約されとてつもない火力だった事がうかがえる。
…アレイダさんのあの技、凄かったな。
電気バチバチーって…いーなぁ、あのスキル。羨ましい。
(…)
「…さて、そろそろ行こうか…ダージさんは大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ割と魔力も回復した。あとは向かいながらでオーケーだ」
「シロさん、それじゃあ…」
「はいっ!では最短で皆さんのもとへ先導します!」
…アレイダさんは潜王猿を倒してすぐにミギリダさん達の元へ向かってもらっている。
あの電撃を纏って向上したスピードなら、もうそろそろたどり着いているはず…。




