表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/60

連合軍旗と赤十字の旗

 マダンの陣地の中庭に、オーストラリア(連合軍)の軍用車輌が並んでいました。


陣地の旗柱ハタバシラには赤十字の旗の上に『自由の女神の旗』が靡いています。


 終戦の知らせを聞いた敗残兵達が徐々にマダンの町に集まって来ます。

部隊長室には『オーストラリア軍の将校』、金田さん、徳丸さん、緒方医院長、私達ラエの医療班が集まり、これからの事を話し合いました。


オーストラリア軍の将校は、蛇に噛まれた兵隊の治療のお礼にと、マダンの教会に来た方でした。


 玄関には連合軍旗と赤十字の旗が交差して立ててあります。

中庭では元兵隊さん達が兵舎から長机を持ち出し、並べています。


 伊藤(元衛生兵)さん達伝達班が陣地に戻って来ました。

朝、伝達班として出発した時と今の現実とのあまりの「さま変わり」に驚いていました。

伊藤さん達は躊躇しながら玄関を入り、会議室(元部隊長室)のドアーをノックしました。

私は急いでドアーを開けました。

伊藤さん達三人は挙手の敬礼をしたまま、開いたドアーの前に立っていました。

それを見て奥の椅子に座る、オーストラリア軍の背の高い将校が起立して挙手の敬礼をしました。


オーストラリア軍の将校は非常に謙虚で紳士的な方でした。

そしてその将校は三人に対し流暢な日本語で、


 「ゴクロウサマデジタ。ハイッテ、オチャデモノンデクダサイ」


と言いました。

伊藤さんは少し驚いて、緊張しながら、


 「失礼します。入りますッ!」


と言って部屋に入って来ました。

土民のメードが机の上に『お茶とチョコレート』を並べます。

伊藤さん達は、それを見て目を丸くして見ています。

そして伊藤さんは、お茶を啜りながら洞窟に残る『アイタペ守備隊植村部隊の敗残兵達』の話を緒方医院長にしました。

それを聞いていたオーストラリア軍の将校はチラリと緒方医院長を見ます。

そして私達医療班を見ました。

私と嶋田婦長は、直ぐに医務室に戻り、医療用具を揃えて外に出ました。


 将校は隣りに立つ、あの『蛇に噛まれた兵士』に軍用トラックの運転手を呼ぶように指示しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ