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14話


「え、シロ…やるの?」

「うん!このままじゃクエストを受ける冒険者さんたちが心配だもんね!」

「いや、お前あきらかに今のアイドルの舞台に釣られたろ」

「ギルドマスター、私なにすればいいですか!」

「無視!?」

「あっはっは!」


私にスルーされ信じられないという顔をするユウゴさん。それをみて爆笑するディアゴさん。そして両手で口を塞いで体を震わせているミリィ。


「話が早くて助かる」

「お祭りでのアイドルライブの件、約束ですよ」

「ライブ…舞台の事だな?それは約束する」

「どこでやる予定ですか?」

「あの、あれ、浜辺の店の前あたりで」

「海をバックにですか」

「え、ああ…まあできる限り君の希望に沿うぞ」

「では照明魔石で舞台をライティングしてください!キラッキラのライブステージにしたいです!」

「キラッキラの…成る程。それは後々運営と話し合ってだな」

「わはぁ〜楽しみ!楽しみ過ぎるぅ!まさかこんなに早くライブまでできるだなんて!」

「あの、シロさん…まずは先にミッションの話をしたいのだけど」


リョカがギルドマスターと私の間に割って入った。話してる内にいつのまにかマスターににじり寄っていたみたい。


「はいはい!おーけーおーけー、ミッションのお話をしてくださいませ!どんなものでも私があっという間に片付けてみせますよ!!」

「あは、は…それは頼もしいな。…では、他のパーティメンバーの方々は退席してもらっていいかな」

「あ?聞かれちゃまずいのかよ」

「ああ、そうだ。これは国からのミッションだから外部に漏らせないんだ」


ユウゴさんとリョカさん…なんだか仲悪いな。数秒睨み合った後、ユウゴさんが扉をあけ出ていった。それに続いてディアゴさんが頭を下げ退出。ミリィがさいごに出ていく。


「シロ、また後でね」

「うん!あとで!」


私とギルドマスター、リョカさんが残された部屋。ミッションについての説明が始まった。内容は要約すると、こう。


また今回のように何も知らない冒険者を囮にして魔物を引き寄せる。

ただしできるだけ強い高ランク冒険者にしてできるだけ強い個体を呼び出す。

そこでその冒険者の元へ駆けつけ現れた魔物を調査する。


突然魔物が現れるのがもし自然現象ではなく人為的なものであれば、召喚された魔物には術者の魔力が残っているはず。それが強力な魔物であればあるほど大きな魔力を付与しなければいけないため、術者の特定にも大きくつながるので強い個体を出現させる。


(確かに、あのエビルプラントクイーンからはあの魔物以外の魔力を感じた…けど、なんだろう。なにか違和感がある)


「それですぐに現場に駆けつける為の先導役、ナビって事ですか。私は」

「あ、いや。実のところナビは必要ないんだ」

「え?あれ、じゃあ私は?なにを?」

「戦闘での援護をお願いしたい。どちらかというと僕たちはシロさんの戦闘時のフォローに期待していてね」

「うむ…的確な状況判断能力、これまでお前たちが行ったクエスト数は14896。ミッションや他を含めれば戦場へ出た数17128。普通はこれだけ高頻度で戦場へでていれば死人の1人2人いてもおかしくはない…むしろいないほうがおかしい。だが、お前のパーティは死亡者ゼロ。生還率100%だ」

「我々はこれまで行われた『イレド』のクエストやミッションのデータや報告書、記録映像を確認した。するとパーティの生存率を大きく引き上げている要があなただとわかった」

「…なるほど。ちなみに参加メンバーって」

「Aランク冒険者相当の実力者が4人だ。本来ならSランクを参加させたかったが、中々つかまらなくてね」


んー、まあそれはそうだよね。国内のSランク冒険者はたったの5人だし。国外から連れてくるっていうのも現実的じゃない。Sランク冒険者は国の兵器って面もあるし、ほいほい他国に行くことなんてできないよねー。


けど、Aランク相当が4人でしょ?普通に私いらなくない?生還率とかいってるけど、そのレベルが4人て国王護衛する時の戦力でしょ…。


「はい、わかりました!では私も全力でサポートしますね!」


でもライブしたいから参加しまーすっ!あはっ☆


「ところで…」

「はい?」

「あなたはなぜ冒険者ランクを上げていないんだ?」

「え?」

「シロさん程の先導者、サポーターの腕があればAランクにはなれる…そうすればソロでも多くの仕事が舞い込んでくる。どういった理由で『イレド』を抜けたのかはわからないし、詮索はしないが、ランクは上げておいても損はないはず」

「スキルがないからのう」

「…え」

「冒険者ランクを最低値のFから上、D以上にするには何かしらのスキルを持っていることが条件にはいる。安全性の面でな。…しかし、シロはそのスキルがない。故にFどまりなんじゃ」

「ほ、本当か?」

「はい、そーですよっ」

「…」


険しい顔をして手に持っていた書類を捲るリョカさん。


「…本当だ…」

「お主、事前にシロを調査していたんじゃないのか?」

「いえ、してはいたんですが…あれだけの力を持っているから、スキルは当然もっているものかと。ここの登録スキル欄も、スキル名が載っていないのはあえて登録していないのかと思っていて…しかし、よくみれば『無能力者スキルゼロ』と注書きされている…見落としていました」


あ、そっか。確かにスキルを持つ人はそのスキルを秘匿する権利があるもんね。ランクを上げるための検定の時はスキル見せる必要があるけど、それも秘密裏に外部へ情報が漏れないように配慮するし。


「…しかし…スキルゼロ…それなのに、あの力か…」

「魔力はたくさんありますけどね〜、えへへ」


よほど信じられないのか、リョカさんは渋い表情をしていた。


「ふむ。では、話はここで終わりだのう。解散するか」

「…はい」


話が終わり私とリョカさんが扉へ向かうと、「シロ、少し話がある…」と呼び止められた。どこか真剣な表情に、なにか重要な話をされる事がうかがえた…面倒事だったらヤダなぁ。


リョカさんが部屋から出たのを確認したマスターは、ひとつ頷いてこう言った。


「…さっきのアイドルの話、詳しく。わし結構興味あるわ、それ」


マスターの瞳の奥はキラキラと輝いていた。


「はい!喜んでっ☆」


私はマスターにアイドルを語った。私の知る限りの知識で。




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