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初の討伐依頼と運命の出会い


 イザークが心術審査試験に合格してから数週間が経った。あの後、イザークは初の依頼を受け、その付き添いにウードが同行した。

 初の依頼は採取系の依頼を受けるようにとのことだった。イザーク以外の冒険者も初めは皆そうするらしい。依頼の受け方、どんな依頼でも道中に気をつけるべきこと、採取物や討伐対象の魔物のリストが載っている本が売ってある場所など、他にも受けた依頼の報告の仕方などを事細かくウードが指南してくれた。


 その他にも色々と知れたことがある。まずは冒険者ランク。ランクは区分けがあり級と等で分かれている。


 下から順番に、


 五級

 四級

 三級

 二級

 一級

 ーーー

 十等

 九等

 八等

 七等

 六等

 五等

 四等

 三等

 二等

 一等


 まであり、全部で15階級ある。そしてイザークは初日で2つの採取系依頼を達成し、2日目で3つの採取系、そこから何日かに分けてお手伝い系や採取系をこなし続けた結果、早くも三級冒険者となれたのだ。


 そして討伐依頼は三級から受けることが出来るので、イザークは今日初めて討伐系依頼を受けることになる。

 朝からワクワクが隠せない様子で、カウンターで依頼受注手続きを行う。


 そしてそのままの流れで街の外まで行くと、この間のテストで呼び出した風の下級竜を召喚し、その背中に乗って目的地まで飛んでいく。


 眼下を見渡すと、ポツポツと冒険者パーティと思われる人々が街道を歩いているのを見かける。

 こういう時に竜操師で良かったとイザークは心底思う。何故なら、



(移動がびっくりするほど楽だからね!)




 そうしてしばらく気持ちのいい風を感じながら飛んでいると、街道を外れた場所にある林の浅い所で目的の魔物を発見した。


 今回の依頼内容は、ゴブリンの巣を一つ潰すこと。そして

ウィンディ・ウルフ三体以上の討伐


 討伐証明部位はゴブリンが長い耳、ウィンディ・ウルフは3本ある爪の中で真ん中の長いやつを獲ってくれば良いとなっている。


「まずはゴブリンだけか……、まぁそりゃそうか。ウィンディー・ウルフは下級の魔物でも、属性攻撃を使ってくる魔物だ。森林の浅い場所で出てくるわけないか」


 イザークは林の木々が切り倒されたかのように、不自然にできている広場を目指して降下した。


「ウィンドラ、頼むよ」

「グォッ」


 ウィンドラは頷くと即座に降下を開始した。

 ウィンドラとはイザークが付けたこの竜の名前である。流石に名前無しは呼びにくすぎるので、付けたのだ。

 竜はどうやら下級では会話ができないようだが、翠緑龍と同じ竜族で賢いので、こちらの言っていることは理解できるらしい。なので、イザークはこれから召喚して契約した竜には名前をつけることにしたのだ。


 そうこうしているうちに、だいぶ地上付近にまで降りて来たので、早速攻撃態勢に移る。


「ウィンドラ、君は上空から尻尾や爪で攻撃して!」

「グォ!!」


 ウィンドラは力強く頷くと、攻撃を開始した。早速被害を受け始めるゴブリンが出て来たようだ。


「ギャァ!! ギャァーーーッ!!」


(ははは……すんごいキレてる。まぁ当然だよね)


「てぇやぁッ!!」


 イザークは新しく手に入れた真剣で次々とゴブリンを狩りまくっていった。今回の目的は巣の排除。なのでこの場にいるゴブリンは全て倒さなければならない。




 5分ほど経った頃、この場にいたゴブリンは既にいなくなっていた。


「依頼の1つ達成っと。よし、次はウィンディ・ウルフだ。ここからそんなに遠くないエリアだろうから探そうか」

「グォ」


 

 30分ほど探し続けて、ようやく目的のウィンディ・ウルフをイザーク達は発見した。身体中の毛が風の力によってヒラヒラしている。そしてこの場には4体いるようだ。


(依頼よりは数を超過しちゃうけど、目的は達成できるし良いか。それに狩った数が多ければ多いほど、報酬はたくさんもらえるわけだしね)


 イザークはそんなふうに考えると、早速行動に移した。だが、今回の魔物は異常なほどに素早く、捉えづらい。その上攻撃もそこそこな重さがあるので、喰らえば怪我では済まない。


 しかしそれよりも素早く、力強い生き物をパートナーとしているイザークが今回の相手であるのが、彼らにとっての不運だった。

 風の力で速度を増して突進し、その勢いのまま爪で引き裂いてくる攻撃や、風そのものを刃と化して攻撃してくるなど、かなり多彩でタフな相手だったが、イザークとウィンドラの連携により、無事4体全てを倒すことに成功した。




「ふぅ、今回は結構ハードな依頼だったな」

「グォ」

「ウィンドラもありがとね」

「グォ〜」


 ウィンドラはイザークに首元を撫でられて気持ちよさそうにしている。そんな微笑ましいやりとりをしながら街に戻っていると、イザークたちは何やらトラブルに巻き込まれているであろう一団を発見した。


「くッ、クソ! 左だ! 左から回り込め!」

「おうッ!」


 馬車が倒れており、その近くに数人の身分が高そうな服を着ている人物が護衛に守られながら、誰かと戦っている。


「ハハハハッ!! 無駄無駄! 俺様に、お前ら如きが敵うわけねぇだろ! でもまぁ、光栄に思うが良いさ! この、ヴィーラント様が直々にお前らを殺してやるんだからな! そんじゃあ、死にやがれ! インフェルノフレイム!」


「ここまでか……」


 一番高価そうな服を着ている人物が諦めの言葉を口にした次の瞬間、目の前に大きな影が舞い降りた。


 ドゴーンッ!!


 巨大な爆炎と土煙が舞い上がり、そして晴れた時、そこにいたのは……竜。そう竜がいたのだ。


「こ、この竜は一体……」

「驚かせてしまい、申し訳ありません。私はこの近くで冒険者をしている者です。名をイザークと申します」


 イザークのその言葉に対して1人が我に帰り、代表して返事をした。


「あ、ああ。構わないよ。助けてくれたんだよね? 皆を代表して礼を言おう。ありがとう。私はオットーだ。オットー・バルシュミーデ」


(バルシュミーデ……予想はしてたけど貴族の人か。ん? 待てよ。バルシュミーデってどこかで……ん!? バルシュミーデ!? それってバルシュミーデ公爵家のこと!? とんでもない人に出くわしたもんだ……)


 イザークは子爵家の出なので、一生公爵家の人間と関わる機会などないと思っていたのだ。しかし驚いていても仕方ないと、気持ちを切り替え、イザークは公爵に向き直る。


「あの有名なバルシュミーデ公爵家の方にお会いできて光栄でございます。つきましては公爵様、今より共闘してあの不届者を撃退するということでよろしいでしょうか?」

「え? ああ、頼むよ。戦力になってくれるのは、こちらとしても損はない」


 そんなわけでイザークは取り敢えず公爵家の味方として参戦することが可能となったので、今度は先ほどまで公爵家に攻撃をしていた男に目を向ける。


 そして、


「翠緑竜! 行くよ!」


 イザークは戦闘態勢に入る為、自身の竜に声を掛ける。因みにウィンドラでは確実に目の前の男には敵わないので、イザークは事前に召喚を解除していた。そうして準備ができたイザークが動こうとしたのだが、オットーはまだ聞きたい事があったようで、イザークに声を掛ける。


「き、君! ちょっと待ち……」

「それでは閣下は下がっていて下さい!」


 オットーがイザークに声を掛けるものの、イザークにその声は届かず、敵の男の方に向かって行ってしまった。




 そうして戦うための準備が整ったイザークは敵の男と向かい合う。


「俺様の攻撃を正面から受け止めるかよ……貴様、何者だ?」

「あんたに名乗る名前なんて無い」

「へ! そうかよ! んじゃもう遠慮はいらねぇな!? よくも邪魔しやがって、覚悟しやがれ!」

「それはこちらのセリフだよ」


(って何参戦してんの僕! 明らかに相手ヤバい奴だよ! どうしよう? 落ち着け、僕。とにかく今回は翠緑竜に出てもらうんだ。流石にあの男には下級竜たちでは勝てない気がする)


 イザークは方針を定めると、すぐに顔を上げ、男を見た。とにかく彼を倒さなければ、状況は進まないのだ。覚悟を決めてかかるしかない。


(さっきまでの順調な冒険者ライフは何処に……)


 そう思っても、最早後の祭りなのであった。






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