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第四回なろうラジオ大賞用

終幕の屋根裏抗争

作者: 城河 ゆう

 とある村の長の邸宅。


 その屋根裏に作られた広いスペースで、今まさに、二つの勢力が睨み合いをしていた。


「いつもいつも、偉そうにふんぞり返りやがって、今日こそ決着(ケリ)つけてやる」


 1つは、最近になって村にやってきた、“アニキ”と呼ばれる若者を(カシラ)に据え、血の気の多い若手を中心としたグループ。


「えぇ度胸や。 新参者の寄せ集めで、儂等に勝てる思とんのか? ナメられたモンやのぉ」


 そしてもう1つは、元々村に根付いていた、グループだ。


 両者は、互いに仕事(シノギ)を奪い合い、決して交わる事無く今日まで来た。



 ――だが。



「今日と言う今日は、絶対(ぜってー)許さねぇ。 てめぇ等が少しでも情報を回してくれてりゃ、アイツは……アイツは死なずに済んだ!」

「それが甘い言うとるんや。 己の(タマ)掛かっとるんは初端(ハナッ)からわかってたはずや。 せやのに、あんな見え見えの罠に踏み込んだ――あ奴自身の自業自得やろ」

「くっ……」


 “親父”と呼ばれる、地元グループの纏め役の言葉に“アニキ“が言葉を詰まらせる。


 “親父”の言う事は、確かに正しい。


 だが、最近取り締まりが厳しくなって、上手く行かない仕事が増えたせいで、女子供を食わせるのも苦労する始末。


 だからアイツは、罠だと――“ネズミ取り”だと分かっていても、行くしかなかった……だって――


「――アイツ、もうすぐ子供が産まれるんだぞ! 嫁さんや、産まれてくる子供達のために、って必死だったの――知ってたハズだろ!」

「………………」

「それなのに……アンタって奴は!」


 言うが早いか、“アニキ”は“親父”に、飛びかかると、周りが止めるより早く、その横っ面に重い一撃を打ち込む。


 一方の“親父”は、微動だにせず一撃を受け止めると、涙を浮かべながら拳を握りしめる“アニキ”に、静かに語り掛けた。


「気は済んだか……若造? 貴様等がそうやって、儂等といがみ合うとる限り、今回のような事は、また起こるやも知れん」


 ――だから、ワシ等の(もと)に来い。


「なっ!? “親父”! 何言ってんです!?」

「“アニキ”! 勝手言わせていいんスか!?」


 “親父”の言葉に、俄に騒がしくなる周囲。


 ――だが。


「静まれぇい!」

「だまれぇ!」


 次の瞬間、当の本人達の怒声が響き、水を打ったように静まり返った。


「俺は仲間を守れるなら、頭だって下げる!」

「仲間の死に涙を流せる奴ならば、儂等も歓迎しよう」







「よろしく頼むぜ、クソ“親父”」















「くっそ! ネズミ野郎、まだいやがるのか……殺鼠剤買ってくるか……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 屋根裏でそんな争いが起きていたなんて! そして、ねずみの親父の渋さに笑いました〜
[一言] ネズミの話だったんですねぇ(^_^;) ネズミ捕りがそのままの意味だったとは笑
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