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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
フォリウム学院

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第104話 人嫌い

「レルギオねえ。よくは知りませんけど、第一王子が行く程にイイ所なんです?」

「宗教国家ということもあって、国外にはあまり情報を出さないんですよ。だからこそ、ですね」



 良く知らない国だからこそ、第一王子に行かせて内情を確認しようということか。

 第一王子ならば向こうでも恭しく対応するだろうと考えたのは、果たして誰なのか。

 まあそんなこと私様にとってはどうでもよくて、気になるところは別にある。



「随分とイイ性格をしているようで」



 あの実験を知っておいて、かつ生きた人型である弟子を見て、ああも即座に『死体』『人形』扱いできるのは、正直たまげたものだ。

 適応能力、状況理解能力、なんて言っていいモノか。

 第一王子が冷静で人当たり良くて聡明で、というのに喜ぶ奴は多いだろうが、先程の対応力は一部の人間が特に喜びそうだ。

 王子サマは苦虫の汁でも飲んだような顔をして、紅茶で喉に流し込む。



「……あの人は、人が嫌いなんだ。だから逆に、ヒスイには好感を持ったようだ」

「アレで?」

「「アレ」って……。護衛として身近に置きたいと考えるのは、そういうことだと思う」



 第二王子の言葉だ。信憑性は高い。

 だが……アレで気に入っているという判断材料になるのかあ……。

 第一王子は随分曲者のようだ。

 人嫌い。

 だがら『死体』で『人形』である弟子のことを気に入って、護衛ということで身近に置きたいと。

 つまりは『生きた』『人間』を置きたくない、体のいい人払い。嬉しくねえ誉れだな。



「人嫌いだが……いや、人が嫌いだから、人を見極めるのは得意なんだ。優れているところも劣っているところも。だからどの仕事を誰に割り振るか、人の動きも含めて、指導者としてはとても優秀な人だ」



 紅茶の水面を見つめながら、語ってくれているようだが、まあ半分は独り言に聞き耳を立てている感じ。

 弟としては複雑なところでもあるのだろうか。知らんが。



「じゃああの人が「弟子(ヒスイ)をこちらに」なんて言えば、信者たちは「右に倣え」と言ってきますかね」

「臣下と言ってください。まあ、そうでしょうね」



 信者だろ。

 まあでもめんどくさそうなことはわかった。

 決定権を主張した王子サマの心境も。

 精々守ってもらおう。



「なら、さっさと外出でもしましょうかね」



 テーブルに広げられたままの、任務の書類を見る。

 『上級(-)』『上級(+)』『最上級(-)』。

 任務受注が初めてにしては高ランクだが、高レベルの魔法を周囲に気にせず使うなら、高レベルの任務出ないと人の目がありすぎる。

 内容はさておき、場所は人気はなさそうなものばかり。



「いいんじゃないですか? 場所も多様性があって」



 砂、海、廃村は……どこだこれ。

 まあ国の端っこかな。

 ギルドならば受注したときに目的地付近までの転移の魔法石を買えたりもするから、移動には問題ない。

 同時に受注者がいなければより良い。



「じゃあ私が受注してきます」



 女魔術師が三枚の紙をまとめ、書類の束の一番上に置き直す。

 そのまま立ち上がり、「仕事に戻ります」と言って部屋を出て行った。

 もう一杯紅茶が飲みたい私は、置きっぱなしになっているティーセットに手を伸ばし、自分のカップに注ぐ。



「王子サマもいります?」

「あ、じゃあ」



 どうぞどうぞ。

 私様が入れるなんてこと、ほとんどないから貴重ですよ。

 まあそんなこと言わないけど。

 …………。



「なんでレルギオに行ってたんですか」



 無言の空間が重い!

 問われるとは思わなかったのか、動きを止めた王子サマは思い出すように天井を見上げる。



「ああ、えー。確か。学校を卒業して、公務付けになるのが嫌だから、勉強としてレルギオに行きたい、と兄上が言い出したのが初めだったか」

「なんだ。我儘ですか」

「いえ……そう、かもしれないですけど、一応公務の一環で言っていたんです」



 レルギオという、詳細不明な国で滞在し、魔法について学ぶこと。

 それが公務だという。

 ここからは王子サマの予想になるが、主に動いていたのは臣下たちだろうと。

 人を使う力を持つ(カト)が、仕事を臣下に割り振り、自分は楽な仕事だけしていたのではないかという。

 要約して真っ直ぐな言葉で言ったら(たしな)められた。

 いいじゃん別に。誰も聞いてないし。

 上に立つ者としては、適材適所で仕事を割り振るのは良いことだと思うがな。

 その真意が、『人が嫌い』と知ってしまえば複雑な気持ちだろう。


 王子サマはまた微妙な顔をして、紅茶を啜る。

 …………。



「じゃあなんで帰っていたんですか。帰ってきたら仕事尽くしでしょ」

「これは通達されていない内容なんで内密にしてもらいたいんですが、陛下が戻るように言ったようです」



 陛下、王様、つまり父親か。

 王様が第一王子を呼ぶなんて、ついに王位でも譲るつもりか……?

 あの怠惰な王様ならさっさと譲っても可笑しくはなさそうだが。

 まあ本当にそうならこれは大事か。

 これはさすがに他言できないな。

 …………。



「よし、帰ります!」



 話がない!

 そんなこんなで退室。

 次に会う時には学校は修了し、ギルドへ向かうために学校の門で待ち合わせとなっていた。






 ―――――……


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