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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
フォリウム学院

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第109話 異常事態

 ―――――……






 前日。

 氷を河川敷に転送して、氷を溶かしながら焼却処理をしていた時。



「これが最後の一つですね」

「ようやくか」



 思わず息を吐き出してしまうほど量が多かった。

 見上げるほどに大きい氷から、ラースを一体ずつ小分けにし、火にくべるという作業を繰り返した。

 氷の大きさに対し拳大のラースというのは対比が大きく、風の魔法で削っていく作業が思ったよりも大変だった。

 個体としては千匹はいたかもしれない。

 途中から数えるのをやめたから具体的な数字はわからないけど。

 それもこの氷で最後となり、終わりが見えて安心する。

 最後ともなればやる気は作業開始の時のように活気を取り戻し、さっさとやり遂げてしまおうと腕まくりをする。



「殿下」

「お、おかえり」



 廃村の調査のために焼却処理からは離脱していたロタエさんが、転移魔法で帰ってきた。

 袖をまくった腕のやり場に一瞬迷ったが、二人は二人の仕事もあるし、私は作業をしていよう。



「どうだった?」

「村はヒスイさんのおかげでほぼ更地になり、開拓はしやすそうです。ただ周辺の森に問題が」

「何かあったのか?」

「ラースがまだいるようです」

「え」



 聞き耳立ててましたすみません。

 ロタエさんの話によると、廃村のあった場所は凸凹しているものの問題はなし、村の周辺も見て回った際、ラースの糞や錆などの痕跡があったという。

 軽く森の中に入ってみれば、木の根元にいたり、登っていたりと自由に過ごしていたらしい。



「じゃあ明日は森を見回るか」

「それがよろしいかと」






 ―――――……






 ということで、今は残党狩りをしている。

 焼却処理をしなかった一体と、焼却処理をしたラースの骨を使用し、魔法で残りの探している。

 探す役はロタエさん。

 指示を貰ってラースの居場所を見つけ、氷漬けにするのがカエ様と私。

 どうしても動きたいと言う水属性を持っていない殿下のため、≪水面(みなも)の華は末枯(うらが)れず≫を入れた魔石を渡している。

 かつ風属性で機動力を上げ、木を渡って移動している。



「殿下、二時の方向、集団がいます」

「よし、まとめてやってくる」

「私も行きますか?」

「ヒスイさんは正面に進んだところに別の巣があるようです」

「わかりました」



 森の中では比較的群れが小分けになっている。

 しかし固まっているため、まとめて氷漬けにしやすい。

 丸めた紙の上を歩く練習が活きたのか、移動はスムーズに行ける。

 枝から枝へ渡り、見つけては氷漬けにして、を繰り返す。

 そんな作業を廃村周り五時間。

 念のため広範囲で探索し、三周したぐらい。

 朝一から始めたのに昼を過ぎてしまった。



「お疲れ様でした」

「さすがに、疲れたな」

「そうですね……」



 魔力としてはそこまででもないというのは言わないでおこう。

 今更かもしれないが。

 ただ、枝から枝へ飛び越えながら、草木に潜む小さい生き物を探すのは身体的に疲れた。

 体力面が問題かなあ。

 スグサさんもカミルさんとやってたときに息切れしてたし、体力はもともと少ないほうなのかも。

 私が仕留めたのは三百程。

 殿下も同数程らしい。



「やはり多いですね」

「そうだな。繁殖力はそれなりにある方だとしても、異常繁殖に値するだろう」



 表情は深刻だ。

 二人が今から話そうとしていることは私は詳しくは知らないが、私が目の前にいるのに話し出すということは、私にも関係があるのかな。



「ヒスイたちが学外で任務をこなした時があっただろ」

「遠足の時のですか?」

「そうだ。あの時の薬草採取も、ピーチも、イレギュラーだったスパデューダも、国中で異常繁殖と過成長に関係している」



 カエ様が言うには、ピーチの討伐は普段はあまり挙げられないらしい。

 異常繁殖。確かに危険な魔物ではあるが、人間を襲うことはほぼないとのこと。

 しかし今回は寮が多く、目撃情報が多かったため、間引きという意味合いで行われたのだという。


 スパデューダは過成長。

 巣があったことは想定していなかったが、大きすぎる個体は周辺生物のバランスを崩す。

 過剰繁殖にもつながる可能性があるということで、討伐が行われた。

 スパデューダに関しては人的被害も出ていたようだ。



「この情報、私に言っちゃってよかったんですか?」

「信用している、というのと、おそらくだが最後に行う予定の最上級-の任務、これも過剰繁殖によるものの可能性があるからな。注意が必要だ」

「……そうなんですね」



 信じていないわけではない。

 それは私も同じこと。

 カエ様……殿下の言葉も人柄も信用している方だ。

 だから、今言った言葉に偽りはないと思う。

 偽り(・・)は。

 じっ、と、殿下の表情を窺う。

 疑っているのではない。

 時として、目は口程に物を言う。

 伝わってほしいんだ。



「……殿下」

「……今は「殿下」じゃなくカエなんだが?」

「聞いているのは殿下です」



 じっ、と、見つめる。

 見つめ返してくるので、さらに見つめ返す。

 睨み合いとも取れそうな状況だが、私は引く気はありませんという意味合いも込めて、ブレずに見つめ続ける。

 次第に殿下に眉間の皺が出来始め、口が曲がっていく。

 ふいっと顔を逸らし、ため込んでいたような息を吐き出した。



「はあぁぁ……。わかった。降参だ」

「だから言ったじゃないですか」

「うるさいぞ」



 ロタエさんは話すべきと考えてくれていたよう。

 殿下の重い口が開く。



「……今回の二つの任務。依頼主は市民やギルドからではなく、城からだ」

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