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雨のち晴れの事件簿 ~ 性格も好みも真逆の男女バディですが、異能犯罪者は沈めます ~  作者: 凪野 晴
第5章

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第73話 情報整理

 さびれたシャッター商店街。レインたちは、白峰由記子を確保し損なった。


 雨男は、寝ている晴れ女の側に寄る。絡まっている網を外し、うつ伏せで寝ている彼女の肩を軽く叩く。声をかける。


「おい、シャイン。起きろ」


「……カレーパン、もうひとつもらってもいいですか?」


 シャインはアスファルトの上なのに気持ち良さそうな寝顔のまま言った。レインの顔がひきつる。起きそうにない。短時間で深い眠りに落ちている様子。


 あの子の異能を喰らったら、一瞬で意識を失うのか。レインは冷静に分析していた。


 そして、スーツの懐に忍ばせている細い水筒を開ける。少量の冷たい水が中から飛び出し、パシャンと、シャインの顔にかかった。


 シャインは驚き、目を瞬く。


「あれ? レインさん? ここは……?」


 そう言いながら、濡れた顔を手で拭う。


「白峰由記子を追っている途中だったが、彼女の側近にやられたな」


「……えっと。あっー、そうでしたね。思い出してきました」


 シャインは起き上がった。チャリンと音を立てて、晴れ女のそばからメダルが落ちた。


 彼女は気にせず、うーんと両手を上に伸ばして、首を左右に傾けた。身体をほぐしている。


 レインは落ちたメダルを拾った。りんごの柄が描かれた金色のメダルだった。


「シャイン、これは?」


「急に飛んできたので、掴んだものですね。このメダル、何でしょうね。これのせいで、初動が遅れました」


 レインは、確かにシャインの動きが一瞬止まっていたと思い出す。


「このメダルは持っておくか。それから、このドローンも回収しておくぞ。複数のドローンを的確に操っていた……操作する人が複数いるとしたら、連携のコンビネーションが軍隊のように訓練されているレベルだ」


「すくなくとも、あの女の子はドローンを操作している様子はなかったですね。明らかに私の動きを捉えて、構えていましたし。それに……」


「それに?」


「身体の動かし方が綺麗でしたね。おそらく武道を嗜んでいると思います。あ、そうだ。由記子ちゃん、あの女の子のことを『眠らせ姫』って呼んでました」


 そのキーワードを聞いて、レインは考え込んだ。そして、スキャングラスで確認していた名前を共有する。


「あの子の名前は、流灯凛花ながれびりんかだ。レベル3のオレンジ。触れた者を寝かせる異能のようだな。だから、コードネームが『眠らせ姫』なのだろう」


 それを聞いたシャインは、納得してうなずいた。そして、問う。


「そういえば、もう一人異能者がいるかもしれないって、レインさんはなぜ思ったのですか?」


「ん? ああ。ちょっと前にくるみベーカリーの近くで、制服姿の流灯凛花とすれ違っていたんだ。覚えてないか? パンの詰め合わせを買った日だよ。スキャングラスで異能者だと確認していたんだ。で、その隣に男子高校生の異能者もいたからな。警戒した」


 晴れ女は、雨男の几帳面さと神経質なところに呆れた。あの時はパンの詰め合わせのことで頭がいっぱいだったので、正直まったく覚えていない。


「へぇー、ってことは、彼氏ですかね? 異能者カップルだとしたら面白いです」


 シャインは、ほっこりした顔になった。


「いや、その時の二人は部活帰りのような雰囲気だったな。手を繋いでなかったし、彼氏彼女の関係とは断定できない」


 そこまでしっかり見ていたのかと、シャインは相棒の細かさに再び呆れる。


「姿は確認できなかったが、その彼がおそらくドローンなどを操っていたのだと思う。俺のスキャングラスも操作された。ハッキングを受けた。もちろん、他にも異能者や協力者がいた可能性もあるが」


「スキャングラスもですか? ひょっとして、『スティグマ・システム』のハッキングも……」


 シャインの言葉に、レインはうなずく。掛け直したスキャングラスの縁を指でつまみながら、述べる。スキャングラスのブラックアウトは解除されていた。


「今回の接触ではっきりしたのは、白峰由記子は単独で動いてはいない。おそらくチームを組んでいる。それから、スキャングラスを操作された時に、レンズに『白峰由記子は無実。真犯人は別にいる』とメッセージが出力された」


「そうなんですね。うーん。だとしたら、やはり由記子ちゃんは警察から逃げながら、真犯人を追いかけているってことでしょうか」


「ああ。俺たちは、自由の森公園での防犯カメラ映像も観ている。だから、スキャングラスに出たメッセージ内容は検討に値する」


 シャインは、慎重なレインの言葉に応える。


「うーん。私はなんとなく由記子ちゃんは犯人でないと思っていますけど……レインさん、慎重ですね。やっぱり、最も肝心なことを知りたいですね。……藤平紫乃さんがなぜ殺されたのか、です」


 それがきっかけで、レインの糸のような目が開いた。思考を巡らせる。


「なぜ、白峰由記子は被害者である藤平紫乃とファミレスで接触していたのか? なぜ、藤平紫乃は自由の森公園で、男に狙われたのか? そもそも藤平紫乃は何者なんだ?」


「えっと、なんとか製薬会社のなんとか部門の人でした」


 レインの独り言に、シャインは大雑把な返答をした。


「クレスト・グラント製薬の臨床試験部門の従業員だったな。白峰由記子は、ジャーナリスト……。クレスト・グラント製薬に何か秘密があるのかもしれない。でないと、白峰由記子が藤平紫乃に接触した理由が成り立たない」


「うーん。となると、やっぱり、由記子ちゃんと会って話してみたいですよね。それが一番の早道ですよ」


「確かにそうなんだが……。クレスト・グラント製薬については、クラウドに調べてもらうかな。何かわかるかもしれない。それと『眠らせ姫』についても調べてもらおう。白峰由記子のチームについて、知る手がかりがあるかもしれない」


「私たちは引き続き、由記子ちゃんを探して、接触を試みるですかね?」


 晴れ女の問いかけに、雨男はうなずいた。


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