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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
フォリウム学院

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第81話 編入生同士

 先生がいるのは訓練場の中心。

 私とライラさんは捕まった人たちと反対側の壁側。

 見渡せば先生を挟んで対角線上にシオン殿下とナオさんがいる。



「いつ行く?」

「もう少し見てからですかね……」

「じゃあ私行ってこよー!」

「え」



 走って行ってしまった。

 走りを弱めずに先生にどんどん近づいて行く。

 あれ、魔法使わないの?



「火≪アム≫・身体強化≪サーズ≫!」

「おー来たかー」



 ライラさんは魔法を使いつつも物理で戦うタイプらしい。

 階級には分類されない身体強化魔法で、腕も足も使って殴る蹴る。

 先生は垂らした鎖を両腕に巻き付け、一つ一つ受け流す。

 顔に殴りかかり、横腹に蹴り。

 足を掴まれたら、反対の足で膝裏。

 習われた先生は足を前に出して避ける。



「おらっ」

「うわわっ」


 ガッ。と。

 ライラさんは掴まれた足でそのまま投げ飛ばされる。

 先生は投げた姿勢から続けて体を縮こませた。

 先生の上半身があったところ場所には、寸の差で何かが通り過ぎた。

 私の横に飛んできたものがぶつかったから、飛ばしたのは私の目線の先のシオン殿下とナオさん。

 二人とも構えてるからおそらく間違いない。



「ちっ」

「ライラ、大丈夫かな……」

「あいつなら大丈夫だろ」

「平気だよ!」



 飛ばされたライラさんも立てなおして向こうに合流してる。



 ―― お前はいかないのか?


「いやあ、ちょっと……」



 小声で、スグサさんに答えはするが。

 あの三人の連携がいったん止まったところで、他の生徒も思い思いに攻撃している。

 魔法が飛び交ってて、この中に入るのはちょっと怖いな。



「こんにちは」

「っ、こん、にちは?」

「ふふ、驚かせてごめんなさいね」



 私に話しかけて来るなんてライラさんぐらいだと思ってたのに。

 スグサさんに返したの、聞こえてないよね……?

 確かこの人は、さっき私と一緒に並んでた人だ。編入生のマリーさん。

 ハーフアップの、金髪というよりかは黄色い髪に、赤い目。

 神秘的で上品な雰囲気を放っている。



「編入生のヒスイさん、でしたわよね」

「あ、はい、そうです」

「マリーです。同じ編入生同士、仲良くしてくださいませ」



 手を差し出され、握手を交わす。

 横目に映るのは魔法大戦というだけに違和感がすごい。

 マリーさんは満足そうに微笑むと、私から大戦側に視線を移した。



「大体の人は慣れた様子でしたので、様子を見ていたんです」

「なんか、ヒイラギ先生はいつもこの手段をとるみたいです」

「まあ、そうなのですね」



 手を口に当てて、大きい目が丸く見開かれる。

 仕草も上品だ。



「ヒスイさんは行かれないのですか?」



 ……探られて、いるのだろうか。



「……今は、様子を見てます。みんな思い思いですし、巻き込まれたらいやだなあと」

「うふふ、慎重派ですのね」

「マリーさんは行かないんですか?」



 にこやかに笑顔を浮かべていて、上品さも相まって、あまり戦うイメージはないけれど。

 この学科にいるということは、戦う授業があるというのも承知の上なはずだ。

 綺麗な赤色の目が、私を映している。



「そうですね。では、挨拶代わりに一つ、やってみましょう」



 そういって、手を先生に向ける。

 呪文はなく、静かに魔力が練られる。



「≪大地は我らを食す≫」



 詠唱なし。

 しかし無駄な魔力はなく、丁寧な操作だ。

 突如として放たれた魔法は、先程の別の生徒が放った詠唱ありの魔法よりもはるかに規模が大きく、先生を中心に他の生徒も巻き込んだ地割れを引き起こす。



「くっ」



 苦し紛れに声を発しながら、先生は鎖をバネのようにして上空に逃げる。

 同時に巻き込まれた生徒たちを救うかの如く拘束して、枠内に移動させた。



「あら、呆気なくかわされてしまいましたわ」



 あらあらまあまあ、と。

 今度は頬に手を当てて、あっけらかんとしている。

 今の地割れで一時身動きが取れなくなった生徒は、先生という回収係に回収されていく。あ、ライラさんたちも捕まった。

 残ったのは私とマリーさん、遠巻きに見ていた数人となった。

 ある程度を回収し終えた先生は、残っている生徒を一人一人見ているようで。



「……お前か」

「まあ怖い」



 こちらを見ながら、低い声で呟いた。

 それを軽く受けるマリーさんは肝が据わっている。



「そこの編入生同士もそろそろ来い」



 ご指名……いた、これは目を付けられたというべきか。

 先生は他の生徒には目もくれず、私たちを見据えている。



「あらあら。ヒスイさん、一緒にどうですか?」

「え、あ、はい」

「ではどうしましょうか」



 こうなったらやるしかないか、と諦め。

 軽く打ち合わせる。



「……じゃあ、その手筈で」

「承知いたしました。頑張りますね」



 うふふ、と。

 背筋に冷たいものを感じなくもないが、ひとまずやるしかない。

 マリーさんよりも前に出て、先生と距離を詰める。

 先生と近づいて行き、マリーさんとは距離ができる。

 そのタイミングで、スグサさんの声が響く。



 ―― 黄色い髪、赤い目、ハーフアップまで編入試験と同じ。そして名前はマリー。


「……そうですね」



 アオイさんがリストに挙げていた、要注意人物だ。




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