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乳母は見届ける  作者: かも ねぎ
青年期
47/65

47 新しい潮の流れ

 エルドリッジ子爵家の嫡男クレメンスが第三王子派についたことは、静かに、だが確実に宮廷の水面下に広がっていった。

 彼は柔らかな物腰で新興貴族や商人たちに声をかけ、エドワードを直接持ち上げることはしない。

 ただ「新しい秩序」「王太后の後ろ盾」「正妃の変化」という言葉を繰り返すだけで、人々の興味を引いていった。


 特に商人たちは耳を傾けた。

 彼らは古いしきたりや家格に縛られず、利益を最優先する。ルクレツィア派の衰退を感じ取った商人たちは、次第に第三王子派へ資金と物資を流し始めた。


「……派手な戦いはいらない。人の心が動けば、権力は自然に傾くんだ」

 クレメンスの言葉は、遠慮がちなエドワードにとって新鮮だった。


 一方で、王太后の後ろ盾を得た正妃は目覚ましい活躍を見せていた。


 正妃は王太后の名のもとで各部署に命を下し、宮廷の秩序を次々と立て直していった。

 人事の見直し、物資の流通路の改革、王太子の執務のための人員補強――その采配は迅速で、しかも的確だった。


「王太后陛下のお言葉です」

 この一言があるだけで、誰も逆らえない。


 かつては殴られた王妃として同情の対象でしかなかった正妃が、いまや宮廷の実務を動かす中枢に立っている。

 その変貌ぶりに、人々は驚き、やがて敬意を抱くようになった。


◇◇◇


 クレメンスが引き込んだ新興貴族と商人たちの流れ。正妃と王太后が進める宮廷改革の流れ。


 この二つが同時に進むことで、第三王子派の勢力は目に見える形で膨らんでいった。


 エドワード自身はまだ前線に立つことはない。

 だが彼のもとに集まる者たちが増えるたびに、少年の胸には小さな責任と決意が芽生えていた。


 静かに、だが確実に、第三王子派の時代が動き出そうとしていた。

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