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第49話 狙い

「さむっ」



 吹雪が吹き荒れるどこかの山。

 お城にいたはずなのに、一瞬でこんな所に移動しているだなんて。

 これが噂に聞く≪転移≫だろう。

 着こんだ格好ではあるが、お城の中での服装で吹雪の中にいるのは寒い。

 このままでは凍えて死んでしまう。


 ……死ぬ? 死ぬのかな?



 ―― あんの野郎……!!


「スグサさん?」



 独りぼっちだと思っていたが、切っても切れない位置にとても頼りになる人がいたことを思い出した。

 忘れてないですよ。

 なにやら憤慨しているようだ。



 ―― 気持ち悪い! おい! 変われ!


「えっあっ、はい?」



 姿は見えないはずなのに怒涛の剣幕が見えるようで、いつものことなのだが有無を言わさず体の主導権を譲ることとなった。





 ―――――……





 あぁ気持ち悪い気持ち悪い!

 他人の魔力を纏うほど気持ち悪いと思ったことはない!

 アイツがわかっててやったんなら本気で殺す。

 アイツのことはもう二度と名前で呼ばん。

 浄化の魔法でアイツの魔力の残り香を消した。

 まだ纏われていることには変わらないが、致し方ない。

 寒いのも嫌いなのでついでに防風・防寒・撥水・保温の魔法を自分の体に施す。



「ふう。よし」



 落ち着いた。

 が、いつまでもここにいるわけにもいかない。

 辺り一面真っ白。

 吹雪のせいでフードは着けていられず、髪の間に雪が混ざって湿っている。

 バッサバッサと髪が乱れるので、紐だけ作って髪を結った。

 あいつの思惑通りに動くのは癪なのでさっさと帰ってもいいのだが、なにがあったのかは気になるとところだ。



 弟子。一先ず私様が動く。状況を確認しに行くぞ。


 ―― 殿下たちを待たないんですか?


 待っている時間があればさっさと動いて終わらせる。


 ―― ……わかりました。



 了承まで時間が空いたが、不満というわけではなさそうだ。

 言ってしまえば「ふーん」みたいな感じ。

 あまり突っ込んでくる気配はないので自由にさせてもらおう。

 雪の中はとても歩きにくいことこの上ないので、風の魔法を使って雪の上を滑るように移動する。

 ≪透視≫の眼鏡をかけていたおかげで、雪を透かして山の様子を探ることができた。

 ウロロスと思われる影を見つけ、一直線に向かう。

 幸い、私様たちが風下にいたので、高さに気を付けながら進む。



 ……いた。

 ここからなら遠近法で手の上に乗る程度の大きさだが、近づいたら余裕で丸呑みされるぐらいの大きさはあるだろう。

 ウーとロロより大きそうだ。大人の個体だな。

 六匹、いや。七匹いるな。

 頭は十四だが。

 ウロロスの使う魔法は水。

 十四の頭が多方面に、それこそお互いのことも構わずに水の魔法を使いたい放題している。

 なぜこんなことになっているのかはわからないが、ギルドが関わっているのだとすれば、人的要因が考えられるところだが。

 人の気配は……ふむ。



「さーて。どうすっかね」



 ウロロスなら飼ってたし、生態についてもよく知っている。

 大人しくさせて凍らせてしまえばいい。

 だが。

 あいつの思惑通りに動くのは、やはり癪。

 研究員のことだから、まさか私様が負けるなんてことは考えていないだろう。

 それこそあいつらの自信作なのだから。

 だとしたら目的は処分ではなく達成だ。

 ウロロスを討伐するなり治めることをお望みなんだろうなあ。

 わりと本気で考えていると、ウロロスから離れるように移動する魔力を持った何か。あれは、人だ。


 よし。決めた。

 即行動。


 向かって右側、山の麓の方へ逃げる人間は一人。

 風上へ移動し、距離を開けたところから魔法で眠ってもらうことにした。



  闇属性魔法 ≪回想の香≫



 弟子にはお馴染みの魔法。

 よく寝ていてくれるし、香りだから距離を開けてても風上からなら効果は届くから今は都合がいい。

 体勢を崩して雪の上に倒れこんだ。

 近づいてみると、雪山に適した格好をしている。

 ここに来ることを目的にしていた奴だろう。

 元凶か巻き込まれたかは知らんが。

 さすがにこのままでは死んでしまうので、闇属性魔法の≪実況中継部屋≫で外界と遮断。

 黒い靄がこいつの周りに漂う。

 精神状態もわかるから、もし目を覚ましたり行動を起こしたらすぐわかる。

 ポケットの紙は抜いておいた。

 ちなみに弟子が女魔術師にかけられたのも、ウーとロロが保管庫でかけられたのもこれだ。


 下準備はこれでいいか。


 より風上にいるウロロスたちは変わらず暴れ続けている。

 このままでは本当に雪崩でも起きそうな勢いだ。

 だが、私様がやるのはここまで。



 弟子。


 ―― はい?


 あとはお前がやれ。


 ―― ……はい?



 聞こえないことはないはずなんだが、聞き返された。

 知らないふりをするつもりだが、焦っているようだ。



 私様が動くのはここまでだ。

 あとはお前がやれ。


 ―― …………いやいやいや。私に何ができるっていうんですか。


 何かやるんだよ。

 魔法は練習してんだろ。


 ―― やってますけど、え、どうしろと?


 どうするかは教えてやるよ。

 とりあえず交代だ。



 ウロロスの対処の方法を知らないやつに全部任せるほど、私様も鬼じゃない。

 魔法を使うちょうどいい実戦だ。

 嫌だとしてもやらせる。決定。





 ―――――……

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