終幕の屋根裏抗争
とある村の長の邸宅。
その屋根裏に作られた広いスペースで、今まさに、二つの勢力が睨み合いをしていた。
「いつもいつも、偉そうにふんぞり返りやがって、今日こそ決着つけてやる」
1つは、最近になって村にやってきた、“アニキ”と呼ばれる若者を頭に据え、血の気の多い若手を中心としたグループ。
「えぇ度胸や。 新参者の寄せ集めで、儂等に勝てる思とんのか? ナメられたモンやのぉ」
そしてもう1つは、元々村に根付いていた、グループだ。
両者は、互いに仕事を奪い合い、決して交わる事無く今日まで来た。
――だが。
「今日と言う今日は、絶対許さねぇ。 てめぇ等が少しでも情報を回してくれてりゃ、アイツは……アイツは死なずに済んだ!」
「それが甘い言うとるんや。 己の命掛かっとるんは初端からわかってたはずや。 せやのに、あんな見え見えの罠に踏み込んだ――あ奴自身の自業自得やろ」
「くっ……」
“親父”と呼ばれる、地元グループの纏め役の言葉に“アニキ“が言葉を詰まらせる。
“親父”の言う事は、確かに正しい。
だが、最近取り締まりが厳しくなって、上手く行かない仕事が増えたせいで、女子供を食わせるのも苦労する始末。
だからアイツは、罠だと――“ネズミ取り”だと分かっていても、行くしかなかった……だって――
「――アイツ、もうすぐ子供が産まれるんだぞ! 嫁さんや、産まれてくる子供達のために、って必死だったの――知ってたハズだろ!」
「………………」
「それなのに……アンタって奴は!」
言うが早いか、“アニキ”は“親父”に、飛びかかると、周りが止めるより早く、その横っ面に重い一撃を打ち込む。
一方の“親父”は、微動だにせず一撃を受け止めると、涙を浮かべながら拳を握りしめる“アニキ”に、静かに語り掛けた。
「気は済んだか……若造? 貴様等がそうやって、儂等といがみ合うとる限り、今回のような事は、また起こるやも知れん」
――だから、ワシ等の下に来い。
「なっ!? “親父”! 何言ってんです!?」
「“アニキ”! 勝手言わせていいんスか!?」
“親父”の言葉に、俄に騒がしくなる周囲。
――だが。
「静まれぇい!」
「だまれぇ!」
次の瞬間、当の本人達の怒声が響き、水を打ったように静まり返った。
「俺は仲間を守れるなら、頭だって下げる!」
「仲間の死に涙を流せる奴ならば、儂等も歓迎しよう」
「よろしく頼むぜ、クソ“親父”」
「くっそ! ネズミ野郎、まだいやがるのか……殺鼠剤買ってくるか……」