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いつか、フォアグラになる日。  作者: 熊本 展子
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何を食べるかは、自分で決め続けたい。

 7月27日。

  昨日の夕食は、握り寿司、野菜サラダ、イカメンチ、唐揚げ、餃子、松茸のお吸い物、春雨ときゅうりの酢の物、一人前にしては多すぎるほどの量の完熟のカットされた桃とブドウを2種類盛り合わせ、そしてイチゴのロールケーキ。

 暑気払いと称して、女3人で集まって食べる夕食の場で、母は、「お父さんってね、脂肪肝が全部当てはまるのよね、ほら」と、新聞の切り抜きを差し出した。

 父が亡くなって、半年ほどしか経っていない。死因は肝細胞癌、という病名だった。脂肪肝ではない。脂肪肝と肝細胞癌は違うと思ったけれど、それでも私が一応記事を読んだのは、最近、脂肪肝という言葉をよく目にするからだった。どうしてよく目にするんだろう。言霊。言葉にすると現実になるって言うよね。それとも何かの警告。

それこそ、昨日。スマートフォンで「本当に恐ろしい脂肪肝」という医療記事が目に入った。なんだか脂肪肝、ひたひたと身近に迫ってきていないか?まだ特効薬が見つかっておらず、一番有効なのは運動らしい。

「それでね、フルーツもよくないらしいのよ。果糖がね。よくないんですって。お父さんはフルーツ好きで、毎日何か食べていたから。みかんも一度に3個くらい食べてたし、キウイも毎日一個。」

そういいながら、テーブルにはまさに脂肪肝になりそうな物が並んでいる。脂肪肝よりも私にとって怖いのは、フルーツが体に良くない、ということだった。年齢を重ねてもきれいでいる女優だとか、ずっと現役を続けているような人が語る健康の秘訣には、「季節のフルーツをよく食べる」って、よく出てこないっけ?いつか、毎日朝は早く起きて、近所の無添加のパン屋さんに歩いてパンを買いに行き、パンとフルーツとドリップしたコーヒーで、軽めの健康的な朝ごはんを食べる生活をできるようになりたかったけど、あれは健康的な生活ではなかったの?いい大人が見ていた小さな夢も、健康の意味もわからなくなる。


今日の会社でのおやつ。ムーンライトクッキー。

お弁当を食べる会議室の机の上で、ムーンライトクッキーは、ムーンライトというよりも、月そのもののように、美しく、丸い。それをスマートフォンのアプリで写真を撮る。食べ物を美味しそうに映すためのアプリの威力はすごくて、肉眼で美しく見えているクッキーは、パッケージの濃い青色の縁取りも上品で、白く輝くアイシングで表面を塗った小さなケーキのように写った。



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