21 盤上に立つ兄妹【少年期編】
白亜の離宮
「王太后陛下、私も十五になります。そろそろ宮殿に戻りたく思います」
王太子は庭園にてお茶をしていた王太后に、改まって声をかけた。
白い花々に囲まれたテラスで、王太后は静かに顔を上げる。
結い上げられたダークブラウンの髪には白いものが混じり、チョコレートオパールの瞳は宮廷を生き抜いた深い鋭さをたたえていた。
「そう」
ただ一言、彼女はこぼす。
王太子は、傲慢な国王と気力を失った正妃から生まれた。だが二人にはない覇者の風格を備え、生まれながらに「王」となるべくして育った存在だった。
その妹、王女もまた絶世の美貌と才知を持ち合わせ、いずれ宮廷に波乱を呼び込む存在となるだろう。
「考えておくわ」
王太后の返答に、王太子は深く一礼して音もなく去った。
◇◇◇
ほどなくして、白亜の離宮のテラスルーム。
「お兄様、どうだった?」
陽光が降り注ぎ、王女の髪を白金に輝かせる。その微笑は天使のようだが、言葉には棘が潜む。
「うまくいくだろう。おばあさまは広い視野をお持ちだ。我々を必ず後押ししてくださる」
「楽しみね」
紅も引いていないのに真っ赤な唇が弧を描く。 王女の無邪気な笑みを見て、王太子もまた冷ややかに微笑んだ。
「どのあたりが?」
「全てよ、全て」
二人のやり取りに、控えていた使用人たちは息を呑んだ。
まだ少年少女であるはずなのに、その空気はすでに大人を凌駕していた。




