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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
長期休暇

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第119話 お祭り

 ロタエさんはお城に戻って仕事をするらしい。

 突然ロタエさんが帰ってきて、アオイさんは驚くだろうな。

 カエ様はいわゆるお忍び状態。

 町の中に限るし、学生としては休暇中なので黒よりのグレーゾーンだが許された。

 本人曰く、「たまには息抜きしないとな」と。

 ロタエさんはため息をついていた。



「お土産買ってきますね」

「楽しみにしてます」



 時は昼前。

 ギルドから転移をするというので、ロタエさんのお見送りに来た。

 夜には帰ってくるそうなので、夕飯も用意しておこうと思う。

 お祭りの本番は夜なのだが、それではさすがに人が多い。

 カエ様は王子様だし。私は外見は死んだ人だし。

 明るいが、昼にお祭りを回って、夜はゆっくり過ごそうということになった。

 ロタエさんの転移を見送り、ギルドを出る。



「さて、じゃあ行こうか」

「はい」



 お互いマフラーをして、腰までと膝までのマントを羽織りフードを被る。

 無地だから見た目はお揃いで色は黒と白。


 ギルドからスタートし、浜辺を一直線に歩く。

 道の左右に出店が展開され、行く人と来る人が行き交っている。

 人々は食べ歩いていたり、ゲームをやったりしている。

 大人はお酒を飲んでいるようで陽気に歌ったり踊ったりしている。

 本当にそのまま夏祭りだ。



「何か気になるものがあれば寄ろう。気軽に言ってくれ」

「あ、じゃあ、あれに」

「お、行こう」



 美味しい匂いがしていて気になっていた。

 見たところ、串焼き肉のよう。

 肉を焼く匂いってなんでこんなにいい匂いなんだろう。

 たれが焦げて香ばしく、艶々に輝いている。



「旦那。二本ほしい」

「あいよ」

「カエ様、お金……」

「あ、それは大丈夫だ」



 店主さんから串焼きを貰い、お金を渡す。

 いたるところに備え付けられているベンチの空きを見つけ、さっそくいただきます。



「あー……美味しい」

「うん。タレが濃いめでいいな」

「お肉も柔らかい。何の肉だろう」



 前歯で嚙み切れるほどの柔らかさ。

 噛んだら中から肉汁が溢れてきて口の端から垂れそうになる。

 タレはニンニクや玉ねぎのようなものを使っているのか、シャキシャキな歯ごたえも感じる。

 甘みもある。果物も使ってるのかな。

 お昼前からガッツリ食べてる。

 私も元気になったな。



「さっきの話だが、金は任務の報酬から払ってる。俺たちで稼いだんだから気にせず使おう」



 ああ、なるほど。ラースとヤビクニの分。

 上級任務だからそれなりの額になっていることだろう。

 手続きはお願いしていたし、金額は最後に山分けにするという話だったから、すっかり忘れていた。



「たくさん遊べますね」

「そうだな。あれ行かないか?」



 食べながら指さすのは的あて。

 合計点で景品の豪華さが変わるよう。

 腹ごしらえもしたし、今度は遊ぶ番ということか。



「いいですね。カエ様はああいうのは得意なんですか?」

「結構得意だ。……それと、今はその名はやめよう」

「……では何と?」

「コウでいいだろう」



 本名じゃないですか。



「いいんですか? 身分、バレますよ?」

「コウなんて珍しくないしな」

「じゃあコウ様で」

「様を付けたらそれなりの身分だってバレるだろ」

「でも付けないわけには」

「シオンには付けてないんだろ?」

「シオンはまあ、同級生ですし、成り行きで……」

「成り行きなら今もそう言える」



 さて。自分で言うのもあれだが、どちらも引かないぞ。

 呼び捨て……呼び捨てかあ。

 王子様をー、なんて言い訳は通用しないこともわかっている。

 ただ呼ぶ場所は学校ではないのだから、なんだったら「不敬」って言わる。

 でもこの人、引きそうにないものなあ。

 変なところで頑固だ。

 うんうん唸って、唸って唸って唸っても、目の前にいる強気な顔をした人は一切引く気はなさそうだ。



「……んーーー、わかりました」

「よし、なら今か」

「あれで勝負しましょう」

「ん?」



 こういう時はゲームに限る。

 勝敗を付けて、勝った方の言うことを聞く。

 至極シンプルで分かりやすい。

 今はお祭りで、こういうゲームはいろいろある。

 口の端を上げて、楽しそうにニヤリと笑う。

 こういう勝負事は好きだと思った。



「ヒスイからそんな提案をされるとは思わなかった」

「一本取ったということで私の勝ちですか?」

「それは認められないな。なぜなら開始の合図をしていないから」



 食べ終わった串を簡易ごみ箱に捨て、意気揚々と的あての出店に足を進める。

 病み上がりのわりに体が軽く、結構楽しんでいることを自覚する。

 カエ様も楽しんでくれているのは言動ですぐにわかる。

 私より歩くの早いし。



「得点が多いほうの勝ちな」

「わかりました」

「ちなみにヒスイは得意なのか?」

「どうでしょう。試験では的あてはなかなかいい成績でしたけど」

「そうだったな。心して挑もう」



 玉を構える。

 店主の開始の合図まで、あと何秒。

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