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雨のち晴れの事件簿 ~ 性格も好みも真逆の男女バディですが、異能犯罪者は沈めます ~  作者: 凪野 晴
第5章

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第90話 二枚のメダル

 流灯凛花は、自動運転タクシーに乗っていた。そのタクシーは、由記子たちがいる現場、つまりタイラントと死闘を繰り広げている場へと向かっている。


 突然、衝撃音が届き、タクシーの窓ガラスを震わせる。凛花が窓の外へ目をやると、目的地の方角で巨大な灰色の煙が爆発したように広がってきていた。再び、衝撃音が車体を突き抜けていく。


──しらゆきたちがいる現場のあたりからだ。


 凛花のかけているメガネ型端末に、法条からのメッセージが表示された。


「法条くん、由記子さんが心配。ちょっとスピード上げてくれないかな」


 途端に、自動運転タクシーの挙動が変わった。法条がその異能で自動運転プログラムをハッキングして、速度制限を緩和させたのだ。


 凛花を乗せた自動運転タクシーは、由記子たちがいる現場へ向かって、スピードを上げた。


 *


 タイラントを確保したシャインの元に、レイン、ジョーカー、白峰由記子が集まった。


 レインは水を操り、タイラントの衣服を濡らす。異能で拘束した。スキャングラスで、タイラントを調べる。レベル4のレッドから、レベル3のオレンジに下がっている。まだ、暴れる可能性がある。レインはタイラントを注視し続けることにした。油断はしない。


 シャインも念の為、身体強化を使用し、気を失っているタイラントを抑え込んでいる。


 由記子が、殺し屋を倒した雨男と晴れ女に向けて、驚きを伝えた。


「ジョーカーさんと援護をするつもりだったのに…………二人で巨人のタイラントを倒してしまうなんて、思いもしなかった」


 それを聞き、晴れ女は満面の笑みを浮かべる。


「じきに、タイラントは異能が使えなくなる。シャインがオートインジェクターを打ち込んだから」


 レインはそう言いつつ、タイラントをスキャンしていた。レベル1、グリーンになったことを確認する。


「オートインジェクターとは?」


 由記子は尋ねる。シャインが返す。


「えっと、異能が使えなくなる注射です」


 その言葉を聞き、由記子は驚く。メダルで異能の記憶を奪う以外に、封じる方法があるのかと。


「由記子、目的のメダルを」


 ジョーカーが思い出させるように声をかけた。ハッとして、由記子はうなずき、タイラントのそばに寄って、しゃがみ込む。メダルの場所ははっきりとわかる。チノパンのポケットをまさぐり、メダルを取り出した。


 由記子は、メダルを見つめた。そして、そっと握り、藤平紫乃が遺した情報を確認する。由記子はメダルの生成者だ。ノートPCのような情報端末がなくても、メダルの内容を確認できるのだった。


 メダルに格納された情報を確認した由記子は、再び驚きの顔を見せる。その後、すこし浮かない表情になった。



 レインは、遠目に一台の車が向かってくることに気づく。タイラントを含めた五人のところへ、タクシーがやってこようとしていたのだ。


 少し離れたところで、自動運転タクシーが止まり、流灯凛花が中から出てきた。メガネ端末をかけた制服姿の少女だ。駆け寄ってくる。


「由記子さん、大丈夫でした? すごい爆発を見かけて、急いで来ました」


 凜花が尋ねる。そして、レインとシャインには軽くお辞儀をした。


「おかげさまで、大丈夫だ。このとおり、タイラントも拘束することができたよ。メダルも回収できた。いろいろと助かったよ、ありがとう」


 タイラントを指し示しながら、由記子は答えた。少しだけ凜花のボスとなのだという口ぶりになっていた。


「……さてと」


 由記子は、右手のひらにメダルを生成する。りんごの柄が描かれた銀色のメダルだった。再び、タイラントに近寄り、彼の頭にメダルを当てる。メダルは徐々に金色になっていく。


「ジョーカーさん、タイラントが『灰の財団』を知っているか、メダルを使って記憶をコピーしておいたわ」


 ジョーカーは、由記子に同意するように、うなずいた。


 レインは、携帯端末を取り出し、刑事である正岡へ電話をかける。何回かのコール音の後、繋がった。


 簡潔に要件を述べる。白峰由記子は犯人ではなく、タイラントという殺し屋が犯人であったこと。その彼をすでに捕らえて拘束してあることなどだ。


「……はい。では、お願いします」


 レインは通話を切った。そして、周りに告げる。


「これから警察がここに来て、タイラントを逮捕、連行してくれる手筈になった。後日、取り調べに協力することも約束した。白峰さんも、その際はお願いします」


 雨男は、由記子の顔を見て告げた。彼女は首を縦にふる。


「由記子さん、回収したメダルの内容を確認したいって。法条くんが……」


 凛花はかけているメガネ端末のレンズを示しながら言った。彼の魂がメガネ端末に取り憑いているのだ。


「そうだね……。紫乃さんが遺したメダル、そしてタイラントからコピーした記憶。それらの内容は、皆に共有したい」


「……だったら、うちの事務所に来ませんか? パソコンがあった方がいいですよね?」


 シャインがにっこりして言った。


 *


 しばらくして、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。どうやらパトカーがこちらに向かってきているようだ。だんだんと音が大きくなり、近づいているのがわかる。


「……先に事務所の場所を教えてくれないか。私は警察が嫌いなんだ」


 ジョーカーが告げた。それを聞いた凛花はうなずきながら、相棒を頼る。


「法条くん、よろしくね。ジョーカーさんの端末に地図で案内を」


 ジョーカーは携帯端末で行き先を確認した後、バチバチと電気の身体になって外灯から電線に入っていった。シャインは静かにそれを見送った後、あの時に握った左手を見た。



 パトカーが三台到着した。刑事コンビの正岡と城守彩、警察官数名が現場に来たのだ。シャインは、拘束したタイラントをパトカーへと運び入れる。


「レインさん、シャインさん、お疲れ様です。真犯人の逮捕、ありがとうございました」


 城守彩が告げた。そして、野暮ったい中年男の正岡が言葉を続ける。


「このタイラントとかいう男の取り調べと勾留は、慎重にしないといけないな」


 レインと由記子は、理解を示すように、うなづいた。だが、シャインだけは首を傾げる。


「それって、どういうことですか?」

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