15話
「――と言うわけで、これから任務を開始する。ダンジョンに入ったユウリ(囮のAランク冒険者)の前に例の現象で魔物が現れたら捕獲しその場で解析する流れだ。…質問はあるか」
リョカさんが皆に聞いた。
例のお国からのミッション当日。
ここダンジョン『ケインの墓』の前に参加メンバー5人が集っていた。
「その場で解析って、…魔物は捕獲して持って帰らねえのか?」
体格のいい筋肉ムキムキのスキンヘッド男性。Aランク冒険者、ダージさん(おそらく30歳くらいかな)があくびをしながら聞いた。
「お、恐らく…Aランク、の魔物が現れるので…運び出すことはできないのでは…」
声を震わせる小柄な男の子、国家護衛軍の上級護衛ミギリダさん(子供に見えるけどたぶん20歳くらい)が答える。
「囮はAランク冒険者、故に現れるのもA相当の魔物だろうのう。これまでの情報ではそうなっとったからのう」
白髪のおじいさん。ちょんまげがあって刀も携えている。お侍さんみたいなこの人はゲンサイさん(70くらいだと思う)。覚醒者さん。
「はい。Aランクの魔物は大きな個体が多い…なので運び出すことは不可能です。何より、危険な魔物をダンジョン外へ出す事自体禁じられていますしね」
長い金髪の男性がにこりと微笑む。彼はAランク冒険者でギルド『シセンリュウ』のマスター、アレイダさん(確か今は…25歳くらいかな)。
ちなみに誰も彼もが有名人。みんな多くの実績実力を持ち、Aランク冒険者相当の戦闘力を有している…。
そんな中、Fランクの私…場違い感ヤバくて死ぬぅ。
あ、それとそれと…ちなみにアレイダさんは『イレド』に私がいた頃、何度かミッションで一緒になったことがあったりする。まさかまたミッションでご一緒するとは。奇遇ですねえ。ちょっと気まずいけど…イレド抜けてるから。
そんなこんなでダンジョン外で待機中。中のユウリさんから通信用魔石で異常有りの報せがくるまでそれぞれ時間を潰している。(報せがあったら中入って転移スキルでユウリさんの魔力を追って移動※ミギリダさんのスキルです)
「…なあ」
「はいっ!」
スキンヘッドのダージさんに声をかけられた。
「あんた、さっきから何してんだ?」
「あ、これですか?ダンスの練習です!ライブ近いので!」
「ライブ…?よくわかんねーけど、疲れねーのか?そんなに動きまくってて。ミッション大丈夫かよ」
「はい、私体力にだけは自信があるので!ご心配なく!」
「…あ、そう」
練習大事だからね!大切な初デビューライブ、ギルドマスターもポケットマネーぶちこんでまで盛り上げてやるって言ってくれてたし!すっごく期待されてるからね!!こういう隙間時間をつかって完成度高めねばですよ!
「なあ、ライブってなに?やっぱ気になるんだけど」
「! ライブと言うのはですねえ、舞台の上で歌って踊る事です!」
「歌って踊る…ふうん?」
「実は私アイドルをしてまして、今度街のお祭りでそのライブをするんです!私がするんですよ〜!えへへ」
「へえ、そうなのか。あんたが歌って踊る…歌は知らねえが、今の練習…動きにキレあったしさぞ上手いんだろうなぁ」
「興味ありますかっ!?もしあれば観に来てくださいよ!!私頑張りますから!!ちなみに無料でご覧いただけますっ!」
「おお、タダかよ!それじゃあ酒飲みがてら観に行っちゃおっかなぁ!?」
「やたっ!嬉しいです〜!!」
わあは!観に来てくれるとか、マジで嬉しいっ!!
「…おい、貴様ら。これからミッション、つまりは命のやりとりが始まるんじゃぞ…浮ついとらんで気を引き締めろ」
「あー、はいはい。真面目だねえ爺さんは」
「…はい、スミマセン」
ゲンサイさんに怒られた…しゅん。
てか、ゲンサイさんも誘っちゃおっかなぁ?あはっ☆
「まあまあ、あまり気を張り続けていても疲れちゃいますよゲンサイ殿」
…あ、アレイダさん!優しい!
「それに彼女なら心配いりません。私も何度かミッションで一緒になったことがありますが、かなりの腕がありますよ」
「…シロさんは、ぼ、僕も…知ってます…すごい人だって…」
「フン、そんなものはここまでの立ち振る舞いをみていればわかる。じゃが油断すればどんな強者でもあっと言う間に命を落とす…死んでから嘆いても仕方がないのだぞ?」
「そんなもん、ここにいるやつら全員知ってるっつーの、爺さんに言われなくてもなぁ」
…知られてるってーの!?いや私が凄いって、なに!?その情報どこから出回ってるの!?
やめて、そっち方面で目立ちたくないのに…!!
(…そ、そんな情報…どこから…!情報元は…一体…!?)
誰だ、誰を殺せばいい!?リョカさん?リョカさんが言いふらしてるのっ!?リョカさん殺せば止まるのこの噂は!?(錯乱)
「こ、怖っ…なんで僕を睨むんだシロさん!?」
「殺さなきゃって」
「怖い怖い!なんで!?」
「変な噂立てられたから…」
「!?」
あっちで話そうと連れて行かれる私。あれもしかしてこれリョカさん殺すチャンス?(錯乱)
…とりあえず話を聞いてから判断するか…。
「…いや、違うだろ。僕が言いふらしてるんじゃなくて、もうすでに君は有名人なんだよ」
「…な、な、なんでぇ…(泣)」
「前にギルドマスターも言っていただろう。君の話はあちこちで流れている…それだけやってきた事が凄いんだよ」
「でも、でも…そんな話、イレドにいたとき、聞いたことなかったのに…」
そんな話がされていると知っていたら何かしら対応していたのに…くそっ、くそお…!
「…しかし、そう言われてもなぁ」
はあ、と深く息を吐くリョカさん。
「ではわかった、こうしよう」
「…う?」
「今ある情報はもう広まりきっているので仕方がないとして、これからの活躍は出来る限り広まらないよう僕の方で保護しよう」
「ほんとにですか!!」
「ああ、このミッションを何事もなく無事成功に導いてくれたら、それを約束しよう」
「わかりました!頑張りまーすっ!!」
「…半ば無理矢理来てもらったようなものだからな。これくらいはやらせて貰うよ。情報管理課にも親しい友人がいる。任せてくれ」
「ありがとうございます〜(泣)」
――ビーッ、ビーッ、ビーッ
「「!!」」
リョカさんの持つ連絡用魔石が鳴り響いた。
【重要】
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