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雨のち晴れの事件簿 ~ 性格も好みも真逆の男女バディですが、異能犯罪者は沈めます ~  作者: 凪野 晴
第5章

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第79話 切り札の切り合い

「やはり、ぼくの居場所は筒抜けってことか。いいかげん、決着をつけようじゃないか、ジョーカー。そして、白峰由記子」


 由記子とジョーカーに向かって、タイラントは告げた。そして、彼はメダルを見せながら、続ける。


「そうそう、白峰さん。君たちを待っている間に、このメダルをちょっと調べてみたよ。記録媒体のようだね。パソコンのような電子機器にダウンロードできそうなところまで、わかった。あいにくとパスワードでロックがかかっていたけれどね」


 由記子は、好奇心旺盛に話すタイラントに視線を合わせたまま、身構えていた。この場所は、周囲がコンクリート製の壁や床なのだ。地理的条件は、圧倒的に不利と考えていた。


「……パスワードは、教える気はないよ」


「何回かパスワードを間違えると、メダルの中の情報データが削除されるとかないのかな? そんな仕様なら、喜んで間違えてみるよ。君が悔しがるのが見たいからね」


 由記子は、タイラントに探りを入れられていると感じる。ポーカーフェイスを貫く。そして、左の手の中にメダルを何枚も生成させていく。


 横にいるジョーカーが、おもむろにタイラントに向けて右手をかざした。その手から電撃が放たれる。


 だが、その電撃は、タイラントの目の前で床から現れたコンクリート壁にぶつかって、四散した。


「……相変わらずだね、ジョーカー。君は、ほんとに気が短いようだ。まだ話している途中だろう?」


 そう言いながら、タイラントは手元のスキャンアームズを操作していた。パトリオットへ密かにコールを繋ぐためだ。コンクリート壁を隠れみのにしていたのだ。


 その操作を終えると、コンクリート壁は溶けるように床に沈んでいく。


「私たちが、あなたの異能に何も対策していないとでも思って? 大人しくメダルを渡しなさい」


 由記子は、タイラントを睨みながら言った。目の前にいるのは殺人鬼。そして、周囲の状況。この場で、自分の命を懸けていると自覚する。


「対策? このコンクリートだらけの場所で、ぼくが君たちに負けるわけないだろう。寝言でも言っているのかな」


 由記子は、右手に一枚メダルを持ち、タイラントに狙いをつける。メダルを弾いた。そのメダルを瞬間移動させ、奴の目の前に出現させる。


 タイラントは、それを避けた。一度見た攻撃。余裕だった。


 だが、次の瞬間、タイラントを自動で守るコンクリートの壁が隆起した。すぐさま、その壁に強い衝撃が伝播する。壁はヒビ割れ、何かが突き抜けていく。


 タイラントの左肩を何かが掠めた。切られた様な痛みが走り、血が滲む。


「ジョーカー、続けて狙って!」


 由記子は叫んだ。


 ジョーカーは、両腕を胸の前で伸ばすようにしていた。手のひらを広げ、指も伸ばしている。両腕の間にわずかな隙間を作っている。前にならえのポーズを狭めたような形だった。


 由記子は再び、メダルを弾く、そして瞬間移動させる。だが、行き先はタイラントではない。ジョーカーの胸元だ。


 ジョーカーの伸ばした両腕にバチバチと放電が起きていた。そこにメダルが転送されたのだ。直後、そのメダルは超速で射出された。


 メダルが飛び出した先には、タイラント。コンクリートの壁が自動で隆起するが、メダルは壁に穴をあけて突き抜ける。タイラントの身体には当たらなかったが、彼の背後で衝撃音が響く。


「……くっ、なんだそれ」


 タイラントは、冷や汗をかき、左肩をおさえながら言った。自動防御のコンクリート壁が役に立たない。


 由記子とジョーカーのコンビネーション。


 それは、ひとことで言えば、レールガンだった。金属であるメダルに、電気による電磁誘導で強力な推進力を与えて、射出する。コンクリートを砕き、貫通する威力があるのだった。


「……ったく、面倒なことを」


 タイラントは、スキャンアームズをチラッと見る。パトリオットがコールにまだ出ない。


 由記子は、左右の手それぞれでメダルを時間差で弾く。順次、ジョーカーの胸元に転送され、ジョーカーの両腕レールで勢いを増したメダルが連弾で飛び出す。


 タイラントは、その二発をなんとか避けた。


「反撃の余裕を与えるな」


 ジョーカーがおなじみの変声した声で言う。


 タイラントは、ジョーカーの邪魔をしようと、コンクリートの弾丸を床から生成して、何発も撃ち込む。だが、ジョーカーの身体を素通りするだけだった。


 標的を変えて、由記子をコンクリートの弾丸で狙う。


 だが、由記子はそれを予想していた。大きく駆けて、弾丸を避けていく。そして、反撃とばかりに、メダルを一枚弾く。


 タイラントは由記子のその動作を見て、ジョーカーに視線をやる。だが、先ほどいたはずの場所にジョーカーはいなかった。


 コンクリートの壁が自動で隆起する。その方向から攻撃が来ると判断し、タイラントは大きく転がった。


「……なんか余裕なさそうだけど、ターゲットは?」


 スキャンアームズから女性の声が響く。パトリオットへのコールが繋がったのだ。タイラントはニヤリとして、スキャンアームズの手の甲に付いているカメラをジョーカーに向けた。


 カメラ越しに、パトリオットの異能が発動する。


 チャリン。


 次弾としてジョーカーへ転送したメダルが床に落ちた。コロコロと転がる。


 由記子は、ジョーカーの方へ顔を向けた。そこには、両腕や両足をまるで縛られたのがごとく絡ませて立っている道化師の姿があった。


「……ふう。こっちの切り札の方が強力だったね。これでもうジョーカーは役立たずさ」


 タイラントが、勝ち誇った笑みを浮かべて言った。

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