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乳母は見届ける  作者: かも ねぎ
少年期
21/65

21 盤上に立つ兄妹【少年期編】

白亜の離宮


「王太后陛下、私も十五になります。そろそろ宮殿に戻りたく思います」

 王太子は庭園にてお茶をしていた王太后に、改まって声をかけた。


 白い花々に囲まれたテラスで、王太后は静かに顔を上げる。

 結い上げられたダークブラウンの髪には白いものが混じり、チョコレートオパールの瞳は宮廷を生き抜いた深い鋭さをたたえていた。


「そう」

ただ一言、彼女はこぼす。


 王太子は、傲慢な国王と気力を失った正妃から生まれた。だが二人にはない覇者の風格を備え、生まれながらに「王」となるべくして育った存在だった。

 その妹、王女もまた絶世の美貌と才知を持ち合わせ、いずれ宮廷に波乱を呼び込む存在となるだろう。


「考えておくわ」

 王太后の返答に、王太子は深く一礼して音もなく去った。


◇◇◇


 ほどなくして、白亜の離宮のテラスルーム。

「お兄様、どうだった?」

 陽光が降り注ぎ、王女の髪を白金に輝かせる。その微笑は天使のようだが、言葉には棘が潜む。


「うまくいくだろう。おばあさまは広い視野をお持ちだ。我々を必ず後押ししてくださる」

「楽しみね」

 紅も引いていないのに真っ赤な唇が弧を描く。   王女の無邪気な笑みを見て、王太子もまた冷ややかに微笑んだ。


「どのあたりが?」

「全てよ、全て」


 二人のやり取りに、控えていた使用人たちは息を呑んだ。

 まだ少年少女であるはずなのに、その空気はすでに大人を凌駕していた。

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