0-_ 「はじめに」
間違える前に、それが間違いだと教えてくれる人はいませんでした。
いつだって過ちというのは、過ぎ去ってしまった後に気付くもので、後悔と一緒にやってくるものです。
全部が終わってしまって、胸の中には痛みだけが残っていて、後ろ髪を引かれる感覚に振り返ったときに初めて、ああ、と気が付くのです。
踏み外す前に留まることができたのなら、どんなに幸せだったでしようか?
私もそうでした。
雨が止んで。
雲が散って。
陽が沈むまで、何も知らないふりを続けていました。
何もかもがおしまいになって、取り返しがつかなくなって、どこにも進めない行き止まりに差しかかってようやく、これが悲劇であると知ったのです。
一体、どこで間違えてしまったのでしょうか?
考えれば考えるほどわからなくなります。
みんな幸せそうに見えました。
みんな楽しそうに見えました。
みんなが笑っている顔が、今もありありと思い出せます。だからあの毎日が間違いだったなんて思いたくはない。
それでも、確かに綻びはあったはずなのです。
あの完璧に見えた日々に、まるで糸を取り違えたような、針先が狂ってしまったかのようなもつれがあったはずなのです。
私はもう終わってしまいました。
私はもう、綴じられてしまいました。
私にはもう、物語を読み返すことすらできません。あるいは最初からそんな権利はなくて、たった一つの視点でしか世界を見られない私には、あの結末を回避する方法などなかったのかもしれません。
それでも、諦めきれないのです。
私の歌はどこにも届かず、どこにも届かぬ声は乾いてひび割れ、乾いてひび割れた願いはいつしか醜く膿んで、醜く膿んだ傷口は絶え間なく痛みを訴えて、その絶え間ない痛みに、私は口を噤むしかないのだとしても。
まだできることがあったのではないか、みんなが笑い合える未来に辿り着けたのではないかと、そればかりが頭をぐるぐると回っているのです。
この物語を、誰かが手に取っているのなら。
きっともう、その時には私はこの世にいないでしょう。
……最初から、いるべきではなかったのかもしれませんが。
けれど、あなたなら読み返すことができるはずです。『ジ・エンド』で綴じられてしまった物語を、甦らせることができるはずです。
もっと早く気づけていたら、私は何もかもを失わずに済んだのかもしれません。
だから、お願いします。
私の失敗を見つけてください。
そして、それを次に会うときで構わないので、こっそりと私に教えて下さい。
それだけが、私の望みです。
――消えゆく者の、最期の望みです。