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【コミカライズ12/26から】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
フォリウム学院

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第99話 慣れてきた『ヒスイ』

 ―――――……





 弟子は遠足後、グループ課題を終え、学校生活を謳歌しているようだ。

 「しているようだ」というのは私様の推測に過ぎない。

 なぜなら弟子は相も変わらず、表情は変えないため、何を思っているのかとってもとても分かりにくい。

 ただわかるのは、無表情は素知らぬ顔。

 こいつはやはり、どこか他人事としてすべてを見ているということ。

 他の生徒は自分のこととして考えていたから、その点で言えば弟子は落第点だ。

 危機感を感じているんだか感じていないんだかわからんが、他人事として見ている間はギルドの任務なんて言ったら速攻死ぬだろう。

 怪我の一つや二つ、して来ればよかったのに。



 ―― ……あー、怪我、か。


「んえ? 怪我?」


 ―― や、なんでもない。



 例の如く、弟子の部屋で魔法の練習をしている。

 学校では風・火・闇と無属性の魔法を使うことは届を出しているので可能だが、水・土・光は使えない。

 なので、今は室内を暗くして、光の魔法を一定に長時間使う練習。

 今更なようだが、足元には以前やっていた丸めた紙屑の綱渡りだ。

 こいつさらっと多属性魔法の同時使用をやってのけやがる。

 なんか悔しい。



 ―― もうちょっと暗くしてみろ。


「え、今でも結構難しいんですけど」


 ―― さっさとしろ。


「ええぇ……」



 大きいものを一撃出すより、意図的に弱い力を継続して出す方が実は難しかったりする。

 意地の悪いことをしている自覚はあるが、結局は弟子のスキルアップにもなるんだから、結果オーライ。

 ……文句言いながらなくせにさらっとやってのけやがって……。

 舌打ちしたくなるわ。



 ―― チッ。


「え」


 ―― あ?


「ナンデモナイデス」



 さすがに大人げないな。

 気を取り直して。



 ―― さっき思ったんだがな。


「はい」


 ―― 今度長期休み入るだろ?


「そうですね。まあ一月(ひとつき)先ですけど」



 入学して早二月(ふたつき)経とうとしている。

 三月(みつき)百五十日通い続けたら、一月(ひとつき)は休みに入るという。

 生徒によっては寮で過ごすもよし、自宅に帰るもよしな期間。

 弟子はどうするのか知らんが、私様の妙案を早めに伝えておいた方が計画も立てやすいだろう。



 ―― ギルドの依頼を受けてみたらどうだ。


「え、ギルド、ですか」


 ―― ああ。魔法の練習にもなるぞ。


「身分とか……」


 ―― あー……王子サマに聞いてみろ。



 生徒の身分でやっていいもんなのかね、そこは。

 遠足の時を考えると、例えギルドに登録できたとしても受けれる任務は雑用ばかりな気もする。

 リスク管理がまだだっつって。

 魔法を使うことが目的なのに、街のお手伝いじゃ意味がない。



「長期休みかあ……一つ用はあるんですよね」


 ―― ああ、医術師の婆さんか。


「そんなおばあさんでもないですよ、たぶん」



 光量に若干の歪みを生じさせながら窘める。

 懐いてるな。



 ―― 十日ぐらいだろ。


「はい。なので、それに被らなければ、やってみたいです」


 ―― お、乗り気だな。じゃあ王子サマに聞いてみよう。変われ。


「え」



 体の主導権を無理やり奪う。

 ……ちょっと奪いにくくなってきた気もするな。

 弟子の魂が体になじんできたかな。



「よっしゃ、行くぞ」


 ―― え、どこに……?


「王子サマんとこ。寮にいんだろ」



 窓から風の魔法を使い、宙に浮く。

 夜の散歩だ。

 昔はよくこうやって飛び回ったなあ。

 夜は人がいないから好きだ。

 ええっと、王子サマの魔力はっと。

 ああ、あっちだ。

 男子寮。上の方。角部屋。

 いい部屋じゃねえか。

 窓の明かりがあることを確認し、三回ノック。

 城でやっていたリズムなら伝わるだろう。

 もちろん明かりがついていなくてもやっていた。

 大きな物音がしてから、間隔を開けて、カーテンがそっと開かれる。

 ただし、手ではなく剣先だが。



「よっ。コンバンハ」

「っ! スグサ殿……、さすがに自由すぎますよ」



 はああああ、と大きなため息を貰い、ごちそうさまと言っておく。

 窓を開けてもらったが、さすがに中には入らず窓枠に腰掛ける。

 中は……特に変わりないような……いや、部屋は広いな。

 心なしかいい匂いもする。



「突然どうされたんですか?」



 シャツとスラックスという完全にラフな状態だが、帯剣している辺りはやはり王族だからか。

 変な期待をさせてしまって申し訳ないので、早々に聞いて立ち去ろう。



「ギルドの任務がてら、弟子に魔法を使わせたい。登録は可能ですか?」

「ヒスイにですか?」

「ああ。届け出以外の魔法とかをな」



 「ああ、なるほど」と。顎に手を当てて、しばらく考えている。

 即答しない分、問題があるのか。

 その場合は任務外でこっそり町から離れたところにでも行くかなあ。



「フォリウム学院の学生はみんな一斉に登録するので、先に登録することは難しいです」

「へえ、そうなんだ」



 学校には通ってない私様じゃ知り得ない情報だ。

 聞いといてよかった。しかしそうなるとやっぱ、こっそり行くかなあ。

 正規ルートではない方法を考えながら、じゃあ行くかと王子サマに背を向けてまた飛ぼうとした時、「なので」と続きがあったことに気が付く。



「俺が任務を受けるので、それに同行する形なら大丈夫だと思いますよ」



 勢いよく振り向いて、王子サマの悪餓鬼風な笑顔を見つめる。

 同行と言っているが要は「連れてけ」と言うことだろう。

 なんでもいい。

 楽な方法があるなら願ったりかなったりだ。



「それはいい。だが王子サマはどれくらいまで受けられるんです?」

「最上級任務までは。ただし誰か兵も同行させることにはなりますが」



 王子サマの年齢で最上級まで受けられるなら相当優秀だろう。

 それも王族ゆえか。

 お付きがつくのも立場上はしょうがない。

 言ってしまえばパーティーを組むということだろう。



「どうせ見知ったやつでしょ。私様は構いませんよ」

「そこはもちろん。いつごろの予定を?」

「長期休み」

「なら話は付けておきます。長期休みの前夜にまた来てください」



 今度は紅茶でも入れてくれるのかね。

 ともあれ、これで実践の場は確保できた。

 どこからか重い吐息が聞こえるが、なぜやら理由がわからないなあ。






 ―――――……

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