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9話


大きな建物に掛かる『ホウエンギルド』の看板。

国に認可されダンジョンクエストを取り扱うことを許された数少ないギルド。

私とミリィはクエストを受けるためギルドの建物前でパーティを待っていた。


「よお、ミリィ。今朝は大変だったな」


手を挙げ現れた白髪の短い髪の少年。背には大きな剣を差し、肩掛けの鞄をぶら下げていた。


「うん。でも大丈夫だよ、頑張れるから」

「…ん、そっか。そっちの人は?」


私に目を向ける少年。


「あ、この人は昨日友達になった…」

「始めまして、シロです」

「お金を稼ぎにこの街にきたみたいで。冒険者経験もあるみたいだし、うちのパーティのサポーターとしてどうかなって」

「ふーん」


じろじろと顔をみてくる少年。おいおい、そんなにみないでよ〜私がいくら可愛いからってさぁ!


「いいんじゃないか?」


そう言って少年の肩に手を乗せた男。金髪でにこにこと笑っていて、ゆるい雰囲気をまとっている。

この人は少し年上っぽいね…20くらい?武器は弓か。


「サポーターは見つからないときは見つからない。いざ探すとなれば中々苦労するからな。お願いしよう。…始めまして、シロさん。俺、このパーティのリーダー、ディアゴです。よろしく。ほら、お前も」

「え、俺」

「シロさんが名乗ってくれたのにお前は名前言ってないだろ」

「…ユウゴだ。よろしく」

「はい!よろしくお願いします、ディアゴさんユウゴさん!」

「そんなわけで、うちのパーティのサポーターお願いしても?」

「いえ、お願いします!連れて行って貰えると助かります!」

「よし、なら決まりだ。昨日クエスト申請書を書いて出してある。おそらく通っているはずだから、確認してくるよ。…っと、そうそう。シロさん今日行くクエストは鉱石採取だが大丈夫かな?」

「はい、大丈夫です!事前にミリィから聞いてましたから」

「…鉱石採取、結構大変だぞ。力仕事だし、魔物も出るし…やめるなら今のうち」

「こら、ユウゴ!なんでそんなこというの?」

「いや、だって…そんなほっそい体で、サポーターとかできねえだろ」


まあ、確かに…言われてることはわかる。筋肉とか全然ついてないし。


「いや、見た目で判断しないほうがいいぞユウゴ」

「え?」

「彼女の瞳、紅いだろ」

「? …それが?」

「これは魔力量が多い者に現れる現象なんだ。彼女、おそらく見た目以上に力持ちだぞ。お前よりパワーあったりしてな?」

「な、なにぃ!?」

「あははは」「はっはっは!」


確かに眼が紅い人は魔力が多い。身体強化とまではいかないけれど、その魔力は多少膂力に影響を与える。

だから前の私はあのパーティで雑用をこなせてきたわけで。


ギルドでクエストを受注。街を出て東へ10数分歩いたところにゲートがある。


「冒険者ランク…Fランク!?まじかよ!!」


道中、歩きながら雑談をしていると私の冒険者ランクの話になった。


「はい!でも頑張ります!!」

「頑張りますって…いやいやいや!Fってありえなくないか!?簡単にEくらいあがれるだろ…それで冒険者歴5年?よく生き残ってこれたな」

「そんな言い方しないでよユウゴ!怒るよ?」

「いやミリィ、お前でさえDあるんだぞ?…もしかして、シロってかなり弱い?」

「おい、ユウゴ!失礼だろーが!」

「や、だけどさー、俺はシロが危ない目にあったら大変だからさ、これは親切心だよ」

「これから行くクエストはDランククエスト。冒険者ランクCの俺とお前がいればそこまで危なくはない」

「…まあ、そーだけどよ」


ミリィが私の隣にきて耳打ちする。


「ごめんね、シロ」

「?」

「ユウゴ、口は悪いけど…ほんとは良い子だから」

「うん、心配してくれてたもんね」


私は別に弱くみられるのは良い。むしろそう思われた方が色々と都合が良い。

だってアイドルになるんだし。冒険者はそれまでの繋だからね。変に評価されると国の大きなクエストに参加させられたりとか面倒事が増える。そしたら時間とられるからさー。


今の私にそんな暇はない。こうしてコツコツ稼いで、はやく衣装や音響とか揃えてライブをするんだ。頑張るぞ〜、おーっ!


「よし、ここだ」


森の中、巨大な樹木が削られ作られた洞穴。入り口がギルドの結界で護られている。

ディアゴさんが鞄からギルドに借りた魔石を取り出した。鍵の形をした魔石。この結界を解除するためのもの。

解除すると結界は消えて、約1分でまた結界が復活する。


「…」


ディアゴさんが鍵をみて固まっていた。どうしたんだろ。

ミリィも不思議に思ったのか、首を傾げ彼に声をかけた。


「…ディアゴ?どうしたの?」

「あ、いや。ちょっと…」

「?」

「今日、クエストを受注したとき…ギルドマスターに声をかけられたんだ」

「おおっ?珍しいな!?マスターがギルドにいることも珍しいけど!」

「ああ」

「…それが、どうかしたんですか?」

「いや、特になにか言われたとかではないんだ。ただ、調子はどうか…とか、メンバーは誰がいるのか、とか聞かれただけで」

「ふうん?」

「それが…気になるの?」

「…少しな」

「でもクエストランクはDってなってたんだろ?なら心配ねえよ。ディアゴは妙なとこで心配性だよなー、はは」


心配性…うん、良いリーダーだね。でも、なんでこのタイミングで不安になったんだろ。


「あ、もう結界が復活しちゃう!」

「おおあっ!復活しちゃったら次、解除できんの1時間後だぜ!?」

「まずい、入ってくれみんな!」


ゲートを潜る。するとそこは洞窟だった。岩肌がごつごつとした薄暗く伸びた坑道。側には鉱石を運ぶ用の荷車がある。


「さて、行こうか…」

「じゃあ私、先導するね」


ミリィがぴょこり手を挙げた。


「…あ」


私はそれに思わず声を漏らしてしまう。


「なんだよ、シロ」

「どうかした…?」

「いつもミリィが先導してるんですか?」

「ああ、そうだ。地図を記憶しているし、水魔法で探知もできる。ミリィが先導、俺とユウゴは戦闘、そう役割わけをしている」

「…なるほど」


ここ、そこそこ魔物がでる。ここからでも魔力の匂いがするし。

いつもなんとかなってはいるんだろうけど、おそらくミリィは…


「…?」


呼吸が僅かに荒い視線も落ちつきがない。怖いんだ。


「あの、もし良ければ…私に先導させてくれませんか?」


「え」「…へ」「シロさんが?」


驚く3人。あれ、そんな変なこと言ったかな。


「いやいや、ここ…かなり広いんだぞ」

「? はい」

「迷宮型のダンジョン、迷えば終わり!魔物だってそこそこいる!それを避けつつ目的地まで行かなきゃなんねーんだ!地図覚えてルート記憶してるミリィじゃねえと先導は無理だ!」

「地図みせて、ミリィ」

「…あ、うん」


5層あるダンジョンなので5枚の地図。手渡され、さっと目を通す。

ルートには赤線が引かれていてわかりやすい。でる魔物も空きスペースに書かれている。ミリィはすごい努力家だね。


「おっけーです!地図とルート覚えました。先導できます!」


「「「は!?」」」


ぽかんとする3人。あれ、そんな変なこと言ったかな。


「ま、まてまて…シロさん。10秒も経過してないが」

「はい、大丈夫です!私も前のパーティで先導してましたから、バッチリいけると思います!」


「…いや…無理だろ、マジで」


え、なにこの空気?すごい変な空気になってる!?

ど、どうしよう…はっ!!歌う!?アイドルとしてここ歌うとこかな!?よし、歌ってみんなのテンションあげる作戦で!!


「いや」


いや!?ダメ!?


「少し様子見をしよう。せっかくだ、ここはシロさんに先導してみてもらって、間違えていたりしたらミリィがルート修正する」

「おいおい、マジかよ!遊びじゃねーんだぞ!?」

「ものは試しだ。もしこれで本当に覚えていたら、すごいことだぞ。ミリィの負担も減るかもしれん」

「…それは、そうか」

「よし、では頼むよシロさん」

「りょーかいです!ではでは、れっつごー☆」

「いや元気だなおい」




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