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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
長期休暇

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第123話 ≪漂う結氷≫

 治った。

 砂の上をもそもそと歩き、オアシスに足を踏み入れる。

 一応身を守るために全身を合羽で身を包んでいる。

 日陰に入った瞬間涼しさを感じ、日差しの強さを物語る。



「この暑さで合羽はさすがに辛いな」

「目の前まで送ってくれてよかったですね」

「全くだ」



 とは言うものの、合羽はもちろんフードも脱ぐことはできない。

 ルルの針は人肌は通しても合羽を通すほどではないからだ。

 オアシスには中央に水辺があり、そこで休んでいた人が多く狙われたという報告が上がっている。

 なので第一に目指すのはそこ。

 一列になり、なるべく物音を立てずに歩く。

 水辺までの道は人が通れるようになっていて歩きやすい。

 合羽さえなければ観光気分になれていたかもしれない。

 ラースの時に使った扇風機代わりの魔石も、合羽が飛んでしまうため使えない。

 持っている水分を取りながら熱中症にならないように対策する。

 できれば水辺に着いた瞬間に一度休みたいところだが……。



「……ついた」

「いますね」

「ああ。ヒスイ、見えるか」

「はい。結構小さいですね」



 遠目だが、微かに動くそれが見える。

 実際はものすごく見えにくい。

 動いているからこそ見える。

 草の上の迷彩って強いな。

 大きさは大体……掌大かな。

 今まであった魔物の中で一番小さい。


 んー、どうしようか。

 今回の討伐、皆でやって早く終わらせた方が良さそう。

 被害者も多いし、あれだけ標的が小さいと見つけるのも苦労する。

 夜には活動できない。

 夜こそ向こうの活動が活発になるから。

 危険は冒せない。



「カエ様、ロタエさん」

「どうした」

「はい」

「協力してもらいたいです。みんなで」



 一も二もなく頷いてくれた。

 この二人が手伝ってくれるなら、大丈夫。

 油断かもしれない。

 けど、そうお思わずにはいられない。

 私が油断しても、きっとこの二人が気付いて、叱ってくれるだろう。



「それで、どうするつもりだ?」

「考えてきた作戦は、まずは逃げられないようにオアシス全体を結界で閉じます。水辺の中央を安全地帯として、私の水魔法で全域にいるルルを水辺まで押し流します。集まったところで攻撃してください」

「周囲のダメージを減らすために、水魔法は弱めにすべきですね」

「はい。もし良い魔法があったら教えてください。ぶつけ本番になってしまうかもしれませんが……」



 オアシスはこの地では重要な場所なので、ダメージを与えることはなるべく避けたい。

 けれどこの作戦で行くならば、どうしても多少は避けられない。



「押し流してからも少し懸念はあるな。相当な数がいるだろうということと、水に入ってしまったものは死ぬだろうが、量次第ではそのままにするわけにもいかない」

「それは、この二人にも手伝ってもらいます」



 首元のネックレスに触れる。

 赤い石に眠っているであろう、この子たちに。



「ほう。いいな」

「では安全地帯についてから押し流す用の魔法をお伝えしましょう」

「お願いします」



 その安全地帯には風魔法で移動する予定。

 だが今は足場がない。

 なので私が跳んで、氷の足場を作ることに。

 木にはルルがいる可能性があるので登れない。

 そのため、二人が見守る中、その場で飛び上った。

 そして空中で魔法を素早く使う。



「≪漂う結氷(けっぴょう)≫」



 ちょっと不思議な名前だが、水面を凍らせるだけ。

 三人……いや、五人が余裕を持って立てて、かつ岸まで届かない程度の大きさの氷。ざっと四畳半ぐらい。

 岸までの距離もテニスコート二面分は離れているので、滅多なことがない限り大丈夫だろう。

 滑らないように土をひいて、二人に合図を出す。

 すぐに跳んで来た。



「うまくいったな」

「はい。よかったです」



 では、ここでウーとロロを呼び出す。

 首元から石を取り出し、地に置いて表面を三回叩く。

 仄かに光りだし、光は石を持ち上げて形を成していく。

 左右対称な双子、ウーとロロ。



「……?」

「……すー?」

「こんにちは、二人とも。少し久しぶりだね」



 量にいるときは定期的に部屋で一緒に過ごしていたけど、任務期間中は今が初めてだ。

 五日以上も会っていないのも初めて。

 寝ぼけ眼の二人はじーっと私を見つめてくる。

 半開きの目のまま、ゆっくり近づいてきて、ぎゅーっと。



「すーうー」

「ねむーい」

「おぉう」

「はは、好かれてるなあ」



 抱き着かれるのは悪い気はしないけれど……。

 眠気のある二人は体が温かく、合羽の中がまだ蒸れている私には少しきつい。

 だが幼児の二人を引きはがすことは……できない……っ。



「ふ、二人にお願いしたいことがあって」

「おねがいー?」

「ねむーい」

「これが終わったら欲しいもの買ってあげるから……」



 ゆっくりと顔を上げ、さっきより少し大きく開いた眼で見上げてくる。

 疑っている、というか、もう一度、という感じかな。



「ほ、ほんとだよ? 何でもは難しいけど、買えるものなら……」

「じゃあ」

「やる」



 ぎゅっと抱き着いてきた。

 え、やってくれるんだよね?

 寝ようとしてない?

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