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【3/27 電子版1巻発売!】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
長期休暇

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第129話 転換期を迎える『ヒスイ』

 二人とともに戻って、険しい顔で話し合っている大人たちと合流する。



「どーも。戻りました」



 表情を戻し、話を中断した。

 私様たちには聞かれたくない話かな。

 まあ、城にいる人間だからな。

 一般人には話せないこともあるだろう。



「この後はどうするか決めてんです?」

「水の中の確認をしたら、周囲を見回って終える予定だ」



 ということで、水辺に溜まった水をまとめて持ち上げて、底に溜まったルルの死骸やついでのゴミ類を目視で確認。

 底の部分だけを切り離し、綺麗な水だけを元に戻した。

 切り取った方は陸に上げ、ルルの死骸のみ持ち帰る。

 調査に使うために。

 虚空に死骸、あと水の中のゴミをまとめて入れて、閉じる。



「じゃあ、私様は変わりますよ」

「そうか。わかった。ありがとう」

「どーも」






 ―――――……






 灰色の以下略。


 あのあと、弟子に交代して、三人で森の中を見回りしていた。

 残党は見当たらず、まあもしかしたらどこかにいたのかもしれないが、ひとまずは被害は抑えられるだろう。

 木々へのダメージも少なかったと。

 そういうことで、弟子が≪玩具箱≫が解除し、送迎車と送迎者と合流。

 午前中に始めた作業も夕方で、それ以上長引いていたらどうしようかと悩んでいたらしい。

 まさか一日で終わるとも思っていなかったと驚いていた。

 キョルのことについて話したら、さらに驚いていた。

 しかしこのことはギルドの一部のもののみに伝達するように、王子サマから指令が出た。

 箝口令、とはまた違うが、上層部にしか知られないだろう。

 森の中の村もそうだったが、大量発生からの異常繁殖、異常進化が起こりうる可能性は大いにあるからな。

 いやあ、そうなったらまたお会いしたい。

 研究は尽きないなあ。



「……スグサさん……?」

「おっと、すまんすまん」



 今は同じ顔の奴と膝を突き合わせている時だった。

 つい頬が緩んでしまったな。



「なんだっけ?」

「魔法の総評のことです」

「ああ、そっか」



 つっても、今回は私様は口出ししてないからなあ。

 意識が出たが。

 氷の足場を作り、水を湧きだたせて送り出す。

 風を吹かせて弾き落とす。

 どちらも気にダメージを与えないよう、力加減は必要な内容だった。

 結果、木にダメージはほとんどなく、水も溜まりすぎることはなく、良好。

 大いに結構だったと思う。



「うん。よかったんじゃないか?」

「そうですか。よかったです」

「本当なら、キョルのこともやらせてもよかったんだがな」

「あれは……スグサさんが出るって言ったんじゃないですか」

「そうなんだよな」



 あっはっは。

 そうしても知らない魔物を見ると調べたくなる。

 そういう性質(タチ)は死んでも変わらないな。



「お前、魔法上手くなったな」

「成長は自分でも感じてます」

「いいことだ。正確な自己評価は成長に必要なことだ。過信せず、謙遜せず。あるがままの自分を見つめ続けろ」

「はい」



 堅苦しいな。

 もういいや。



「今後なんだがな」

「はい?」

「白い虫。バラファイ、覚えてるか?」

「はい。光を放ってた、死者を喰らうっていう」



 そう。

 度々弟子の前に現れていたアイツ。

 最近見かけないんだよな。



「あいつ見かけたらすぐ変わってくれ」

「? 何かあるんですか?」

「あいつが私様の家の鍵を持ってる」

「鍵……え、お知合いなんですか?」

「まあな」



 確証はない。

 だが、弟子の……私様の外見をした者の近くに現れるなら、つまりはそういうことだと思う。

 アイツ、私様のことが大好きだからなあ。

 ……うーむ。



「どういう……」

「んーそうだな。性格は変態。知り合った経緯は、まあ、本人に聞いてからだな」

「へんたい」



 変態だな。ありゃ。

 私様の物をなんでもストックするし。

 私様が持ってる私物より、アイツが持ってる私様の私物の方が多いって言ってた気がする。

 何を持ってるんだか。

 見つけたら全て燃やす。



「そんなことで、よろしくな」

「わかりました……」

「じゃあそろそろ寝ろ。明日もあるんだろ」

「そうします。おやすみなさい」

「おやすみ」






 ―――――……






 次の日。

 扉を叩く音で目が覚めた。

 今泊っている部屋は皆個室なので、部屋には私一人。

 ロタエさんとカエ様は別の部屋にいるはず。

 時刻は……まだ明け方。

 行動にはまだ早いが、何分、切羽詰まった叩き方をしている。



「ヒスイ、朝からすまん、起きてないか?」

「起きてます」



 声はカエ様のものだった。

 そっと扉を開けて、声の持ち主の顔を見る。

 表情は……白い。

 良くないことが起こったような顔をしている。



「早朝から本当に申し訳ない。俺とロタエは城に戻ることになったんだ」

「急ですね、何かあったんですか? 顔色もよくない……」

「いや、これは……すまん、俺もなぜそうなったのかまだ理解できていなくて……」



 顔で手を覆い、動揺を必死に鎮めようとしている。

 本当に良くないことが起こったようだ。

 私には話せない、国のことだろうか。

 部屋の出入り口で立ち話もなんだとは思うが、きっと、時間はあまりない。



「じゃあ、私も戻ります」

「……悪いな」

「いえ。大丈夫です。やらなければならないことはやったのですし。すぐ準備しますね」

「……あ、ちょっと待て」



 ぱたん。

 扉が閉じて、私の部屋に、カエ様が入ってきた。

 掴まれた腕に触れる皮膚はひんやりしていて、血が通っていないみたい。

 目の前に移る焦った瞳と顔も、血の気がない。

 今にも倒れてしまいそうだ。



「え……と」

「あ、いや、すまん。話しておかないとと思って」



 カエ様……殿下は、小さく両手をあげて、『何も怪しいことはございません』のポーズ。

 そんな警戒はしてないけれど。

 ……掴まれていた部分が、冷たい。



「本当にすまん」

「謝ってばっかり。大丈夫ですよ。どうぞ。無理なさらず」

「……俺も、大丈夫だ。今回、早く帰ることになった理由なんだが」



 ぽつりと独り言のように呟かれた言葉。

 ああ、確かに。

 それは顔色も悪くなるし、焦るし、二人は先に帰ることになるだろう。

 というか、これは本当に一大事だ。

 え、この国どうなるの、みたいな。






 国王陛下が、死んだようだ。






 ―――――……

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