13 影たちの誓い
城下の静かな館の一室。
夜の帳が下り、外の喧騒は届かない。
オズワルドは卓上の蝋燭の炎をじっと見つめ、ギルベルトとウルバヌスを慎重な目で見回す。
「事態が急に動き出しました」
オズワルドの声は低く、確実に伝わるよう慎重に選ばれていた。
オズワルドは二人の視線を交互に見ながら、地図に細い線を引いた。
「エドワードとアウレリウスは、この行幸を楽しみにしています。だが、表向きの平和の裏で、側妃ルクレツィアは動きます。我々は、彼女が何をするか、どこまで踏み込むかを予測しなければならない」
ギルベルトは拳を軽く握り、表情を引き締める。
「王家の中で動けぬ私にできることは限られる。しかし、”補欠組”を通じて、第三王子の安全を確実に守ります」
ウルバヌスはゆったりとした口調で、しかし芯の通った言葉を添えた。
「全ての布石は、事態が起こる前に。油断せず、しかし過剰な干渉も避ける。子どもたちの無垢を守ることを最優先に」
オズワルドは穏やかに微笑んだ。
「よし。今夜はここまで。明日の行幸で、全てが動き出す。我々は影に徹する」
蝋燭の炎が揺れ、三人の影もまた揺れる。
緑の離宮で無邪気に笑う子どもたちの背後で、大人たちの思惑が密かに回転する。




