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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
フォリウム学院

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第95話 毒鳥・ピーチ

「俺がピーチを弱らせて、ヒスイっちが火で攻撃して、シオン様が消火って感じ?」

「そうですね」

「へまするなよ」

「へーい」



 手順を確認し、合図に備える。

 他の皆も三人一列で前後に並び、黙って合図を待っているようだ。

 ドクン、と、心臓の脈打つ音が鮮明に聞こえる。

 ウロロスの時に実戦は経験しているけれど、あの時は自分しかいなかったし、スグサさんが助けてくれた。

 今回も大人たちがいたり、クラスメイトと協力するわけだが……一人で自由にやれるのと、人の目がある中で隠しながらやるのとだと、また違う緊張感がある。

 集中したいときに別のことを考えてしまって、気付けば正面の二人が生徒を見回して頷きあっている。

 背後に備えているヒイラギ先生から「よし」と声を発した。



「これより作戦を開始する! 全員構え!」



 駆けだすわけではないが、中腰になって森を見据える。

 魔法を発しやすいように、右手は森の上空を指さす。



「……初め!」

「魔法、発動を命ずる」

「やれ」



 先生の掛け声、それに団長と代表の開始の合図で、大地が揺れる。



 ―― 土属性の上級魔法、≪嘆きは鳴動となりて≫だな。複数人による乗算もされてるだろう。



 思わぬ解説が得られた。

 スグサさんによると、上級ではあるが、鳴動の大きさはそこまででもないらしい。

 だが複数人に行うことで広範囲に効果を広げているのだろう、と。

 森とその周囲を揺らすことで、動物・魔物が驚き活動し始める。

 木の上へ飛んでいる魔物で、一際大きいものがピーチと聞いている。

 オレンジと紫のまだら模様ということで、その毒々しさは遠目から見てもよくわかる。



「おーし。(アル)初級魔法(トゥワーン)



 センさんが間延びした言い方で、土を放つ。

 一匹のピーチにあたり、土がまとわりつく。

 魔法の操作は継続したまま、私が続く。



(アム)初級魔法(トゥワン)



 見るからに火の玉を放ち、ピーチに当てる。

 森の上での作業なので、下ろすことはできない。

 もし落ちてしまって森に延焼してしまった場合は、ギルドや魔術師団が対応してくれることにはなっている。

 が、そこは学生の訓練も兼ねているので、なるべく空中でやることになっている。

 十秒間は火を上げたまま、空中での状況を見守るよう言われている。

 そしてその秒数が空いたとされれば、仕上げとなる。



(イズ)中級魔法(フィフォ)!」



 張りきったシオンが魔法を放つ。

 形的には、以前使っていた≪隔絶された水槽≫。

 あの時は危険な使い方だと言われていたけど、今だったら良さそう。

 中級魔法だから魔力消費が続くかどうかというところだが、本人は一発程度なら余裕そう。

 魔法の指定もされていないし、いいのかな?

 ともあれ一匹は仕留めたので、後衛の第二陣と交代。

 他のグループも着々と、一匹ずつ仕留めて行っている様子。






 ―――――……






 確実に仕留めて行き、交代は何往復も繰り返された。

 初級魔法と言っても連発しているとしんどいもので、他の四人は疲労を隠せていない。

 隠すどころか疲れていないのは私。

 実は疲れているかもしれないのがシオン。

 シオンは中級魔法から初級魔法に切り替えてはいたので、もしかしたら疲れているかもしれない。

 だがその表情はまだまだ余裕が伺える。

 センさん、マリーさん、ナオさんは単純に魔法の連発だからだろうが、ライラさんは……たぶん、コントロールに集中しすぎて精神的に疲れたかな?

 一人ケロッとしている私だが、周りから浮いてしまうのは避けたいので、慌てて膝に両手を置いて中腰になる。

 生徒からの攻撃が途絶えてしまったのはすでに伝わっているだろう。

 森の周りにはピーチの残骸がいたるところに見える。

 もう残りのピーチもほとんど飛んでいないのも含め、作戦はもう終わりと思われた。

 しかし。

 先生も、アオイさんも、コモさんも。

 森を見据えて、硬い表情のまま。

 緊張感を途切れさせてはいない。

 まだ何かあるのか。

 そう思った時。


 また、大地が揺れた。



「まだやるのか……?」



 余裕そうに見えていたシオンの声には疲労の色が滲んでいて、やはり疲れてはいるのだと思う。

 もう動けなさそうな子もいる中で、この中でやるのは酷だが。



 ―― これは≪鳴動≫じゃねーな。


「え」



 思わず声が漏れてしまった。

 魔法かどうかの判別ができることにも驚きだが、魔法でないなら何なのだろうという疑問が湧く。

 その疑問に答えてくれたのは、スグサさんではなかった。



「生徒は俺の後ろに控えろ」



 何時にもなく頼りになる言葉を発した先生にも若干驚きながら、動けない生徒に肩を貸して移動する。

 状況を分かっているような先生や長二人に説明を求めたいが、三人とも森を見ているので聞くに聞けない。

 その心情を察してか、生徒が控えたのを確認した先生が、口を開く。



「大物だ。全員、目標にしてるやつも多いだろう。二人の姿をよく見とけよ」



 森、ではなく、自分たちの前に佇む代表と魔術師団長を見据えながらそう言った。



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