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16話


急いで支給されたリュックを背負い、ダンジョンへ。封印結界が施されているので、ミギリダさんの転移スキルを使うにしても一旦内部へ入らなければいけない。


内部は迷宮型で、ゴツゴツとした岩壁で周囲を覆われている。ここは前に一度だけ来たことがある。

そうだ、ちょうどアレイダさん達のチームと合同のクエストで。


「頼む、ミギリダさん!」

「…は、は、はいっ…!」


ミギリダさんが地面へ手を当てると魔法陣が出現。


「ゆ、ユウリさんとリンクしました…皆さん、陣に乗ってくださ…」


――ミシッ、


「皆さん、陣から離れてください!!」


私は叫ぶ。


スドオオン!!!と凄まじい轟音。天井の岩が吹き飛び、巨大な拳が落ちてきた。


「…た、すかったぜ!悪い、嬢ちゃん」

「いえ!」


ミギリダさんゲンサイさんの2人は、転送スキルが発動し紙一重で今の一撃を回避。おそらくミギリダさんが機転を利かせたんだと思う。


「リョカさん、ごめんなさい!」

「い、いや、むしろ助かった…すまない!」


私はダージさんを抱え、間に合わないと思ってリョカさんを蹴り飛ばし回避。

アレイダさんは持ち前の反応速度とスキルで余裕で回避していた。


(ふう、良かったぁー)


天井から現れた岩の拳が地面を割っている。さっきまで私たちがいた場所に突き刺さり、その地面が大きく陥没し岩盤がめくり上がっていた。


「…タイミングがいいな」


アレイダさんが腰の剣を抜く。


「今の一撃は確実に私たちを纏めて殺すつもりでしたね。誰か内通者がいるのかもしれない…」

「な、内通者だと?」

「わかりません。もしかしたら、千里眼的なスキルで観られているのかもしれませんが…」

「だが、確かにタイミングが…」


(…ふーん、成る程)


ま、どうあれ少なくとも、私が助けなければダージさんとリョカさんが死んでいた可能性は高い。

この2人もかなりの強さ、Aランク冒険者相当だし今の攻撃も普通なら躱せていたはずだけど。


「つーか、今の…殺気も気配も無かったぜ!?急に現れて攻撃してきやがった…こんなの初めてだ」


そう、唐突に出現した。岩の中にいれば皆すぐに気配を察知できたはずで、この攻撃を躱せていた。

けど、何もないところから突然あらわれた。私たちが襲われたエビルプラントクイーンのように。


(…ってことは、この一連の事件は)


――ミシッ、ミシミシ…


腕がもう一本天井から生えてきた。


「人為的…誰かが仕組んでいる事が確定したってことか」


そう言ってリョカさんが苦い顔をする。腰から杖を取り出し魔力を込め始めた。

ダージさんも両拳に魔力を込める。


あの魔獣の腕の形状、岩や地中を泳ぎ獲物を引きずり込み狩る大型魔獣、『潜王猿ダイブモンキー』…あの腕の大きさからして特殊個体かな。レートはA、私達が襲われたエビルプラントクイーンと同等か少し上。


「なに、心配する事はないですよ」


――バチチチ!!


アレイダさんの身体から放たれる電撃が持っている剣を覆う。凄まじい魔力密度。


「我々の力はAランクの中でも上位…この4人であれば、あの程度の魔獣…すぐに狩れます」


雷神アレイダ――最もSランクに近いと言われているAランク冒険者。



※※※



「――疾ッ」


ゲンサイは居合斬りにより、魔獣の攻撃を弾き続けていた。


――ギッ、ギギギィーンッ!!


「だ、大丈夫ですか、ユウリさん!」

「…ああ…しかし、これは…一体」

「ミッションはこの突然現れた魔物を捕獲することだったんです…」

「なるほど、そういう事か…しかし、本当に突然…ぐっ、」

「ユウリさん…す、スミマセン、僕のリュックには怪我を治療できるものが…」


ユウリは現れた魔物に攻撃された際、額を裂傷し右足を骨折した。


「…っ、…血が止まらない…」


(一旦リョカさんの所へ戻るか…いや、ユウリさんを一人にすればあいつは必ず弱ってる彼を狙う…一緒に連れて行って、もしタイミング悪く攻撃が飛んできたら…し、死ぬ…)


――ズギャアアア!!


「――避けろ!!」


ゲンサイの叫び声。


「!!」


防ぎきれなかった魔物の尾の薙ぎ払い。それがミギリダとユウリにヒットする瞬間、事前に貼っておいた魔法陣を起動し近場の陣へとスキルで移動する。


ミギリダの転移スキルはマーキングした場所や物が近くにあればあるほど、発動までのスピードがあがり、それに応じて魔力の消費量も増減する。また、一緒に移動させる物体、生物の数や大きさにもよって消費魔力は変わる。


(…ゲンサイさんを置いて戻れないし、戻ってもまた来れる魔力量が残ってるとは限らない…な、なにより…)


「――ぬぅ…おおおっ、ぐ…!!」


(このままではゲンサイさんが殺される…サポートしないと…)


ゲンサイが対峙しているのは、『ロックスネーク』だった。

巨大な岩の蛇。レートAであり、本来いかにAランク冒険者であっても一人では太刀打ち出来るはずもない、強力な魔物。

戦っているのがゲンサイでなければもうすでに皆殺しにされていた。


一手間違えれば吹き飛ばされバラバラにされる攻撃を神の如き見切りと居合斬りで弾き続ける。…だが、体力がどんどんと削られていっていた。


(…ぐ、ぐぅ…この猛攻…こちらは攻撃にも転じれずこのまま…このままでは、削りきられ死ぬ…!!)


巨大な体躯。その体長はゲンサイを遥かに凌駕し、口を開けば牛の1頭も簡単に丸呑みできそうな大きさだった。


身体に突きささっているいくつもの槍や斧、それらは歴戦の個体である証。


(…この傷だらけの身体…こいつ、もしや…)


岩で出来た重い身体、巨体とは思えない俊敏な動きで周囲を移動し、攻撃を重ねる。

周りの岩を能力で操り、岩の槍を生成しゲンサイとユウリ、ミギリダを狙う。


それぞれがそれぞれに、その攻撃を躱し防ぐので精一杯だった。魔力がじりじりと削られ、ユウリの怪我による出血は深刻なレベルに。


――このままだと、あと5分後には3人は終わりを迎える事になる。


(…こんな、所で…殺されてたまるかッ!!)


ゲンサイの魔力が大きく揺らいだ――


「スキル…『破魔の太刀』ッッ!!」


ズズ――




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