表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨のち晴れの事件簿 ~ 性格も好みも真逆の男女バディですが、異能犯罪者は沈めます ~  作者: 凪野 晴
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/94

第27話 二対二

「……レインさん、さっき私に準備万端か? って聞きましたよね」


 シャインは助手席からじろっとレインを睨んだ。今回は、レインが車を運転している。例の二人組を追跡するにあたって、車が走り出した途端、彼から寄り道をしたいと告げられたのだった。


「ただ、コンビニに寄るだけだ。それに買うものも決まっている」


 そう言って、レインはコンビニの駐車場へ入ろうとウインカーを出した。車を停めた後、店内へ入っていく。シャインは助手席で待機だ。


 いくつか雲が浮いているが、良い天気だった。青空が眩しい。


 レインが店から出てきた。どうやら買ったのはペットボトルのようだ。剥がしたラベルを店舗の入口にあるゴミ箱に捨てると、車へとやってきた。ドアが開く音がし、レインが運転席に座った。


「じゃ、行こうか」

「何を買ったのですか?」

「これさ」


 レインはラベルを剥がしたペットボトルを見せた。中身は透明な液体だった。


「水を買い忘れていたのですか? レインさんが忘れ物なんて、めずらしい」


「いや、車のトランクにポリタンクに入った水はある。やられたら、やり返したいからな。ちょっとした手品を用意したかったんだ」


 車は快調に走っていた。例の二人組との距離が縮まっていることがスキャンゴーグルの表示情報でわかる。


「できれば、あの二人が揃っていない時を狙いたかったがな。各個撃破の方が確実だ」


 レインは、慎重な戦術を実践したかったと告げる。


「それだと楽勝かもしれませんが、二回も戦わないといけないですよ。一回でいいです。お日様出てますし」


 シャインは、最も短い手番で解決したいと告げた。


 *


 やがて追跡対象がいる目的地に着いた。そこはビルの建設現場だった。


 車から降りると、建築中の建物の周囲を囲む様に立てられてた鉄板の壁があった。そこに貼り出されている工事計画表を見る。アドミラル建設が関わっていることがわかった。十階建てのビルになる予定のようだ。


 二人が顔を上げた先にある建物は、まだまだ完成には程遠い。鉄骨を組んでいる状態であり、その周囲には足場も組まれている。おそらくまだ五階程度の高さだ。


 この現場に、あの二人……シミターとアメジストがいる。


 どうやら、予告状もなしに仕掛けようとしている様だ。本来であれば、今も建設作業が進められていたであろうが、ビル崩壊の騒ぎの影響で休止しているのだろう。作業員の姿はなかった。


 現場への入口。小さな車輪付きで鉄板でできた屏風のような引き戸は、全開すればトラックが通れるくらいの幅だった。その扉の施錠箇所は見事に溶かされている。引き戸は少し開けられていて、中に誰かが入ったと教えてくれていた。


「さぁ、いくぞ」


 レインの声に、シャインはうなずいた。二人揃って、建設現場に入っていく。レインの後には、例のごとく水のかたまりが懐くように転がってついてくる。車で運んできたポリタンクの中身だった。彼の左手にペットボトルが握られている。


 雨男と晴れ女が進むと、たくましい男がいた。鉄骨に手をあてようとしている。そして、傍には紫色の巻き下ろしロングの女性がいた。シミターとアメジストだ。


「こんにちは! こんなところで、何をしているのですか?」


 シャインが元気よく声をかけた。その側で、レインがため息をつく。不意打ちの機会が台無しだ。それに初対面だろ。まぁ、いつものことかと諦める。


 シャインの声で、シミターとアメジストが振り返った。レインとシャインに気づく。


「あ、お前、生き残ってたのか。あのジョーカー野郎はどうなった?」


 シミターがレインを見て言った。


「どうして、ここに私たちがいるとわかったのかしら?」


 アメジストは、そう言いながら、例のごとくステンレス製のウイスキーボトルに口をつける。


「悪いが、どっちの質問にも答える義理はない。お前ら『ノーブル・ギャンブル』だろ?」


 レインが示した情報で、シミターとアメジストは警戒し、身構えた。


「私たちがやっつけちゃいます。もう、悪いことはさせないよ!」


 シャインも構える。


「面白え。俺たちに敵うわけないだろ。なぁ、アメジスト」


 そう言われたアメジストは、小さくため息をつく。そして、水を操る男が連れてきた女性を警戒しながら、ウイスキーボトルにもう一度口をつけた。


「そこのお嬢さん、お酒は強いかしら? 今度、呑みにいかない?」


 その質問に答えずに、シャインは地面を蹴って、アメジストとの間合いを一気に詰める。シャインの渾身の右拳ストレートは、アメジストの舞うような動きで避けられた。


「ちょっと、いきなり酷いじゃない」


 そう言いつつも、アメジストは、平手打ちをシャインの顔に叩き込もうとする。シャインは、わざと姿勢をくずして転がるように避けた。そして、体勢を整えると間合いを詰めて、返すように左の拳を突き出した。


 アメジストがその拳を右手で受けた。そして、相手に酔いをもたらす異能を発動する。


「あ、私、けっこう呑める方なんで」


 シャインは、やっと質問に答えた。そして、ニカっと笑った。


「そう。効かないのね」


 身体強化の異能を発揮する二人の女性は、互いに拳や蹴りを打ち合う。アメジストの美脚から繰り出される蹴りを、シャインは見切って避ける。シャインが足払いを仕掛けた。


 先読みしていたアメジストは軽く後に跳んでかわすが、その一瞬にシャインは自らに蓄積しているエネルギーを解き放つ。加速した身体。そこから繰り出される会心の右拳ストレート。

 

 宙に浮いていたアメジストは避けれずに防御の構えをとった。だが、直撃を喰らう。吹っ飛ぶ。彼女の身体は建築材の山にぶつかり、大きな音を立てて、その山が崩れた。


 シャインは油断せずに、崩れた建築材の山から目を離さない。


「ひどいわ。せっかくのスーツが砂だらけよ」


 アメジストはスーツについた砂ぼこりを払った。そして、右手で髪をかき上げる。ウイスキーボトルに口をつけて、中身を飲んだ。


「いくら呑んで強くなっても、いい天気だから私には勝てないよ」


 シャインは、右手で空を指差した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ