表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
長期休暇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/122

第120話 友情と愛情と

 試験の時とは違い、魔法ではなく玉を投げて的に当てるだけのもの。

 弓道の的のように大小の円があって、中央程得点は高い。

 球は全部で十個。

 二人が同時にできるため、隣同士でやることに。



「嬢ちゃん頑張んな」

「はい」

「待て。俺には声援はないのか」

「おっちゃんはフェミニストさ!」



 玉を渡しながらガハハと笑う、ガタイの良いひげを生やした店主に背中を押され、俄然やる気が出てきた。

 少し拗ねてるカエ様が少し可愛らしくも思う。

 店主から声援を受けたところで、勝負は勝負。

 真剣に取り組む。

 決して媚びを売ろうとは考えていない。うん。

 受け取ったら自由に始めていいスタイルなので、カエ様と目線を合わせ、スタート。


 ……。


 負けた。

 外枠にしか当たらなかった。



「残念だったなー嬢ちゃん」

「残念です。悲しいです。泣きそうです」

「ほら、参加賞だ」

「ありがとうございます」



 このお祭り、というか町のマスコットだというキャラクターのストラップを貰った。

 中央に一回ぐらいは当たると思っていたのだけど、考えが甘かった。

 本当に端っこにしか当たらなくて、玉があちこちに飛び散って拾うのが大変そうだった。投げるたびに謝ったけど。

 逆に、カエ様はほぼほぼ中央が多く、点数は聞かずとも高得点なのはよくわかった。



「おめでとうございます……」

「ありがとう。結構負けず嫌いなんだな」

「そうですね。今めちゃくちゃ悔しくて、再戦を申し込みたいぐらいです」

「受けて立つが、せっかくだから別のにしよう」



 辺りを見回し、他のゲームを探す。

 安全のためか、魔法を使うものはほとんどないようだ。

 ボウリングみたいなもの。

 輪投げみたいなもの。

 金魚すくいみたいなもの。

 時間はまだ余裕があるし、人が増える前に色々遊んでおきたい。



「近場から攻めるか」

「はい。次こそ勝ちます」

「俺も負けず嫌いなんでな。悪いが油断も容赦もないぞ」

「もちろんです。コウ」



 ぱち。と、瞬き。

 そういう勝負だったから、と呼んでみたが、呼べと言った本人が驚いている。

 確かに前触れもなくだったが、硬直してしまうほどだっただろうか。



「コウ?」

「あ、ああ。悪い、驚いた」

「そんなにですか」

「悪かったって」



 やや頬を赤らめるコウは初めて見たかもしれない。

 驚いたことがそんなに恥ずかしいのか。

 隙を見せた、とか、そんなところだろうか。

 気を取り直すように咳払いをして、さあと足を進める。



「はぐれるなよ」

「コウも、気を付けてくださいね」

「もう勝負始まってるのか?」






 ―――――……





 一通り遊びつくし、一直線の端から端までを歩き切った。

 端は飲食スペースが広くとられていて、一時休戦とした。

 コウは飲み物を取りに行ってくれて、私は席をとって待機している。



 ―― よう。



 スグサさんの声が響く。

 人がたくさんいるから、声には出さないようにしないと。

 会話中の視線のやり場に困るので、両手を組んで顔を伏せる。



 ―― 楽しそうだな。


 楽しいです。負けっぱなしで悔しさもありますけど。


 ―― 勝率二割ってところか。運動系はしょうがない。なんせ私様の体だからな。


 運動は苦手だったんですか?


 ―― 研究と魔法に生涯を捧げたんだ。無理もない。



 気持ちいいほど開き直ってる。

 でもそうか。

 もともとの自分の身体ではないからどうにもイメージがずれていたのか。

 今までの動きは魔法で補助していたのもあって動けていたのかな。

 そういえば体力はないほうだったし。



 ―― 私様とも一つやろう。


 え、何を? どうやって?


 ―― 王子サマが何を持ってくるか予想。勝った方が相手の願いを一つ叶える。


 ……じゃあお茶。


 ―― 私様はジュース。


 ちなみになぜ突然?


 ―― 気分。



 気分。

 なるほど。気分というか気まぐれか。

 スグサさんもこの場に体があれば、一緒に楽しんだのだろうな。

 体があればってなんだか不思議な表現だけど。

 ……いや、スグサさんの体は、ここにあるじゃないか。



 ―― ……弟子。


 はい?


 ―― お前、王子サマのことはどう思ってる?


 どう、とは。


 ―― 好き?


 好きですね。


 ―― ……それは恋愛として?



 れんあい。

 ああ、恋愛。

 恋と愛。



 ―― それとも友情?


 友情、というのもどうとは思いますが。慕ってはいますよ。私を自由にさせてくれてますし。


 ―― あくまでそういう立場か。主従というか、上下関係。


 そうですね。


 ―― ふーーーん。



 嘘偽りはない、と思う。

 そもそも一国の王子様にそんな感情を抱くのは、行ってしまえば無駄だと思う。

 貴族でもない、出自もしっかりしていない、研究によって生み出された死体のようなもの。

 コウのことだ。

 第二王子だとしても世継ぎが必要だろうし、そうなると私には難しい可能性が高い。

 理由は言わずもがな。

 こうして一緒に遊べているだけでも、私は一般の人よりも恵まれている。



 ―― ま、いいか。


 なんで突然そんなこと聞くんですか。


 ―― 楽しそうだったから。


 楽しいは楽しいですけど、他意はありません。


 ―― わかったって。そろそろ来るんじゃないのか?



 言われて、伏せていた顔を上げる。

 目の前の少し離れたところにその人の姿が見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ