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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
リ・ハビリテーション

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第35話 ≒ 不老

 朗らかな春の陽気を思い出させる雰囲気のクザ先生は、去り際はそよ風のように穏やかに去っていった。

 私が学校に通うことになればまた会えるだろう。その時はまたご挨拶したい。



「意外だったろ」



 壁際にいた殿下が、空いた席に座る。

 そういえば今日は制服を着ている。

 紺地に白のラインが入った、シンプルなブレザーの制服だ。

 お城では白ベースに金の装飾のスーツとマントを羽織っていたから、こちらの方が年齢相応に見える。



「そうですね」

「出会いの話も聞けば教えてくれるぞ。カミルの印象が変わるんじゃないか」

「そんなに衝撃的なんですか」

「それは当人たちに聞いてからな」



 カミルさんに聞いても教えてくれるだろうか。

 どんな表情で教えてくれるのか、そっちの方も気になるな。

 それから少しの間、殿下は学校での様子を教えてくれた。

 どんな授業をしていて、どんな生徒がいて、どんな先生がいるのか。

 ちなみに生徒の数は一クラス二十人ほど、四クラスあるらしい。

 学歴順というわけではなく、皆バラバラ。

 学年ごとにクラス替えも行うと。

 私が入学するとすれば四年生からとなり、そうすれば殿下の弟さんと同学年なんだとか。



「四年生ですか? 一年生ではなく?」

「一年生から三年生は基本的な内容を、四年生からは発展的な内容を学ぶんだ。一年生からだとさすがに体格的にも難しいだろうと思う。基本的な内容は今まさにやっているしな」



 なるほど。

 じゃあ一年生は十三歳からだ。

 今の外見は十代後半だから確かに浮いてしまいそう。

 編入するならばもう少し学年が上がった方が混ざりこみやすい。



「殿下って何人兄弟なんですか?」

「三人だ。もう公務を務めてる兄が一人、弟一人」



 そういえば以前、「第二王子」って名乗ってた気がする。



「兄はともかく、弟にはいずれ会う時間を作ろう。正直どこまで話すか迷っていてな。決めるまではまだ待っていてくれ」

「はい。楽しみにしてます」



 区切りのいいところで、殿下が講師の講義を行う。

 私のいた場所での国語や数学などは、この国では基礎学に当たる。

 そして私の記憶の中ではそれらは『基本的なこと』に分類されるようで、そこまでの苦労はしなかった。

 数学には特にのめりこんだ。計算楽しい。

 あとは、やはりというか、生物分野は比較的わかった。

 社会はこの国では国学に当たるので、記憶として新しい。



「字も問題なく書けているようだな」

「スグサさんの体だからでしょうか。聞くのも困ったことはありませんし、違和感ないです」



 そう。

 体はこの世界に生きていたスグサさんの体なんだ。

 もともとこの世界にいた人の体なのだから、できることも多いのだと思う。

 ただ内臓がどうなっているのかまでは……考えたくはない。

 ここで、密かに疑問に思っていたことを提示する。



「スグサさんって、若くして亡くなったんですか?」

「そこは謎なんだ。本人が聞いているだろう状況で言うのはどうなのかと思うが、伝記では数十年は若い姿だったのだそうだ」



 つまりは何十年もこの姿で生きていたっていうこと……?



「この世界では『不老』というのは……」

「俺は聞いたことがない。むしろ俺もスグサ殿に聞きたいぐらいなんだが」

「……スグサさん」



 聞かれてましたか?


 ―― 聞いてた。


 回答っていただけるでしょうか?


 ―― ……まあいいか。もう死んでるし。



 スグサさんは必要な時に必要な分だけ教えてくれる。

 やや考える時間があったのは、それが必要なことかどうか、検討したからだろう。

 そして検討した結果、



 ―― 不老に近い状態ではあったが、不老ではない。



 こんな謎かけみたいな回答になったのは、意味があるのだろうと思う。



「うーん……?」

「スグサ殿はなんて?」

「「不老に近い状態であったが、不老ではない」、と」

「うーーーん?」



 そういう反応になりますよね。



 ―― ま、私様は最高位の魔術師だったんだぞ。できてしまうことの方が多い。『不老』に興味はなかったが、必要があったんで若い状態でいただけだ。



 まあ、確かに。

 逆に何ができなかったかを聞いたほうが、できたことを聞くよりも早そうだ。

 「必要があった」というのは、やはり研究についてだろうか。

 聞いてみたが、研究については詳しくは教えてくれなかった。

 というところで、スグサさんの話題は終わり、謎かけだけが残った。

 殿下とあれやこれやと言い合ったが、結局しっくりする答えは出ず、スグサさんも口を出してこなかったことで、自然と話題は変わっていった。



「じゃあそろそろ移動するか」



 と言い出した殿下は座っていた椅子からのっそりと立ち上がる。

 ちなみにどこに行くかは聞いていない。

 けど一人で座っているままなのもよくないかと思い、立ち上がって椅子を片付ける。

 荷物は学校のものが大半なのでそのままでいいようだ。

 手荷物は首から下げた許可証のみ。



「どこに行くんですか?」

「学校の中をふらふらと。今日は学校は休みだから生徒もほとんどいないが、一応フードは被ってくれ」



 自習室に鍵をかけて、職員室でクザ先生に声をかけて、さあ出発。

 行先は殿下にお任せで、学校散策が始まった。


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