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~*前編*~

「君は私のことを何にもわかっていない。こんなことなら初めから婚約をするんじゃなかった」


そう言い、彼は私の前から姿を消した。



―—―遡ること3年前。

彼との出会いは運命的だった。



王家主催の会食パーティに呼ばれたクーベルト公爵家一同。多くの貴族も呼ばれたこの会食会場には、王家直属の近衛騎士団も護衛として呼ばれていた。その中でも人一倍背が高く、鍛え上げられた身体を持つ、一際目立つお方こそ、齢若くして近衛騎士団長となったガレン・ローレンスである。彼に惚れ惚れする令嬢も多く、ファンクラブも存在するくらいだ。その一方で彼は恋愛に疎く、これまで噂が出ることは一切なく、婚期を迎えた令嬢たちはここぞとばかりに彼へと詰め寄っていた。



―令嬢がはしたない



そう心の中で呟いたのは、ベル・クーベルト公爵令嬢。クーベルト家が誇る才気溢れる一人娘。


「ベル」

「お父様。どうかされましたか」

「ここは公の場だ。態度を慎みなさい」

「…申し訳ありませんでした」

「理解したなら構わない。感情を出すことが悪いとは言わないが、お前は何せ出やすいからな、ははは」


隣国との貿易が盛んな我が国。

父親は、人柄の良さと人材育成に長けていることから、貿易商の管轄を担う存在であり、ベルにとって憧れの存在だった。ベルには兄と弟がいるが、父親の『己の好きなように生きなさい』という言葉に肖り、2人とも父親の跡を継ぐことはしなかった。幼い頃から憧れていた騎士団に入団して以降、日々鍛練に勤しんでいるためか、ほとんど家には帰って来なくなった。度々届く文で2人の息子の成長を感じ取っていた。


華やかな衣装に包まれ、それぞれが流行りの香水を身に纏い、色気を出し合う場。

ベルにとって会食パーティほど苦手な場所はなかった。互いの気持ちを探り合い、下手な会話をすれば今後の付き合いに亀裂が生じかねないため、極力参加しないでいたが今回ばかりは断れなかった。


―――会食の招待状が届いた日。

ダイニングで夕食を摂っている最中、父親が口を開いた。


「今回の会食には、ベルも一緒に参加してもらう」

「どうしてですの」

「王太子殿下直々のご指名だ」

「殿下が!!」

「よく考えてみなさい。お前も今年で18になる」

「だからなんですの」

「母さんがお前と同じ歳の頃にサフィア()が産まれているんだ。私も早く孫をこの手に抱きたい」

「…そんなこと言われても知りませんわ」


小声で呟きながら残りの食事を摂ることに専念した。

気分を害したベルであったが、父が言いたいことも理解はしていた。

普段から公の場に自ら進んで参加することはせず、外に出ても行く先は決まって兄や弟たちがいる鍛練場。差し入れを届けにいくのがベルの日課だった。


―――迎えた会食パーティ当日。

予め贈られてきたドレスに身を纏い、侍女が化粧を施し髪を結い上げると、見目麗しい女性へと変貌した。最後の仕上げとして、クーベルト家が誇る白いバラをモチーフにした首飾りが首元へ着けられた。

その姿を見た侍女たちは、うっとりとした表情で目を輝かせながら言った。


「お嬢様、すごくお綺麗です」

「…あ、ありがとう」


普段はしない格好に、化粧を施した自身の姿を鏡で見た後であり、恥ずかしさの方が込み上げてきたせいか、顔を少し赤らめながら答えた。


「きっと、殿方もお嬢様から目を離せなくなりますよ」

「別にいいですわ」


そんなやりとりをしていると、馬車の準備が整ったと報告が入った。

自宅から出てきた彼女に手を差し出しながらその人物は言った。


「お手をどうぞ。美しい人(マドモアゼル)


彼女のエスコートを王太子に願い出た人物こそ、近衛騎士団長のガレン本人だった。

虎娘『勘違いしないで。貴方を愛したのは、貴方の御心に惹かれたからです。』

前編を最後まで読んで下さり、誠にありがとうございます。

この後、後編も投稿予定ですので、是非とも続けて読んでいただけますと幸いです。

また評価・感想をいただけますと、私の励みにもなりますので、何卒よろしくお願いいたします。


今後とも虎娘の作品をよろしくお願いいたします。

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