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雨のち晴れの事件簿 ~ 性格も好みも真逆の男女バディですが、異能犯罪者は沈めます ~  作者: 凪野 晴
第5章

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第72話 VS

 さびれたシャッター商店街、その一角でシャインたちはターゲットを発見した。ゲームセンターから出てきた白峰由記子だ。傍には少女もいる。


 昼間ではあるが、天気はあいにくと曇りだ。


 レインたちが現れたのは、この商店街に設置されていた防犯カメラの映像で、歩き方が白峰由記子だと判定された人物が映っていたからだった。急いで駆けつけた形だ。


 シャインが声をかけてきたことに、白峰由記子は驚いていた。そして、側にいる少女は、シャインを警戒し強い視線を向けている。


 後方にいるレインは、シャインが明るく声をかけたことに小さなため息をついていた。危機的状況でなければ、不意打ちという概念がない相棒。いつものことだが。


 そして、スキャングラスでターゲットとその側にいる少女、二人を解析する。


──レベル3 オレンジ 白峰由記子

──レベル3 オレンジ 流灯凛花


 レインは驚いた。


 少女の方は、先日、くるみベーカリーですれ違った高校生の一人だと気づく。今日は制服姿ではなかったので、随分と印象が異なっていたから気づけなかった。


 そして、その時に一緒にいた異能者の男子高校生に思い至る。


「三人目の異能者が潜んでいる可能性がある」


 レインは、シャインに伝えるように声を上げた。彼女は振り返らずに、右手の親指を立てて、理解したと合図を返す。


「由記子さん、先に逃げて。ここは私に任せてください」


 凛花は、由記子より前に立ち、促した。


 その声を聞いたシャインは、異能で身体強化し勢いよく走り出した。ターゲットである由記子を逃さないためだった。


 由記子は、こちらへ一気に間合いを詰めてくるシャインに向かって、りんごが描かれた金色メダルを弾く。そのメダルは、由記子の異能で瞬間移動をし、シャインの目の前に現れた。


「わっ、何?」


 咄嗟に、シャインは右手でメダルを掴んだ。駆ける勢いが殺される。


「じゃ、あとはお願い。眠らせ姫」


 そう告げた由紀子は、シャインたちから離れる方向へと走り出す。


 レインも追うように駆け出した。手には水の入ったペッドボトルを持っている。


 シャインも、追いかけようと再び走り出す。超人的なスピードで、凛花に対して斜めに走る。跳ぶ。


 そして、シャッターが降りている店の壁を蹴った。その衝撃で、横のシャッターがガシャンと音を立てた。


 三角跳び。凛花を飛び越えて、由記子を追うためだった。


 だが、二階くらいの高さに跳んだシャインの目の前に、いきなりドローンが現れた。


 捕獲用の網を広げたドローン。その網に絡まり、シャインはドローンとともに商店街のアスファルトに落ちた。ドローンも叩きつけられて、プロペラの一部が外れる。


「痛ッー」


 網に絡まったシャインに、凛花が駆け寄ろうとする。だが、レインが放った水の弾丸がそこへ飛んでくる。


 凛花に直撃する瞬間、もう一台のドローンが間に入った。水の弾丸が絡まり、カシャンと音を立てて、ドローンが落ちる。


 その隙に、凛花はシャインに触れた。


「おやすみなさい。消灯ですよ」


 凛花の切り揃えた前髪とウェーブがかかった後髪がふわっと上がった。異能を使ったのだ。


 シャインは、眠りに落ちた。


 凛花の異能は、触れた相手を眠らせることができる。


 そして、ドローンは、法条が異能で操っているものだった。正確には複数のドローンをコントロールできるシステムを自在に操っているのだ。各ドローンのカメラからの視点で状況を把握して、凛花の援護をしていたのだった。


 編成されているドローンは六機。捕獲用の網を装備したものと凛花の盾になったもので、二台が使用不能になっていた。


「……ドローンを操っているのは、法条という彼か?」


 レインは凛花に問う。動揺を誘う意図だった。シャインが無力化されたが、隙を作って助ける狙いだった。


 そして、水の弾丸を放つ。時間差で二発。一発でも凛花の服を濡らすことができれば、拘束できる。同時に、レインは走り出して、彼女との間合いを詰める。


 だが、放たれた水の弾丸は、再び別のドローン二台が間に入って被弾し、カシャン、カシャンと音が鳴った。


「それって誰かしら? 私は一人よ」


 凛花は平気で嘘をつく。法条も承知していることだった。街で噂になっている『眠らせ姫』は、二人で一人という秘密のエージェントだから。


 凛花は由紀子から預かったりんごが描かれた銀色のメダルをシャインの頭に当てた。メダルは銀色から金色へと徐々に変わっていく。


 レインは、駆け寄ろうとしていた。だが、スキャングラスが、急にブラックアウトした。視界が妨げられて、足を止める。


 法条が、レインのスキャングラスに憑依し、レンズ越しの視界を真っ暗にしたのだった。電子機器であれば、何でもコントロールできる異能。なので、スキャングラスにメッセージを表示させることも可能だ。


──白峰由記子は無実。真犯人は別にいる。


 スキャングラスのディスプレイに、そう表示された。


 レインは、そのメッセージを読んだが、視界を確保するためにスキャングラスを左手で外す。


 だが、その瞬間、一機のドローンが発煙弾を放った。一気に周囲に白い煙が充満する。


 真っ暗だった視界が、今度は真っ白に。


 レインは、最後の水の弾丸を凛花とシャインがいた方向に放つ。一か八かだった。しかし、標的には当たらなかった。


 白い煙が風に流されて去った後、その場にいたのは、網に絡まって寝ているシャインと立ち尽くすレインだけだった。


 『眠らせ姫』は消えていた。


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