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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
長期休暇

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第105話 森の村

「じゃあ行くか」



 外行きの動きやすそうな服装の殿下とロタエさんと共に、学校に背を向ける。

 私もパンツスタイル兼ポニーテールで動きやすく、だけどローブとマフラーを身につけて、必要最低限の荷物を持って。

 そんな私たちを、羨ましそうと声に出しながら目で訴える、赤い髪の犬のような人。



「いいなあ。僕も行きたい」

「お前は兄上からの仕事が割り振られているだろう」



 今日は長期休暇の一週目。

 二日前に終業式を終えたばかりだ。

 兄殿下が早めに帰城し、かつ予定を変えると言ったものだから、殿下の『身内ごと』という予定がずれた。

 結果、二週目に予定していたギルド任務という名の実戦もずれ込んだ。

 私としてはどちらでも構わなかったけれど。

 警護の予定や前後した仕事の関係上、犬のようなアオイさんは城を離れられない。

 同伴者が副団長のロタエさんという時点で難しいのだけれど。

 第一王子がいるならばより、団長も城から離れるわけにはいかない。

 今まさに離れていることは置いておいて。



「お土産買ってきますね」

「私もご用意いたしましょうか」

「ヒスイちゃんのだけありがたく受け取ろうかな」



 地方から仕事を送られるのは勘弁、と、ロタエさんからの申し出は丁重にお断りをし、大手を振ってお見送りしてくれた。

 こんなにフレンドリーなのに、すごい魔法を使う魔術師師団長なんだよね。

 真新しい鐘の音が鳴り響く。



「まずはどこに行くんですか?」



 前を進む二人の背を目の端に入れながら問う。

 街へ行く道を歩くのは実は初めて。

 この二人と一緒だから平静を保ててはいるが、こういう機会がないといつ行くだろうかというぐらいだった。

 今まで必要なものは、学校の購買部や、殿下やクザ先生が揃えてくれていたから。

 レンガの道に露天が立ち並び、衣類や雑貨、食料品など、様々なものが売られている。

 出店は手が出しやすい値段。店舗は少し高級そうな佇まい。

 聞いといてという自覚はありつつも、ついつい目移りしてしまう。



「まずは腹拵えをしながら、流れを話そうか」



 振り向き様の、爽やかな流し目笑顔でお腹一杯です。

 と言いかけて口を噤む。

 いやあ、晴天に映える笑顔だなあ。

 案内されたのは露天。

 チョイスは殿下……と思いきやアオイさんと言う。



「「せっかくの旅路なんだから、堅苦しいにはなしでいきましょう!」って、ここを勧めてきた」

「団長が行くわけではないのですけれどね」


 まるで自分のことのように語るアオイさんは、ここにいる誰よりも楽しそうだったと、真顔の二人が言っていて面白かった。

 アオイさんのお勧めの食べ物は、ケバブのような、サンドイッチのような、パン的なものでサラダ的なものを挟んだもの。

 片手で食べられて、お腹に溜まって、晴れた日に外で食べるのはとても良い。

 食事スペースでテーブルを見つけ、早速一口。



「あ、美味いな」

「美味しいです」

「よく仕事中に食べているやつですね、これ」



 片手に食事、片手に書類を持っている状況が目に浮かぶ。

 仕事に追われているあの人は想像に容易い。

 そう言う状況が多い人なら、片手で食べれてお腹に溜まるものを知っているのも納得だ。

 工程を聞くのを忘れそうになる程に美味しい。



「ロタエさんがもう受注してくれているんですか?」

「はい。すでに受注は完了しています。ですが、転移の魔石を貰うためにこの後向かいます」



 いずれ学校の行事でギルドに行くことがあるそうだが、予習として教えてくれた。

 まずギルドでは、身分証兼会員証であるギルドカードを作る。

 ランクが決まっていて、魔法と同じように五段階ある。

 表記はこの国の単語で、例えるなら初心者からα、β、γ、δ、εとなっている。任務を受けるには、任務の難易度と同等以上のランクが必要。

 殿下はランクがδ、つまり下から四番目なので、任務も初級、中級、上級、最上級まで受注できる。

 だが、ランクと同等の任務を受ける場合は、任務のランクが(+)であっても(-)であっても、複数人での受注が推奨されている。

 もちろん、もしもの時を避けるため。

 学生のうちにランクがγまで上がれば優秀らしい。

 殿下は国外に出ることも多く、戦う機会もあるとされているため、政務の一環としてギルドの任務も行っていて、δまで上がったようだ。



「一応、規定されているランクはεが最高だが、それより上のランクがあってな」

「へえ」

「ただ一人に与えられたランクなんだ。なんだと思う?」



 悪戯っ子の顔をして、聞いてくる。

 当てられないから聞いている……ということもあり得るけど、それはあまり聞く意味がない。

 優越感に浸りたいタイプでもないだろうし。

 となると、思い当たるランク……みたいなものは一つ思い当たった。



「『最高位』ですか?」

「お、正解」



 ぱっと花が咲いたように笑ってくれた。

 やっぱり優越感に浸りたいわけではなかったらしい。

 そして、『最高位』が一番上のランクということは、それはスグサさんということだ。



「スグサ殿は群には所属していなくてな、本人は時折ギルドの依頼で稼いで、自身の研究に精を出していたそうだ」

「その依頼消化スピードや、一人でやりのけてしまう魔法の威力や精度。それらを評価して、『最高位』という称号が与えられたそうです」

「εの枠の中でもスグサ殿は飛び抜けていたから、εでくくった場合の力量差が凄まじかったらしい。つまりは他のεの名誉のためというのもある」



 ランクを記号で表現しなかったのは、今後もスグサさんと並んだり超える人はなかなか現れないだろう、ということらしい。

 スグサさんが活動していた七十年以上も前にそんな評価をされるだなんて、本当に別格だったんだなあ。

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